介護福祉士国家試験は、「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づく国家資格の試験です。実施と登録の事務は、厚生労働大臣の指定を受けた公益財団法人社会福祉振興・試験センターが行っています。年1回の実施で、出題は125問、配点は1問1点の125点満点。試験科目は「3パート4領域12科目及び総合問題1科目の計13科目」とされています。
第38回(令和7年度)は受験者78,469人・合格者54,987人・合格率70.1%でした。第37回(令和6年度)は78.3%、第36回(令和5年度)は82.8%です。合格率だけを見ると通しやすい試験に見えますが、合否は総得点だけでは決まりません。学習の組み立ては、そこから逆算することになります。
11の科目群すべてで1点以上、という条件が先にある
試験センターが公表している合格基準は2つの条件からできています。1つめは「問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点」であること。2つめは、それを満たした者のうち「11試験科目群すべてにおいて得点があった」ことです。
後者がいわゆる足切りにあたります。ただし「各科目で何割」という形ではなく、条件は「得点があること」、つまり1点以上です。逆に言えば、1つの科目群でも0点を取ると、総得点が基準点を上回っていても不合格になります。合格者にも不合格者にも、結果通知で総得点・各科目群の得点・無得点科目群が示されます。
科目は13あるのに科目群は11です。複数の科目を1つの群に束ねているためで、たとえば「人間の尊厳と自立、介護の基本」は2科目で1群、「人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術」も2科目で1群になります。第38回の11科目群は次のとおりでした。
- ①人間の尊厳と自立、介護の基本 ②社会の理解 ③人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
- ④生活支援技術 ⑤こころとからだのしくみ ⑥発達と老化の理解 ⑦認知症の理解
- ⑧障害の理解 ⑨医療的ケア ⑩介護過程 ⑪総合問題
この番号の並びは回によって変わります。第37回は①人間の尊厳と自立、介護の基本、②人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術、③社会の理解……という順で、第38回とは②と③が逆でした。群の数は11で共通ですが、番号自体を覚える意味は薄いことになります。
この条件がある以上、学習上は捨て科目を作れません。配点の小さい科目を切って総得点を稼ぐ配分が成り立たない設計です。手つかずの分野が1つでも残っていれば、総得点の見込みとは別に不合格の可能性を抱えたままになります。
合格点は固定ではなく、回ごとに64点・70点・67点と動いてきた
総得点の基準は「60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数」です。125点満点の60%なら75点ですが、実際に公表された基準点はそれより低い水準で、しかも回ごとに変わっています。第38回は125点に対し64点以上、第37回は70点以上、第36回は筆記試験で67点以上でした。
直近3回で6点の幅があります。難易度で補正がかかる以上、受験する回が易しければ基準点は上がり、難しければ下がります。「何点取れば受かる」という固定の目標を先に置けない試験だと考えたほうが実態に合います。
第39回(令和8年度・令和9年1月31日実施)の基準点は、まだ分かりません。基準点は各回の実施後に「合格基準及び正答」として公表される運用だからです。目標の置き方としては、直近3回で最も高かった70点を上回る水準を見込んでおく、という構え方になります。
125問がA・B・Cに割れ、第38回からパート合格が始まった
125問は3つのパートに分かれています。Aパートが科目群①から④までの60点、Bパートが⑤から⑨までの45点、Cパートが⑩と⑪の20点です。合計で125点になります。
第38回から、このパートを単位にした合格が導入されました。全パートの総得点で合格基準を満たさなかった人のうち、各パートの合格基準点以上を取り、かつそのパートを構成する科目群すべてで得点があった場合は「パート別の合格」となります。パート合格は、合格した試験の翌年・翌々年まで有効です。
有効期間内に再受験する場合は、全パートを受けるか、不合格だったパートだけを受けるかを選べます。ただし不合格パートの一部だけを受けることはできません。第39回で申込パートを選べるのは第38回でパート合格に該当した人だけで、初めて受験する人、第38回で合格パートが無かった人、前回の受験が第37回以前の人は全パート受験になります。
