介護福祉士国家試験は、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施する年1回の筆記試験です。出題数は125問、配点は1問1点で125点満点。五肢択一を基本とする多肢選択形式で、実技試験は第37回(令和6年度)から廃止されています。
この試験の合格条件は、点数がいくつ以上、という1本の線ではありません。基本の形は、総得点の条件と、科目群ごとの条件の2つを満たすことです。さらに第39回からは、この2つを満たさない場合でも、パートごとの判定ですべてのパートの基準を満たせば合格とする経路が加わりました(パート合格の有効期限内の人に限られます)。どちらの経路でも科目群の条件は外れないので、特定の分野を丸ごと捨てるという作戦は成立しません。
さらに第38回(令和7年度)試験からは、全体で不合格でもパート単位で結果が残る「パート合格」が始まりました。本記事は、この2つの仕組みだけを扱います。合格基準は試験センターの合格基準ページと第38回の「合格基準及び正答」、パート合格は同センターのパート受験の案内ページ、日程と試験時間は第39回試験の案内ページで確認しました。
総得点で通った人を、もう一度ふるいにかける二段構え
試験センターの合格基準は、2つの条件を満たした者を合格者とする、という形で書かれています。1つ目が問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点。2つ目が、その1つ目を満たした者のうち、11試験科目群すべてにおいて得点があった者です。
順番に意味があります。2つ目の条件は、1つ目を満たした人の中から適用されます。総得点で線を引き、その内側に入った人をもう一度、科目群の条件でふるいにかける構造です。総得点が基準点を大きく超えていても、この二段目で落ちることがあります。
一段目の基準点は回ごとに動きます。第38回は125点に対し64点以上、第37回(令和6年度)は70点以上、第36回(令和5年度)は筆記試験で67点以上でした。いずれも総得点の60%程度を基準に、その回の難易度で補正した点数です。60%=75点という固定の数字ではない、と理解しておく必要があります。
13科目が11の科目群に束ねられている
試験科目は、4領域12科目と総合問題1科目の計13科目です。一方、合格基準で数えるのは11の試験科目群。この13と11のずれは、複数の科目を1つの群にまとめているところがあるために生じます。
第38回の11科目群は次のとおりです。①と③が、それぞれ2科目を束ねた群になっています。
- ① 人間の尊厳と自立、介護の基本
- ② 社会の理解
- ③ 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
- ④ 生活支援技術
- ⑤ こころとからだのしくみ
- ⑥ 発達と老化の理解
- ⑦ 認知症の理解
- ⑧ 障害の理解
- ⑨ 医療的ケア
- ⑩ 介護過程
- ⑪ 総合問題
注意したいのは、この丸数字の並び順が回によって異なる点です。第37回の11科目群は、①人間の尊厳と自立、介護の基本、②人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術、③社会の理解、④生活支援技術、⑤介護過程、⑥こころとからだのしくみ、⑦発達と老化の理解、⑧認知症の理解、⑨障害の理解、⑩医療的ケア、⑪総合問題、という並びでした。群の数は同じ11でも、番号と中身の対応は固定ではありません。
無得点科目群は「割合」ではなく「0点かどうか」で判定される
2つ目の条件の文言は「11試験科目群すべてにおいて得点があった者」です。ここで求められているのは得点があること、つまり1点以上です。各科目群で何割以上といった水準が定められているわけではありません。
この言い方は誤解されやすいところです。他の試験によくある、科目ごとに一定割合以上を求める足切りとは条件の形が違います。介護福祉士国家試験で問題になるのは、ある科目群の得点が0点になること、すなわち無得点科目群が生じることです。
1科目群でも0点があれば、総得点が基準点を超えていても不合格になります。逆にいえば、どの科目群でも1問当たれば、この条件そのものはクリアされます。
結果通知には、総得点と各科目群の得点、そして無得点科目群が記載されます。合格者にも不合格者にも示されるので、不合格だった場合、総得点が足りなかったのか、それとも無得点科目群があったのかを自分の通知で切り分けられます。
学習計画に落とすとこうなります。手をつけない科目群を作らないこと、これが最低条件です。苦手な領域に時間を厚く配分するかどうかは各自の判断ですが、ゼロにしてよい科目群は11のうち1つもありません。
125問はA60点・B45点・C20点の3つに割られている
試験科目は3つのパートに分割されています。科目群との対応と配点は次のとおりです。
- Aパート = 科目群①②③④(60点)
