データサイエンス数学ストラテジスト中級は、公益財団法人日本数学検定協会が2021年9月に新設した資格です。五肢択一30問をIBT(インターネットに接続した環境でオンライン上で解答する方式)で解き、試験時間は90分。合格基準は60パーセント以上、すなわち30点中18点以上で、30問30点なので1問1点です。
出題は公式が「4つの学習分野」と呼ぶ区分に分かれています。中級の問題配分は、学習分野1が50パーセント、学習分野2・3・4がそれぞれ16.7パーセント(いずれもおおよその目安)と示されています。30問に直すと、学習分野1が15問、残りの3分野が5問ずつという計算です。
本記事は、この配分から学習の順番と時間の割り振りを組み立てます。ケンテイラボが収録している762問が公式の4学習分野のどこに当たるのかを対応させたうえで、どこから手を付け、どこで手を止めるかを整理します。制度の数値は公式サイトの受験案内、問題数は収録問題の実数によります。
「30問のうち15問が学習分野1」という配分の中身
学習分野1の正式名称は「AI・データサイエンスを支える計算能力と数学的理論の理解」です。名前にAI・データサイエンスと入っていますが、中級で示されている範囲は小学校算数と中学校数学、そして高校の数学I・Aです。四則計算、グラフ、比例と反比例、割合と比、平均、単位あたりの大きさから、正負の数、文字式、1次・連立・2次の方程式、1次関数、y=ax^2、三平方の定理、資料の活用、確率、さらに数と式、2次関数、三角比、データの分析、場合の数と確率までが並びます。
残る3つは、学習分野2「機械学習・深層学習の数学的理論の理解」、学習分野3「アルゴリズム・プログラミングに必要な数学リテラシー」、学習分野4「ビジネスにおいて数学技能を活用する能力」です。分野2と分野3は中学校数学と数学I・Aの範囲で扱うとされ、分野4はビジネス数学検定3級から2級のレベルにあたるとされています。
名前を並べると4つが横並びに見えますが、点数の重みは同じではありません。合格に要る18点に対し、学習分野1だけで15点分の設問が出る計算になります。数学のレベルの目安も、中級は数検準2級程度・数学I・Aまでとされていて、分野1の範囲とそのまま重なります。
ケンテイラボの8分野を、公式の4学習分野に置き直す
当サイトの分野分けは公式の学習分野そのままではなく、解く単位に合わせて8つに割ってあります。公式の区分に寄せると次の対応になります。
- 学習分野1(計算能力と数学的理論)=① 数と計算の基礎112問/② 記述統計とデータの表現80問/③ 式と方程式・関数142問/④ 図形・三角比と確率95問=合計429問
- 学習分野2(機械学習・深層学習)=⑤ 機械学習の基礎とニューラルネットワーク80問/⑥ 分類・クラスタリングとモデル評価80問=合計160問
- 学習分野3(アルゴリズム・プログラミング)=⑦ アルゴリズム関連92問
- 学習分野4(ビジネスにおいて数学技能を活用する能力)=⑧ ビジネス数学81問
762問に占める割合は、学習分野1が56.3パーセント、分野2が21.0パーセント、分野3が12.1パーセント、分野4が10.6パーセントです。本番の配分(50/16.7/16.7/16.7パーセント)と並べると、分野1が6.3ポイント、分野2が4.3ポイント本番より厚く、分野3は4.6ポイント、分野4は6.1ポイント薄い、という関係になります。分野2の160問を最後まで同じ密度でやると、本番の重みからずれていきます。
分野ごとの収録問題数と構成比、それぞれの分野で何を扱うのかは、次の表にまとめています。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボではデータサイエンス数学ストラテジスト[中級]の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している762問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「③ 式と方程式・関数」の142問(全体の18.6%)、 最も少ないのは「⑥ 分類・クラスタリングとモデル評価」の80問(同10.5%)です。上位3分野だけで全体の45.8%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
