1級電気工事施工管理技術検定の第一次検定は、一般財団法人建設業振興基金が実施する国家試験です。1級は年1回で、令和8年度は令和8年7月12日に実施され、受検者27,387名・合格者9,947名という実施結果が公表されています(合格通知日は令和8年8月25日)。受検手数料は第一次検定が15,800円です。
この検定の準備で最初に決めることは、覚える範囲ではなく「解く問題」です。第一次検定は89問出題され、そのうち60問だけを解答します。各問題1点の60点満点で、残りの29問は手を付けないまま提出することになります。
さらに全体の得点とは別に、施工管理法(応用能力)だけに独自の合格基準が置かれています。本記事では、89問から60問を選ぶ構造と、応用能力の別基準という二つを軸に、令和8年度の公式資料から準備の順序を整理します。
89問のうち解くのは60問、残り29問は捨てる
令和8年度の問題冊子の巻末には「89問出題し,そのうち60問解答を要する試験であり,各問題1点,60点満点」と明記されています。問題番号の帯ごとに必須と選択が入り混じっており、帯によって解く問題数が違います。午前の解答数が31問、午後の解答数が29問で、合わせて60問です。
- 午前:〔No.1〕〜〔No.6〕は必須6問/〔No.7〕〜〔No.12〕の6問から4問/〔No.13〕〜〔No.44〕の32問から14問/〔No.45〕〜〔No.52〕の8問から5問/〔No.53〕〔No.54〕は必須2問。合計31問
- 午後:〔No.55〕〜〔No.60〕の応用能力6問は必須/〔No.61〕〜〔No.67〕は必須7問/〔No.68〕〜〔No.76〕の9問から6問/〔No.77〕〜〔No.89〕の13問から10問。合計29問
- 必須は合わせて21問、選択して解くのが39問、解かずに残すのが29問
帯のなかでいちばん大きいのが午前の〔No.13〕〜〔No.44〕で、32問のうち14問しか解きません。18問は読まなくても成立する計算になります。裏を返せば、この帯のなかに確実に取れるテーマを14個作れていれば足りる、ということです。
逆に〔No.1〕〜〔No.6〕、〔No.53〕〔No.54〕、午後の〔No.55〕〜〔No.67〕には逃げ場がありません。合計21問が必須で、ここだけは範囲を絞るという判断が使えない部分です。準備の優先順位を付けるなら、まずこの21問側から動かすことになります。
選択問題は解答数が指定を超えると減点される
問題冊子には、選択問題の解答数が指定数を超えた場合は減点となる、という注意が置かれています。つまり「迷ったので多めにマークしておく」という保険が効きません。選択の帯ごとに、自分が何問マークしたかを数える必要があります。
解答数が指定されている帯は午前に3つ、午後に2つあり、それぞれ4問・14問・5問・6問・10問と数字がばらばらです。5つの数字を当日に思い出す前提にせず、帯の境目でいったん数えるという手順を、問題を解く練習の段階から組み込んでおくほうが安全です。
選ばなかった問題の解答欄は空欄のまま残します。マークシート方式なので、消し方の甘さや書き損じがそのまま解答数に影響しかねません。
合格基準は「全体60%」と「応用能力50%」の二重構造
国土交通省が定める令和8年度技術検定の合格基準では、電気工事施工管理の1級について「第一次検定(全体)得点が60%以上、(施工管理法(応用能力))得点が50%以上」とされています。実際に適用された令和8年度第一次検定の合格基準は「60.0点(100点換算)、施工管理法(応用能力)6問中3問以上」で、令和7年度も同じでした。
重要なのは、この二つが「かつ」で結ばれている点です。全体で60%を超えていても、応用能力6問のうち正解が2問以下なら不合格になります。受検の手引には、この場合の成績通知が「◯◯問 正解(施工管理法(応用能力)の得点が合格基準未満のため不合格)」と通知されると書かれており、専用の文言が用意されているほど制度上はっきり想定されたケースだと分かります。