第38回のパート合格者は、Aパート3,935人、Bパート1,509人、Cパート6,181人(一部重複あり)でした。20点しかないCパートの該当者が最も多く、45点あるBパートが最も少なくなっています。落ちたときに何が残るかが第37回以前とは変わったので、次年度の学習範囲が丸ごと同じにはならない点は押さえておく価値があります。
パート別の基準点は事後に按分で決まる(第38回は32.23点・20.43点・11.33点)
パートごとの合格基準点は、あらかじめ決まった固定値ではありません。全パートを受験した全受験者の各パートの平均得点の比率を用いて、全体の合格基準点を按分して算出されます。そのため小数点の付いた数字になります。
第38回はAパート32.23点、Bパート20.43点、Cパート11.33点でした。満点に対する割合にすると、Aは60点中の32.23点、Bは45点中の20.43点、Cは20点中の11.33点で、Bパートだけ求められる割合が低くなっています。按分の定義からすると、これはBパートの平均得点が相対的に低かったことを反映した結果ということになります。
つまり、パートの基準点も受験前には確定していません。「Aパートだけ確実に取ってあとは翌年」という取り方を計算で組むことはできず、結局はどのパートも一定以上まで仕上げることになります。
4領域12科目の束ね方と、収録616問の8分野の対応
12科目は4つの領域にまとめられています。【人間と社会】人間の尊厳と自立/社会の理解/人間関係とコミュニケーション、【介護】介護の基本/コミュニケーション技術/生活支援技術/介護過程、【こころとからだのしくみ】こころとからだのしくみ/発達と老化の理解/認知症の理解/障害の理解、【医療的ケア】医療的ケア。これに全領域を横断する「総合問題」が加わって13科目です。総合問題は、全領域の知識と技術を横断的に問う問題を事例形式で出題するとされています。
パートへの割り当ては領域の切れ目と一致しません。Aパートには人間の尊厳と自立・介護の基本・社会の理解・人間関係とコミュニケーション・コミュニケーション技術・生活支援技術が入り、【人間と社会】と【介護】の一部が混ざります。Bパートはこころとからだのしくみ・発達と老化の理解・認知症の理解・障害の理解・医療的ケア、Cパートは介護過程と総合問題です。
ケンテイラボに収録している616問は、この科目構成に寄せて8分野に整理してあります。次の表が分野別の内訳です。本試験の科目別の出題数は公式に一覧で示されていないため、これは配点の比率ではなく、あくまで収録問題をどう割ってあるかの内訳です。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボでは介護福祉士の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している616問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「① 人間の尊厳と自立/介護の基本」の90問(全体の14.6%)、 最も少ないのは「④ 生活支援技術1(居住環境・身じたく・移動)」の55問(同8.9%)です。上位3分野だけで全体の40.9%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
- ① 人間の尊厳と自立/介護の基本:90問(14.6%) 解説つきで見る →
- ⑦ 発達と老化の理解/認知症の理解:82問(13.3%) 解説つきで見る →
- ⑤ 生活支援技術2(食事・入浴・排泄・家事・睡眠・終末期・緊急時):80問(13%) 解説つきで見る →
- ⑥ こころとからだのしくみ:80問(13%) 解説つきで見る →
- ② 社会の理解:77問(12.5%) 解説つきで見る →
- ⑧ 障害の理解/医療的ケア/介護過程:77問(12.5%) 解説つきで見る →
- ③ 人間関係とコミュニケーション/コミュニケーション技術:75問(12.2%) 解説つきで見る →
- ④ 生活支援技術1(居住環境・身じたく・移動):55問(8.9%) 解説つきで見る →
収録分野と科目群の対応は次のようになります。分野①から③はそのまま第38回の科目群①から③に重なります。分野④生活支援技術1(居住環境・身じたく・移動)55問と分野⑤生活支援技術2(食事・入浴・排泄・家事・睡眠・終末期・緊急時)80問は、合わせて1つの科目群「生活支援技術」にあたり、収録問題では計135問と8分野中で最も厚い部分です。ここまでがAパートの範囲になります。