学習分野1の429問は、③式と方程式・関数から入ると全体が動く
429問の内訳は①112問・②80問・③142問・④95問で、いちばん多いのが③です。番号順に①から始めたくなりますが、③を先に置く理由が2つあります。
1つは、③が他の分野の下ごしらえになっていることです。1次関数の傾きと切片は⑤の回帰直線の話にそのまま使われ、2次関数の平方完成や頂点の考え方は勾配降下法の説明につながります。収録問題では、平方完成に触れる設問が12問、判別式に触れる設問が24問あります。判別式は「実数解の個数」と「グラフがx軸と交わる点の数」という別々の言い方で問われるので、両方の言い回しに慣れておく必要があります。
もう1つは、③が手を動かせば正誤のはっきりする分野だということです。収録問題では因数分解に触れる設問が23問、連立方程式が14問あります。答えが1つに決まるので、最初の一周で自分の現在地を測る材料になります。
①は四則計算の順序、正負の数、割合と比、数列で、収録112問のうち数列に触れるのは19問です。②は尺度の区別、度数分布表、代表値、分散と標準偏差、グラフの選び方で、収録80問のうち標準偏差に触れる設問が9問、中央値に触れる設問が15問あります。④は三角比と場合の数・確率で、順列と組み合わせのどちらを使うかが分かれ目になります。
学習分野2の160問を、本番5問のために全部やらない
⑤と⑥を合わせた160問が公式の学習分野2にあたります。本番ではおおよそ5問です。収録量と出題数の差がいちばん大きいのがこの分野で、ここに時間をかけすぎると分野1が薄くなります。
割り切り方の目安は、計算で答えが1つに決まる設問を先に固めることです。⑤では、混同行列から求める適合率に触れる設問が10問、散布図まわりの相関係数に触れる設問が10問あります。適合率と再現率は分母が「予測した数」か「実際の数」かで入れ替わるので、式ではなく分母の意味で覚えると取り違えにくくなります。
⑥は2点間の距離やクラスターの中心を数値で出す設問が中心で、収録80問のうち距離に触れる設問が21問です。直線距離とマンハッタン距離のどちらを聞かれているかで答えが変わります。過学習に触れる設問は6問で、こちらは計算ではなく状態の説明を選ぶ形です。
一方、教師あり学習と教師なし学習の区別、活性化関数の名前、次元削減の手法名といった用語の言い換えは、範囲を広げるときりがありません。公式サイトの学習サポートページには4つの学習分野それぞれのサンプル試験問題が掲載されているので、問われ方を先に確かめてから拾う範囲を決めるほうが早く済みます。
学習分野3の92問は、数学ではなく情報の言葉で書かれている
⑦アルゴリズム関連の92問が学習分野3です。公式の範囲には、ソートアルゴリズム、探索アルゴリズム、暗号アルゴリズム、計算量理論に加えて、フローチャート、情報理論、情報量(ビット)の扱い、データ誤りの訂正、圧縮効率、逆ポーランド記法が挙げられています。
数学I・Aの延長には出てこない語が多く、独立した暗記の対象になります。収録問題では計算量に触れる設問が8問、2進数が7問、二分探索が4問。設問数そのものは多くありませんが、語を知らないと選択肢5つのどれも判断できない作りなので、用語を先に通しておくと得点に変わりやすい部分です。
この分野には「課題を読み取り、規則性・法則性を発見しながら解答まで一貫性を持って導く」数学的課題解決も含まれます。ナップザック問題のように、暗記ではなく1問に時間をかけて解く側の設問です。用語の暗記と、時間をかけて解く練習は分けて扱うほうが進みます。
学習分野4の81問は、利益の段階と指標の定義に集まる
⑧ビジネス数学の81問が学習分野4です。公式の範囲は、SNS・デジタルマーケティングやKPIといった最新ビジネストレンド知識に加え、金融、経営学、マーケティング、経済学、行動経済学の基礎知識とされています。
収録問題で計算になるのは、利益の段階を追う設問です。営業利益に触れる設問が8問あり、売上総利益・営業利益・経常利益のどこで何を引くのかを段階ごとに確かめる形になっています。あわせて、PV・UU・セッション・直帰率・CVRといったアクセス解析の指標や、重み付け評価、移動平均も出ます。