- Bパート = 科目群⑤⑥⑦⑧⑨(45点)
- Cパート = 科目群⑩⑪(20点)
科目名で並べ直すと、Aパートが人間の尊厳と自立、介護の基本、社会の理解、人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術、生活支援技術。Bパートがこころとからだのしくみ、発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、医療的ケア。Cパートが介護過程と総合問題です。
実施時間帯も分かれています。Aパートが午前、B・Cパートが午後です。第39回(令和8年度、令和9年1月31日実施)で全パートを受験する場合、午前の試験が10時00分から11時45分、午後の試験が13時40分から15時35分と案内されています。
Cパートは20点分しかありませんが、介護過程と総合問題という2つの科目群が入っています。総合問題は全領域の知識および技術を横断的に問う問題を事例形式で出題するものなので、Cパートだけを切り離して対策する、という組み立ては取りにくい構成です。
第38回から、全体で届かなくてもパートが残るようになった
パート合格は、全パートの総得点の合格基準を満たさなかった人に対する仕組みです。各パートの合格基準点以上を得点し、かつそのパートを構成する試験科目群すべてにおいて得点があった場合、そのパートは合格として扱われます。
ここでも科目群の条件が付いている点に注目してください。全体の合格条件と同じ形が、パート単位でもそのまま適用されます。Bパートの点数が基準点を超えていても、Bパート内の医療的ケアが0点であれば、そのパートは合格になりません。
第38回のパート別合格者数は、Aパート3,935人、Bパート1,509人、Cパート6,181人でした。一部重複があるとの注記が付いています。パートごとに人数の開きがあり、最も多いCパートと最も少ないBパートでは4倍を超える差が出ています。
合格したパートは、受験免除として翌年・翌々年まで有効です。第38回でパート合格した場合、第39回と第40回にあたる期間が対象になります。この制度は第38回試験から始まったものなので、前回の受験が第37回以前だった人には合格パートがありません。
パート別の合格基準点は、受験が終わってから按分で決まる
パートごとの合格基準点は、あらかじめ決められた固定値ではありません。全パートを受験した全受験者の各パートの平均得点の比率を用いて、全体の合格基準点を按分して求める、という算出方法が公表されています。
その結果、基準点は小数点の付いた数値になります。第38回のパートごとの合格基準点は、Aパートが32.23点、Bパートが20.43点、Cパートが11.33点でした。全体の基準点である64点を、3つのパートの平均得点の比率で割り振った値です。
この決まり方には、受験前に目標点を確定できないという性質があります。全体の基準点が難易度で補正されて動き、そのうえで各パートの平均得点の比率も回ごとに変わるためです。前回のパート基準点は参考にはなっても、次回の保証にはなりません。
再受験で選べるのは2通りだけ、申込後の変更もできない
パート合格の有効期間内に再受験する場合、選べるのは全パートを受験するか、不合格パートのみを受験するかの2通りです。不合格パートが2つある人が、そのうち片方だけを受験する、という選び方はできません。
第39回で申込パートを選べるのは、第38回試験でパート合格に該当した人のみです。初めて受験する人、第38回で合格パートがなかった人、前回の受験が第37回以前だった人は、いずれも全パート受験になります。
不合格パートのみを受験する場合、午後の時間割が変わります。第39回の案内では、Aパートのみは10時00分から11時45分で全パート受験の午前と同じです。Bパートのみは13時40分から14時55分、Cパートのみは13時40分から14時20分と短くなります。Bパートのみ・Cパートのみを選んだ場合は午後だけの受験になります。
申込パートは受験申し込みのときに決めます。第39回の受験申し込み受付期間は令和8年7月22日から9月2日までで、申し込み後に選択した申込パートを変更することはできません。希望試験地の変更もできないと案内されています。
受けるパートを絞るかどうかは、合格発表を見たうえで、次回の申し込み時点で1回だけ決めることになります。
収録616問の8分野を、A・B・Cのどこに置くか
ケンテイラボの介護福祉士は616問を収録していて、8つの分野に分けています。国家試験の科目群とは分け方が少し違うので、どの分野がどのパートに対応するかを整理しておきます。
- ① 人間の尊厳と自立/介護の基本(90問)— Aパート(科目群①)
- ② 社会の理解(77問)— Aパート(科目群②)
- ③ 人間関係とコミュニケーション/コミュニケーション技術(75問)— Aパート(科目群③)
- ④ 生活支援技術1(居住環境・身じたく・移動、55問)— Aパート(科目群④)
