画像処理エンジニア検定エキスパートの当日に渡されるのは、紙の問題冊子とマークシートの解答用紙です。CG-ARTS(公益財団法人画像情報教育振興協会)は5つの検定を同じ枠組みで実施していて、出題数は「マークシート形式 大問10問(約40設問)」と、全検定・全レベル共通の形で案内されています。
この記事は、その答案がどういう形をしているかだけを扱います。大問の並び、設問ごとの配点、80分という持ち時間の切り方、そして知的財産権が画像処理の検定に置かれている位置づけまでを、CG-ARTSの受験要項・受験案内2026・FAQ、および公開されている2026年度前期の問題冊子と解答のPDFで確かめます。
合格基準点は100点満点で70点です。合格率そのものは別の記事で扱うので、ここでは「70点が答案の上で何設問ぶんか」という側面だけに触れます。
答案用紙はマークシート1枚、書き込むのは設問ごとの記号だけ
出題形式は択一式で、各設問について解答群から記号を1つ選んでマークします。会場一斉の筆記試験(PBT)で、CBTでの実施についての記載は公式サイトにありません。公開受験会場は2026年度後期で17か所(札幌・仙台・宇都宮・川越・千葉・東京23区・横浜・静岡・名古屋・金沢・京都・大阪・神戸・広島・松山・福岡・那覇)、これに団体責任者が登録した準会場が加わります。
記述欄も計算過程を書く欄もないので、途中まで合っていた計算に部分点が付くことはありません。レンズ公式を使う設問も語句を選ぶ設問も、答案の上で残るのは記号1つで、同じ形をしています。
過去問はCG-ARTSのサイトで過去2回分だけが公開され、検定実施後1週間程度で更新されます。解答用紙(マークシート)のPDFも一緒に配布されているため、答案の見た目そのものは本番前に手元で再現できます。
第1問は5検定共通の4設問。画像処理そのものは第2問から始まる
2026年度前期のエキスパート画像処理エンジニア検定は、第1問から第10問までの10大問・41設問で構成されていました。2025年度後期も同じく41設問です。案内上の「約40設問」は、実際にはこの41という数字になっています。
このうち第1問は〈共通問題〉と表示された4設問で、CG-ARTS検定5検定の受験者全員が解答します。マルチメディア検定・CGクリエイター検定・Webデザイナー検定・CGエンジニア検定・画像処理エンジニア検定のどれを受けても、答案の最初の4設問は共通ということです。公開されている2回分では、この共通問題はいずれも知的財産権を扱っています。
第2問以降が画像処理エンジニア検定の内容です。2026年度前期のテーマは次のように並んでいました。各大問の冒頭には「以下は、〜に関する問題である」という一文が置かれ、その大問が何を扱うのかが先に示される作りです。
- 第2問 画像の撮影と色空間
- 第3問 ディジタル画像の撮影
- 第4問 画素ごとの濃淡変換と空間フィルタリング
- 第5問 画像の復元と生成
- 第6問 幾何学的変換と補間
- 第7問 2値画像処理
- 第8問 パターン、図形、特徴の検出とマッチング
- 第9問 シーンの復元
- 第10問 画像符号化
この9つのテーマは、対応テキスト『ディジタル画像処理[改訂第二版]』の範囲を撮影から符号化へ向かう順に並べたものですが、17章すべてが毎回出るわけではありません。公開されている2回分を並べると、第2問「画像の撮影と色空間」・第3問「ディジタル画像の撮影」・第4問「画素ごとの濃淡変換と空間フィルタリング」・第6問「幾何学的変換」・第7問「2値画像処理」・第8問「パターン、図形、特徴の検出とマッチング」・第10問「画像符号化」の7つは両回に共通で、入れ替わるのは第5問と第9問です。2026年度前期は第5問が「画像の復元と生成」・第9問が「シーンの復元」、2025年度後期は第5問が「周波数領域におけるフィルタリング処理」・第9問が「動画像処理」でした。つまり周波数領域は2026年度前期には出ておらず、画像の復元と生成は2025年度後期には出ていません。骨格の7テーマは毎回来る前提で、残り2枠がどこから来ても答えられるように広げておく、という構えになります。
2026年度前期の配点は、2.5点が36設問と2点が5設問
過去問ダウンロードページに「※今回より配点を公開しております。」と告知され、2026年度前期から設問ごとの配点が分かるようになりました。それ以前に公表されていたのは、100点満点であることと合格基準点70点までです。
2026年度前期の配点は、第4問の5設問だけが各2点で、残る36設問が各2.5点。2.5かける36に2かける5を足すと、ちょうど100点になります。設問数を調整するのではなく、1設問あたりの重みを変えて100点に合わせている作りです。
大問単位で見ると、第1問の共通問題4設問は2.5点ずつなので10点。各2点が並ぶ第4問も5設問で10点です。画像処理の中身に入る前の共通問題だけで、100点のうち10点が動くことになります。
70点に届くのに要るのは、41設問のうち28設問から29設問
配点が分かると、合格基準点70点が答案の上で何設問ぶんかを計算できます。落とせるのは合計30点までです。