分野⑥こころとからだのしくみ80問は科目群⑤に、分野⑦発達と老化の理解/認知症の理解82問は科目群⑥と⑦の2群にまたがります。分野⑧障害の理解/医療的ケア/介護過程77問は、障害の理解と医療的ケアがBパート、介護過程がCパートなので、1つの分野の中でパートの境目をまたいでいます。この3つが別々の科目群である前提で結果を見たほうが、無得点科目群のリスクを測りやすくなります。
総合問題に単独で対応する収録分野はありません。事例の中で全領域の知識を横断的に問う科目なので、他の7分野の学習がそのまま効く部分だと考えられます。
13科目を1日で終える時間割と、パート別受験のときの所要時間
科目数は13ありますが、試験は1日で終わります。第39回の全パート受験者の場合、午前の試験(Aパート)が10時00分から11時45分、午後の試験(B・Cパート)が13時40分から15時35分です。午前105分で60点分、午後115分で65点分を解く配分になります。
単純に割ると、午前・午後とも1問あたり1分45秒前後です。出題形式は「五肢択一を基本とする多肢選択形式」で、問題には図・表・イラスト・グラフ・写真が用いられることがあります。事例を読ませる問題では読む時間がそのまま要るので、知識問題を止まらずに流せるかが余裕を左右します。
不合格パートのみを受験する場合の時間は、Aパートのみが10時00分から11時45分、Bパートのみが13時40分から14時55分、Cパートのみが13時40分から14時20分です。BとCを別々に見ると75分と40分で、通しで受ける115分と一致します。
- 第39回の試験日は令和9年1月31日(日曜日)、合格発表は令和9年3月23日(火曜日)
- 受験申し込み受付期間は令和8年7月22日から9月2日まで。申込後の申込パート・希望試験地の変更はできない
- 試験地は35都道府県。受験手数料は20,510円(第38回は18,380円からの改定)
- 弱視等の受験者は1.3倍、点字等の受験者とEPA受験者等は1.5倍の試験時間
- 外国籍の方・帰化された方は申請により全漢字にふりがな付きの問題用紙と1.5倍の時間
実技試験は第37回から廃止され、古い情報との食い違いが起きる
第36回(令和5年度)までは、この試験は筆記試験と実技試験の2段階でした。第36回では筆記が令和6年1月28日に35都道府県で、実技が令和6年3月3日に2都府で実施されています。実技の対象は特例高校ルートなど一部の受験資格に限られていましたが、日程は2月をまたいで続いていました。
試験センターは、特例高校等ルートの説明の中で「第37回(令和6年度)試験より、実技試験を廃止し、筆記試験のみを行うこととなりました」と明記しています。現在は全ルートで筆記のみです。
その代わりに求められるようになったのが、登録申請までの「介護過程Ⅲ」の受講です。平成20年度以前に福祉系高等学校に入学して卒業した方、特例高等学校を卒業して9か月以上介護等の業務に従事した方、EPA候補者で令和6年5月以前に入国した方は、登録申請時に介護過程Ⅲの修了証明書を提出する必要があります。実務者研修を修了していれば、その修了証明書の提出で足ります。
実技の有無は、対策そのものより情報の取り扱いに効いてきます。第36回以前を前提にした教材や受験記は、実技の練習に触れていたり、日程の流れが今と違っていたりします。年度表記と回次を確認してから読むのが安全です。
収録616問を、無得点科目群を作らない順で回す
合格条件が「総得点+11科目群すべてで得点」である以上、問題演習の回し方も総得点を追う形とは変わってきます。得意分野を伸ばして点を積むより、まず全分野に一度ずつ触れて空白を消すほうが、条件の形に合っています。
- 1周目:8分野を薄くても最後まで通す。分野⑧は障害の理解・医療的ケア・介護過程の3つが別の科目群にあたるので、どれか1つだけ手つかずにならないよう中身で分けて確認する
- 2周目:分野別の正答率を見て、極端に低い分野から埋める。総得点の底上げより、低い分野を持ち上げるほうを優先する
- 3周目:分野④⑤の生活支援技術(収録計135問)と分野⑦(82問)という厚い部分を通し、Aパート・Bパートの分量に体を慣らす
- 直前:介護過程と、事例形式の総合問題にあたる読解量の多い問題で、1問1分45秒前後の感覚を作る
分野ごとの得点が見えると、「総得点は足りているのに特定の分野だけ落ちている」という状態を早い段階で見つけられます。演習の目的を正答数ではなく偏りの検出に置くと、条件の2つめに対応しやすくなります。
なお、8分野という分け方はケンテイラボ側の整理で、公式の出題区分そのものではありません。公式が示しているのは3パート4領域12科目と総合問題という構成と、11の試験科目群です。科目群の構成や合格基準点は回によって変わるため、受験する回の数字は試験センターの発表を確認してください。