DCプランナー1級は、A分野(年金・退職給付制度等)、B分野(確定拠出年金制度)、C分野(老後資産形成マネジメント)という3つの試験種目に分かれています。合格率も、この3種目それぞれについて公表されています。
日本商工会議所が出している受験者データを5年度ぶん並べると、3種目の順位が毎年同じです。いちばん高いのがB分野、いちばん低いのがC分野で、この並びが2021年度から2025年度まで一度も入れ替わっていません。
この記事は、その差だけを扱います。分野別の数字がどのくらい動いてきたか、公表されている数字と公表されていない数字の境目はどこか、C分野の中身が他の2分野とどう違うのか、という順です。数値は日本商工会議所のDCプランナー受験者データと、日商・きんざいの試験要項によります。
5年度ぶん並べても、いちばん低いのは毎年C分野
実受験者を分母にした分野別の合格率は次のとおりです。CBT方式に移行した2021年度から2025年度までの5年度ぶんで、括弧内は実受験者数と合格者数です。
- 2025年度:A分野39.9%(559人・223人)/B分野42.3%(534人・226人)/C分野32.4%(528人・171人)
- 2024年度:A分野40.9%(548人・224人)/B分野44.2%(516人・228人)/C分野36.2%(553人・200人)
- 2023年度:A分野41.3%(535人・221人)/B分野48.0%(492人・236人)/C分野34.5%(647人・223人)
- 2022年度:A分野39.4%(663人・261人)/B分野49.1%(574人・282人)/C分野22.4%(798人・179人)
- 2021年度:A分野41.3%(572人・236人)/B分野44.6%(603人・269人)/C分野40.5%(472人・191人)
5年度とも、B分野がいちばん高く、C分野がいちばん低く、A分野がその間に入ります。「DCプランナー1級の合格率」という1つの数字を探しても、実際に公表されているのは3本の別々の線です。
2022年度がわかりやすい例です。C分野は3種目でいちばん多い798人が受験したのに、合格者は179人で、A分野の261人・B分野の282人を下回りました。受験者数が最多の種目で、合格者数が最少になっています。
A分野は1.9ポイント、C分野は18.1ポイント。振れ幅が一桁違う
同じ5年度を、分野ごとに縦に見直します。A分野は最も低い年が2022年度の39.4%、最も高い年が2021年度と2023年度の41.3%で、5年間の振れ幅は1.9ポイントです。39%台後半から41%台前半という狭い帯から一度も出ていません。
B分野は最も低い年が2025年度の42.3%、最も高い年が2022年度の49.1%で、振れ幅は6.8ポイントです。A分野より広いものの、5年度とも40%台に収まっています。
C分野だけが別の動き方をします。最も低い年が2022年度の22.4%、最も高い年が2021年度の40.5%で、振れ幅は18.1ポイント。A分野のおよそ9.5倍の幅で動いています。低いだけでなく、年度による当たり外れも大きいということです。
C分野の実受験者数は、2021年度472人、2022年度798人、2023年度647人、2024年度553人、2025年度528人と推移しました。最も多かった2022年度に合格率が最低の22.4%、最も少なかった2021年度に最高の40.5%という並びですが、受験者層の内訳は公表されておらず、人数と合格率の関係をここから断定することはできません。
B分野との差は、2022年度に26.7ポイントまで開いた
同じ年度の中で、いちばん高いB分野といちばん低いC分野の差を引き算すると、年度ごとの落差がはっきりします。
- 2025年度:B分野42.3%-C分野32.4%=9.9ポイント
- 2024年度:B分野44.2%-C分野36.2%=8.0ポイント
- 2023年度:B分野48.0%-C分野34.5%=13.5ポイント
- 2022年度:B分野49.1%-C分野22.4%=26.7ポイント
- 2021年度:B分野44.6%-C分野40.5%=4.1ポイント