数学の力というより、言葉の定義を取り違えないかを見る色が濃い分野です。計算そのものは四則演算の範囲に収まるものが多く、81問は他の分野より短い時間で一周できます。学習分野1の合間に挟むと、進んでいる感覚を保ちやすくなります。
1問1点で分野別の足切りがない、という条件から逆算する
中級の合格基準は30点中18点以上で、1問1点。学習分野ごとの最低点(分野別の足切り)は公式の受験案内に書かれておらず、総合得点で判定される形です。この条件だと、どの分野で18点を作るかは受験者側が選べることになります。
配分どおりなら、学習分野1の15問を取り切れば残りは3問です。ただし配分は「おおよその目安」とされていて、15問ちょうどが保証されているわけではありません。分野1を軸に置いたうえで、分野2から4の15問についても、用語の言い換えを問う設問だけは落とさない状態にしておくのが現実的な組み方になります。
もう1つ、合否とは別の話があります。合格基準に達した人には、「データサイエンス(DS)数学基礎力」と「データサイエンス(DS)数学コンサルティング力」の得点バランスに応じて、☆☆☆・☆☆・☆の3種類のオープンバッジが発行されます。配分どおりなら分野1が15問=基礎力の15点、分野2から4の15問がコンサルティング力の15点にあたるので、分野1だけで合格ラインの18点に届くことはそもそもありません。バッジの基準は公式に示されていて、中級は基礎力12点以上かつコンサルティング力12点以上で☆☆☆、それぞれ9点以上で☆☆、その条件を満たさずに総合18点以上なら☆です。合格の証明としての差はありませんが、分野1に寄せた取り方だと星は減る側に動きます。
90分で30問。1問3分に収まらない設問を練習中に決めておく
試験時間は90分で、科目の区切りはありません。30問を通しで解くので、単純に割ると1問3分です。時間配分を自分で決められる代わりに、途中で区切ってくれる仕組みもありません。
収録問題を見ると、時間のかかり方は分野で偏ります。③の連立方程式や2次関数の頂点、⑥の距離や不偏分散、⑧の重み付け評価のように、式を立てて数値を出す設問は手が止まります。一方で、①の四則計算の性質、②の尺度の区別、⑤や⑥の用語の定義を選ぶ設問は、読んだ時点で選べる作りです。
1問3分は平均であって、即答できる設問を1分で片づけた分がそのまま計算問題に回ります。練習の段階で「即答する設問」と「書いて解く設問」を仕分けておくと、本番で配分を考える時間そのものが要らなくなります。
申し込みから30日という枠に、762問の周回を収める
試験日はシステムのメンテナンス時を除いて24時間365日、申込期間も試験実施期間も随時です。日程に縛られない代わりに、受験期間は申し込みから1か月と決まっています。注意事項では試験有効期限を「受験のお申し込みの日から30日」としており、過ぎると受験できず、受験料の返還もありません。1回の申し込みにつき受験は1回のみです。
つまり、申し込んだ時点で30日のカウントが始まります。762問を一通り回してから申し込むのか、申し込んでから30日で仕上げるのかを、先に決めておくことになります。受験資格はないので、いつ申し込むかは学習の進み具合だけで決められます。
30日で組むなら、本番の配分どおりに時間を割るのが素直です。学習分野1の429問に前半の3週間を充て、⑤⑥⑦⑧の333問を残りに回す。分野1は本番で15問分あり、かつ⑤や⑥の計算の土台にもなっているので、ここを薄くすると他の分野の伸びも止まります。
教材の側では、日経BPから公式問題集(2021年9月6日発行、階級ごとに本試験2回分相当の問題を掲載)と、中級の公式テキスト(2024年6月17日発行)が出ています。収録問題で分野ごとに詰める作業と、本試験の形式で30問を通す作業は目的が違うので、分けて使うと配分の確認までできます。
合否は受験終了後に画面へ表示され、マイページでも確認できます。成績はスコアレポートとして出力でき、合格基準に達していればオープンバッジの案内が試験日から3週間程度でメールで届きます。資格に有効期限はなく、更新制度も設けられていません。