2.5点の設問だけを落とす場合は12設問まで(2.5かける12で30点)で、正解は29設問必要になります。2点の設問5つをすべて落とし、残りを2.5点の設問8つで埋める場合(2かける5に2.5かける8を足して30点)は、落とせる設問が13になり、正解は28設問で足ります。
つまり41設問のうち28から29、割合でいえば7割前後を取れば基準に届きます。ただし受験案内には「難易度により多少変動します」との注記があり、70点が動かない線とは限りません。検定の結果に関する問い合わせには回答されないとも明記されているので、この換算は自己採点の目安として使う数字になります。
大問はテーマで区切られ、設問は大問の中でも互いに独立している
大問形式と聞くと、前の設問で出した値を次の設問で使い、1つ間違えると後ろが総崩れになる形を思い浮かべるかもしれません。ただ、CG-ARTSが公開している受験要項・受験案内2026・FAQを見た範囲では、設問間の依存関係についての説明を確認できませんでした。連鎖があるかどうかを前提にした対策は、公開資料からは組み立てられません。
公開資料から確実に言えるのは、1つの大問が1つのテーマでまとまっていることです。第4問なら濃淡変換と空間フィルタリング、第7問なら2値画像処理というように、同じ範囲の設問が固まって出ます。
この形だと、失点は設問単位ではなく範囲単位で現れます。空間フィルタリングが手つかずなら第4問の5設問、2値画像処理が手つかずなら第7問が、まとめて危うくなります。設問が1つずつ独立に散らばっている試験に比べて、苦手な範囲の影響が答案の一か所に集まる構造です。
裏を返せば、テーマが大問の冒頭に書かれているので、冊子を開いた時点でどの大問が自分にとって重いかが判断できます。解く順番を先に決められるのは、この形式の利点にあたります。
80分を41設問で割ると1設問2分弱。最初の35分は退出できない
1検定のみを受ける単願の試験時間は、13時00分から14時20分までの80分です。41設問で割ると1設問あたり約1分57秒。計算機などの電子機器は使用できないため、レンズ公式による結像位置も、ハフマン符号の平均符号長も、すべて手で処理することになります。
時間の使い方に効いてくるのが退出の制限です。試験開始後35分を経過するまでと、試験終了10分前からは退出できません。早く解き終わっても最初の35分は席にいることになり、終盤の10分も同じく席に残ります。マークのずれを直す時間はここで取れます。
設問1つの重さは分野によって違います。ケンテイラボの収録問題を分野ごとに集計すると、数値を含む問題の割合と問題文の平均文字数は次のようになります。読む量が多い分野と、短い問題文でも手計算が要る分野を見分ける材料になります。
分野別の学習タイプ(収録659問の集計)
ケンテイラボに収録している画像処理エンジニア検定エキスパートの問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。
この試験でもっとも数値の比率が高いのは「④ 幾何学的変換」で67%、 もっとも低いのは「⑧ 画像符号化/知的財産権」で43%でした。 また問題文がもっとも長いのは「② 画素ごとの濃淡変換と領域に基づく濃淡変換」の平均62字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。
- ① ディジタル画像の撮影と画像の性質・色空間:81問/数値を含む問題 65%/問題文 平均52字
- ② 画素ごとの濃淡変換と領域に基づく濃淡変換:78問/数値を含む問題 65%/問題文 平均62字
- ③ 周波数領域におけるフィルタリングと画像の復元・生成:84問/数値を含む問題 45%/問題文 平均48字
- ④ 幾何学的変換:89問/数値を含む問題 67%/問題文 平均44字
- ⑤ 2値画像処理と領域処理:85問/数値を含む問題 66%/問題文 平均47字
- ⑥ パターン・特徴の検出とマッチング/パターン認識/深層学習:81問/数値を含む問題 52%/問題文 平均44字
- ⑦ 動画像処理/3次元復元/光学的解析とシーンの復元:81問/数値を含む問題 52%/問題文 平均48字
- ⑧ 画像符号化/知的財産権:80問/数値を含む問題 43%/問題文 平均39字
数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。
配分を実際に試すなら、公式問題集[第五版]にエキスパート4回分が収録されているので、80分を計って1回分を通しで解く形が取れます。
併願の150分は、80分の試験を2回受けるより10分短い
同じエキスパートで2検定を受ける併願の場合、試験時間は13時00分から15時30分までの150分です。単願80分の2回ぶんは160分ですから、10分短い計算になります。1検定あたりに直すと75分です。
1日に受験できるのは最大4検定で、午前にベーシック2検定、午後にエキスパート2検定という組み合わせが上限です。レベルをまたいだ併願はできず、当日の受験レベル変更や検定の追加も受け付けられません。同一レベル内での検定名の変更のみ、試験開始前まで可能です。
問題冊子は5検定分が1冊にまとまっていて、第1問〈共通問題〉は併願でも1回しか解きません。設問数でいえば41×2の82ではなく78になります。CG-ARTSは10分差の理由を明示していませんが、併願しても解く設問が単純に2倍にはならないことは冊子から読み取れます。