差がいちばん小さいのはCBT移行初年度の2021年度で4.1ポイント、いちばん大きいのは翌2022年度で26.7ポイントです。1年で6倍以上に開きました。開いた原因はB分野が49.1%まで上がったことと、C分野が22.4%まで下がったことの両方で、片方だけの動きではありません。
直近の2025年度は9.9ポイントで、2022年度ほどの落差ではありません。ただしA分野との差を見ても、2025年度は39.9%と32.4%で7.5ポイントあり、C分野が3種目の下に位置する構図は変わっていません。
公表されているのは総合合格者数だけで、総合の合格率は載っていない
3分野すべてに合格すると1級の合格者になります。この「総合合格」については、合格者数だけが年度ごとに公表されています。2021年度151人、2022年度173人、2023年度207人、2024年度185人、2025年度171人です。
一方で、総合合格の行には受験者数と実受験者数の欄がなく、いずれも「ー」と表記されています。分母が公表されていないため、総合としての合格率は計算できません。分野別の3つの数字を掛け合わせて総合の合格率を出す、といった推計も、同じ人が3種目を受けたかどうかが分からない以上は成り立ちません。
たとえば2025年度は、C分野の合格者が171人、総合合格者も171人で数字が一致します。ただし各種目の合格に有効期限がないため、前の年度にC分野へ通っていた人がこの年度に総合合格することもあり得ます。数字が同じでも、一方からもう一方を導くことはできません。
同じ7割でも、C分野は答えの数値そのものを選ばされる
3種目とも試験時間は90分、出題形式は四答択一式10問と総合問題4題、合格基準は100点満点で70点以上です。制限時間も基準も種目ごとに違いはありません。それでも合格率が分かれるので、差の原因は制限時間や基準以外のところにあることになります。A・B・Cは別々の試験で受験者も同じ集団とは限らないため、問われる中身だけが理由とも言い切れません。
ただし、公表資料から差の理由を直接導くことはできません。四答択一式10問と総合問題4題それぞれの配点は、日商の1級ページ、きんざいの試験の概要、認定試験ガイドライン、Q&Aのいずれにも記載が見当たらず、公表を確認できませんでした。確認できるのは合計が100点満点であることだけです。
A・B・Cの各分野の中にある①から⑤までの細目ごとの出題比率も、同じ範囲を見たかぎりでは公表を確認できませんでした。C分野でいえば、金融商品の仕組みと特徴、資産運用の基礎知識・理論、運用状況の把握と対応策、確定拠出年金制度を含めた老後の生活設計、最新の動向という5つの区分があるだけで、どの区分から何問という記載はありません。
収録650問のうち「いくらか」を問う68問は、33問がC分野に集まる
ケンテイラボのDCプランナー1級は650問を12分野に分けて収録しています。分野ごとの収録数と構成比、それぞれの分野で扱う内容は次の表のとおりです。
収録問題12分野の内訳と比重
ケンテイラボではDCプランナー1級の収録問題を12の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している650問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「⑩ 資産運用の基礎知識・理論」の60問(全体の9.2%)、 最も少ないのは「⑫ 老後の生活設計/C分野 総合問題」の50問(同7.7%)です。上位3分野だけで全体の27.5%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
- ⑩ 資産運用の基礎知識・理論:60問(9.2%) 解説つきで見る →
- ⑪ 運用状況の把握と対応策:60問(9.2%) 解説つきで見る →
- ① 公的年金:59問(9.1%) 解説つきで見る →
- ② 企業年金と個人年金:55問(8.5%) 解説つきで見る →
- ⑦ 企業型年金の導入・運営/個人型年金の手続:55問(8.5%) 解説つきで見る →
- ④ A分野 総合問題:53問(8.2%) 解説つきで見る →
- ⑤ 確定拠出年金の仕組み①(加入・運用):53問(8.2%) 解説つきで見る →
- ⑥ 確定拠出年金の仕組み②(給付・移換・税制):53問(8.2%) 解説つきで見る →