- ⑤ 生活支援技術2(食事・入浴・排泄・家事・睡眠・終末期・緊急時、80問)— Aパート(科目群④)
- ⑥ こころとからだのしくみ(80問)— Bパート(科目群⑤)
- ⑦ 発達と老化の理解/認知症の理解(82問)— Bパート(科目群⑥⑦)
- ⑧ 障害の理解/医療的ケア/介護過程(77問)— Bパート(科目群⑧⑨)とCパート(科目群⑩)
収録分野の①から⑤までがAパートに対応し、合計377問になります。Aパートは配点も60点で最も大きいので、収録問題の側でも量が集まる形です。生活支援技術は国家試験では1つの科目群ですが、収録では範囲が広いため2分野に分けています。
気をつけたいのが収録分野⑧です。障害の理解と医療的ケアはBパート、介護過程はCパートに属するため、この1分野だけがパートをまたいでいます。不合格パートのみを受験する人がこの分野を使うときは、パートに合わせて中身を選り分ける必要があります。
無得点科目群の条件に照らすと、確認すべきなのは各分野の正答数よりも、手つかずの分野が残っていないかどうかです。次の表は分野ごとの収録問題数と構成比を示したものなので、まだ一度も解いていない分野が無いかを見るのに使えます。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボでは介護福祉士の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している616問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「① 人間の尊厳と自立/介護の基本」の90問(全体の14.6%)、 最も少ないのは「④ 生活支援技術1(居住環境・身じたく・移動)」の55問(同8.9%)です。上位3分野だけで全体の40.9%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
- ① 人間の尊厳と自立/介護の基本:90問(14.6%) 解説つきで見る →
- ⑦ 発達と老化の理解/認知症の理解:82問(13.3%) 解説つきで見る →
- ⑤ 生活支援技術2(食事・入浴・排泄・家事・睡眠・終末期・緊急時):80問(13%) 解説つきで見る →
- ⑥ こころとからだのしくみ:80問(13%) 解説つきで見る →
- ② 社会の理解:77問(12.5%) 解説つきで見る →
- ⑧ 障害の理解/医療的ケア/介護過程:77問(12.5%) 解説つきで見る →
- ③ 人間関係とコミュニケーション/コミュニケーション技術:75問(12.2%) 解説つきで見る →
- ④ 生活支援技術1(居住環境・身じたく・移動):55問(8.9%) 解説つきで見る →
分野ごとの取り組みやすさの目安として、収録問題の性質も集計しています。数値を含む問題の割合が高い分野は制度や基準の数字を覚える比重が大きく、問題文の平均文字数が長い分野は事例形式の設問が多いことを示します。
分野別の学習タイプ(収録616問の集計)
ケンテイラボに収録している介護福祉士の問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。
この試験でもっとも数値の比率が高いのは「② 社会の理解」で42%、 もっとも低いのは「③ 人間関係とコミュニケーション/コミュニケーション技術」で9%でした。 また問題文がもっとも長いのは「① 人間の尊厳と自立/介護の基本」の平均47字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。
- ① 人間の尊厳と自立/介護の基本:90問/数値を含む問題 39%/問題文 平均47字
- ② 社会の理解:77問/数値を含む問題 42%/問題文 平均38字
- ③ 人間関係とコミュニケーション/コミュニケーション技術:75問/数値を含む問題 9%/問題文 平均38字
- ④ 生活支援技術1(居住環境・身じたく・移動):55問/数値を含む問題 27%/問題文 平均33字
- ⑤ 生活支援技術2(食事・入浴・排泄・家事・睡眠・終末期・緊急時):80問/数値を含む問題 25%/問題文 平均30字
- ⑥ こころとからだのしくみ:80問/数値を含む問題 16%/問題文 平均35字
- ⑦ 発達と老化の理解/認知症の理解:82問/数値を含む問題 15%/問題文 平均39字
- ⑧ 障害の理解/医療的ケア/介護過程:77問/数値を含む問題 19%/問題文 平均33字
数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。
この試験では、総得点を積み上げる作業と、11の科目群を1つも空けない作業が別々に必要です。パート合格が加わったことで、全体に届かなかった回の結果も次の2年に持ち越せるようになりました。どのパートを残せたかによって次回の受け方が変わるので、パートと科目群の対応は早い段階で頭に入れておくと判断がしやすくなります。