知的財産権は付録ではなく、出題内容6分類の1つとして並んでいる
受験案内2026が示す画像処理エンジニア検定の出題内容は6分類です。[基礎][画像信号処理][パターン認識・計測][メディア処理・符号化][画像処理システム]と続いて、6つ目が[知的財産権]。5つの技術分類と横並びで、独立した分類として置かれています。
一方、対応テキスト『ディジタル画像処理[改訂第二版]』では、知的財産権は本文17章の外にある付録a-7の扱いです。本の構成では付録、検定の出題内容では6分の1という違いがあり、範囲を章立てだけで組み立てると抜けやすい位置にあります。
[知的財産権]はCG-ARTSの5検定すべての出題内容に共通して置かれた分類で、実際に第1問〈共通問題〉として全受験者に出題されます。なお、この検定が測るものとして出題内容の総括文が挙げているのは「工業分野、医用、リモートセンシング、ロボットビジョン、交通流計測、バーチャルスタジオ、画像映像系製品などのソフトウェアやシステム、製品などの開発を行うための知識」です。
なお、同じCG-ARTSのCGエンジニア検定エキスパートは別の検定です。画像処理エンジニア検定が「画像処理技術を要するエンジニアに」、CGエンジニア検定が「CG分野の開発を行うエンジニアに」と位置づけられており、名前が似ていても答案の中身は入れ替わりません。
収録80問を中身で分けると、権利側41問と符号化側39問
ケンテイラボの画像処理エンジニア検定エキスパートは659問を収録しています。8分野に分けた収録数と構成比は次の表のとおりです。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボでは画像処理エンジニア検定エキスパートの収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している659問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「④ 幾何学的変換」の89問(全体の13.5%)、 最も少ないのは「② 画素ごとの濃淡変換と領域に基づく濃淡変換」の78問(同11.8%)です。上位3分野だけで全体の39.1%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
- ④ 幾何学的変換:89問(13.5%) 解説つきで見る →
- ⑤ 2値画像処理と領域処理:85問(12.9%) 解説つきで見る →
- ③ 周波数領域におけるフィルタリングと画像の復元・生成:84問(12.7%) 解説つきで見る →
- ① ディジタル画像の撮影と画像の性質・色空間:81問(12.3%) 解説つきで見る →
- ⑥ パターン・特徴の検出とマッチング/パターン認識/深層学習:81問(12.3%) 解説つきで見る →
- ⑦ 動画像処理/3次元復元/光学的解析とシーンの復元:81問(12.3%) 解説つきで見る →
- ⑧ 画像符号化/知的財産権:80問(12.1%) 解説つきで見る →
- ② 画素ごとの濃淡変換と領域に基づく濃淡変換:78問(11.8%) 解説つきで見る →
このうち「⑧ 画像符号化/知的財産権」の80問を中身で分けると、権利にかかわる問題が41問、符号化の問題が39問で、ほぼ半々になります。権利側には、著作権法などの法律名が出てこない設問(映画の盗撮の防止、技術的保護手段など)も含めて数えました。分野名の後ろ半分が、収録問題では分野の半分の量を占めているということです。
収録問題の権利側41問には、著作権の発生要件(無方式主義)、実名の著作物と団体名義の著作物で異なる保護期間、私的複製の例外、写り込みの扱い、引用の要件、依拠、著作隣接権、そして意匠法・商標法・特許法・実用新案法・不正競争防止法それぞれの保護対象を切り分ける設問が入っています。収録659問のうち「著作」に触れる問題は30問、「意匠」は7問、「特許」は8問、「商標」は6問、「実用新案」は5問、「不正競争」は3問です。
法律の名前ごとに保護対象を覚えるだけでなく、操作用画面のデザインは意匠法、アルゴリズムを用いた発明は特許法、ソフトのタイトル名称やロゴマークは商標法というように、画像処理の現場で出てくるものを法律に割り振る形で問われます。数字を含む規定も、収録問題では模倣品の販売が禁止される3年、映画の盗撮が私的使用目的でも違法になる8か月といった形で、択一の選択肢に紛らわしく並びます。
符号化側の39問は計算が中心で、階調数からビット数を出す、縮小と減色でデータ量が何分の1になるかを求める、平均符号長を算出するといった設問です。権利側がどこに出るかは、公開されている問題冊子を見ると分かります。2026年度前期・2025年度後期のどちらも、第1問〈共通問題〉の冒頭は「以下は,知的財産権に関する問題である.」で始まっており、第2問から第10問の本文には著作・意匠・商標・特許・実用新案・不正競争のいずれの語も出てきません。つまり権利の設問は答案の冒頭4設問(2.5点×4=10点)に固まっていて、画像処理の中身に入る第2問以降とは切り離されています。