- ⑨ 金融商品の仕組みと特徴:52問(8%) 解説つきで見る →
- ③ 退職給付制度・中高齢期の社会保険:50問(7.7%) 解説つきで見る →
- ⑧ コンプライアンス/B分野 総合問題:50問(7.7%) 解説つきで見る →
- ⑫ 老後の生活設計/C分野 総合問題:50問(7.7%) 解説つきで見る →
このうちC分野にあたるのは⑨から⑫までの4分野で、⑩ 資産運用の基礎知識・理論と⑪ 運用状況の把握と対応策がそれぞれ60問と、12分野の中で最も多い区分になっています。
収録問題の文面を、問題文・選択肢・解説まで通して語で数えると、C分野の性格が出ます。「計算」という語だけで数えると650問中66問で、その内訳はA分野側が30問、B分野側が10問、C分野側が26問です。この数え方ではC分野が突出しているわけではありません。
差が出るのは、答えの数値そのものを選ばせる形の設問です。「いくら」を含む問題は650問中68問あり、そのうち33問がC分野の4分野(⑨2問・⑩6問・⑪19問・⑫6問)に入っています。A分野側は24問、B分野側は11問です。ほかに「平均」を含む問題は46問中37問、「利回り」を含む問題は23問中19問がC分野側で、「標準偏差」の17問と「相関係数」の8問は全問がC分野の中にあります。
⑩と⑪の各60問が、C分野の計算量を作っている
⑩ 資産運用の基礎知識・理論の60問は、算術平均と幾何平均の使い分け、時間加重収益率と金額加重収益率、共分散と相関係数から2資産・3資産のポートフォリオのリスクを求める計算が中心です。正規分布を前提に標準偏差1つ分・2つ分の区間に入る確率へ落とす設問や、リスクを期間の平方根で伸ばす累積リスクの考え方も含まれます。CAPMのβとジェンセンのアルファ、ドルコスト平均法の平均購入単価もここです。
⑪ 運用状況の把握と対応策の60問は、1株当たり利益を割引率と成長率で割って株式の理論価値を出す計算、インタレスト・カバレッジ・レシオ、PER・PBR・配当利回り・ROEの算出が、数値を変えて繰り返し出てきます。債券側はデュレーションと価格変動率の関係、イールドカーブの読み方。株価指数は日経平均の株価平均型と除数調整、TOPIXの時価総額加重という違いが軸で、最後にシャープ・レシオ、トレイナー・レシオ、トラッキング・エラーによる相対評価が並びます。
A分野やB分野にも数字は出ますが、性格が違います。A分野は退職所得控除額や報酬比例部分の乗率のように、決められた式に制度上の数値を当てはめる形が多く、B分野は拠出限度額や通算加入者等期間と受給開始年齢の対応表のように、条文と要件を覚えていれば選べる部分が広く残ります。C分野の⑩と⑪は、覚えた式を選ぶのではなく、式を使って出した数値を4つの選択肢から選ぶ設問が積み重なります。
分野ごとに、数値を含む問題の割合と問題文の平均文字数を集計すると次のようになります。問題文が短いのに数値の比率が高い分野は、読解より計算に時間を取られる分野だと読めます。
分野別の学習タイプ(収録650問の集計)
ケンテイラボに収録しているDCプランナー1級の問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。
この試験でもっとも数値の比率が高いのは「① 公的年金」で90%、 もっとも低いのは「⑨ 金融商品の仕組みと特徴」で35%でした。 また問題文がもっとも長いのは「⑩ 資産運用の基礎知識・理論」の平均59字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。
- ① 公的年金:59問/数値を含む問題 90%/問題文 平均55字
- ② 企業年金と個人年金:55問/数値を含む問題 84%/問題文 平均46字
- ③ 退職給付制度・中高齢期の社会保険:50問/数値を含む問題 64%/問題文 平均47字
- ④ A分野 総合問題:53問/数値を含む問題 72%/問題文 平均58字
- ⑤ 確定拠出年金の仕組み①(加入・運用):53問/数値を含む問題 47%/問題文 平均46字
- ⑥ 確定拠出年金の仕組み②(給付・移換・税制):53問/数値を含む問題 75%/問題文 平均47字
- ⑦ 企業型年金の導入・運営/個人型年金の手続:55問/数値を含む問題 38%/問題文 平均49字
- ⑧ コンプライアンス/B分野 総合問題:50問/数値を含む問題 44%/問題文 平均49字
- ⑨ 金融商品の仕組みと特徴:52問/数値を含む問題 35%/問題文 平均37字
- ⑩ 資産運用の基礎知識・理論:60問/数値を含む問題 72%/問題文 平均59字
- ⑪ 運用状況の把握と対応策:60問/数値を含む問題 52%/問題文 平均49字
- ⑫ 老後の生活設計/C分野 総合問題:50問/数値を含む問題 48%/問題文 平均37字
数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。
実際の試験では自席への私物持込みができないため、計算は試験画面上に表示される電卓を使います。手元の慣れた電卓が使えない状態で数値を出す作業が積み上がる点は、C分野で効いてくる条件です。
この合格率の母集団は、すでに2級に通った人だけ
分野別の3割台・4割台という数字を読むときに、前提として押さえておきたいのが受験資格です。1級を受験できるのはDCプランナー2級の合格者に限られます。2級にいつ合格したか、2級の資格登録をしているかどうかは問われませんが、2級に通っていない人はそもそもこの分母に入りません。
つまりC分野の32.4%という数字は、確定拠出年金と年金制度の基礎をすでに一度通過した人だけを分母にした32.4%です。誰でも受けられる試験の3割台とは意味が違います。同じ土俵に立っている人の中で、およそ3人に2人が7割に届いていないという読み方になります。
日商が示す1級のレベルは、年金制度全般に加えて金融商品や投資に関する専門的な知識を持ち、企業には退職給付制度を踏まえた施策を、個人には老後を見据えた資産形成と生活設計の提案ができる水準です。C分野は、このうち「金融商品や投資」の部分をそのまま試験にした種目にあたります。
なお出題は、問題文に特に指示がないかぎり7月1日現在施行の法令に基づきます。C分野で扱う税制や制度の数値も、この基準日で切られます。
CBT移行前は、9.3%から39.8%まで振れる1本の試験だった
分野別に合格率が出るようになったのは、CBT方式に移った2021年9月以降です。それ以前は1級全体としての合格率が公表される方式でした。第16回(2012年1月22日)から最後の第25回(2021年1月24日)までは1月の年1回でしたが、第15回以前は9月・10月の実施や、3月と9月の年2回だった時期もあります。
- 第20回(2016年1月24日):実受験864人・合格80人・9.3%
- 第21回(2017年1月22日):実受験1,032人・合格254人・24.6%
- 第22回(2018年1月28日):実受験929人・合格209人・22.5%
- 第23回(2019年1月27日):実受験823人・合格97人・11.8%
- 第24回(2020年1月26日):実受験826人・合格296人・35.8%
- 第25回(2021年1月24日):実受験737人・合格293人・39.8%
この6回の幅は9.3%から39.8%で、30.5ポイントあります。第20回と第23回は1割前後まで落ち込み、第24回と第25回は3割台後半まで戻りました。分野ごとに合否が付く今の方式と違い、当時は1回の試験の結果がそのまま1級の合否になっていました。現在のA・B・Cという3分野の区分は2021年4月のガイドライン以降のもので、旧方式の出題分野の区切りはこれとは別です。
現在の方式では、その振れがC分野に寄せられた形になっています。A分野は5年度で1.9ポイント、B分野は6.8ポイントしか動かず、C分野だけが18.1ポイント動く。年度によって難しさが変わる部分がどこにあるのかが、分野別の公表によって見えるようになったという言い方もできます。
したがって「DCプランナー1級の合格率は何%か」を1つの数字で答えることは、いまはできません。手元の資料に数字があるときは、CBT移行前の回のものか、移行後のどの年度のどの分野のものかを先に確かめることになります。総合の合格率として書かれた数字があれば、公表されていないものなので出どころを疑うほうが安全です。