応用能力の基準は種目によって違います。令和8年度の合格基準では、土木と建築が60%、電気工事と管工事が50%、電気通信工事が40%、造園が30%です。電気工事は6問中3問という水準で、種目のなかでは中ほどに置かれています。
五肢択一なのは応用能力の6問だけ
第一次検定は全問マークシート方式で、解答形式は原則として四肢択一です。ただし施工管理法のうち応用能力を問う問題だけが五肢択一になります。令和8年度の問題冊子でも、午前の部には「問題は,四肢択一式です」、午後の部には「問題は,四肢択一式 又は 五肢択一式です」と書き分けられています。
選択肢が1つ増えるだけですが、絞り切れなかったときに当たる確率は4分の1から5分の1に下がります。しかもこの6問は全問必須で、独自の合格基準を持ち、午後の冒頭〔No.55〕〜〔No.60〕に固まって出題されます。午後の試験が始まってすぐ、合否を分ける帯を通過することになります。
応用能力の検定基準は「監理技術者補佐として、電気工事の施工の管理を適確に行うために必要な応用能力」と定められています。同じ施工管理法でも、知識を問う四肢択一の設問とは求められる立場の書き方が違います(第二次検定の能力は「監理技術者として」と書かれています)。
この応用能力という区分と6問中3問という基準は、令和3年4月1日施行の制度改正で従来の学科試験・実地試験が第一次検定・第二次検定に再編されたときに導入されたものです。新制度の初年度である令和3年度の第一次検定から適用されており、改正前の学科試験について書かれた古い資料の合格基準とは別物です。
検定科目は3つだが、科目別の出題数は示されていない
施工技術検定規則に定める第一次検定の検定科目は、電気工学等・施工管理法・法規の3つです。電気工学等には、電気工学・電気通信工学・土木工学・機械工学・建築学の一般的な知識に加え、発電設備・変電設備・送配電設備・構内電気設備等と設計図書の知識が含まれます。施工管理法は知識(四肢択一)と能力(五肢択一)に分かれ、法規は建設工事の施工の管理に必要な法令の知識です。
ところが公式資料が示しているのは問題番号の帯ごとの必須・選択数までで、「電気工学等が何問、法規が何問」という検定科目単位の対応表は示されていません。問題番号と科目が明示的に結び付いているのは、応用能力が〔No.55〕〜〔No.60〕の6問だという1点だけです。
したがって「法規で何点取るから電気工学等は何点でよい」という科目別の配分計画は、公式の数字の上には立てられません。立てられるのは、全体で60%という目標と、応用能力6問中3問というもう一つの目標だけです。
午前2時間30分・午後2時間、片方だけの受検はできない
令和8年度の時間割は、午前が入室9時45分まで・問題配付説明10時00分〜10時15分・試験10時15分〜12時45分、昼休みが12時45分〜13時45分、午後が入室13時45分まで・問題配付説明14時00分〜14時15分・試験14時15分〜16時15分です。試験時間だけで合計4時間30分、昼休みを挟んで1日がかりになります。
受検の手引には「午前の試験のみ、あるいは午後の試験のみを受検することはできません」と明記されています。午前で手応えがなくても午後は受けることになり、その午後の冒頭に応用能力6問が置かれています。午前の出来を引きずらずに午後へ入れるかどうかが、そのまま独自基準の6問に効いてきます。
時間そのものは、午前31問を150分、午後29問を120分という配分です。1問あたりに直すと午前は約4分50秒、午後は約4分8秒になります。読んで選ぶだけなら余裕のある長さですが、この時間には「どの問題を解くか選ぶ時間」と「解答数を数え直す時間」が含まれます。
出題に使う法令は令和8年1月1日に有効なもの
第一次検定・第二次検定とも、出題に用いる法令等は「令和8年1月1日に有効なもの」とされています(令和8年度の場合)。試験日は7月12日ですが、基準日より後の改正は出題対象になりません。
この一文は、手元の教材をいつまで使えるかを判断する材料になります。基準日より前の改正が反映されていない古い教材は、法規の設問と食い違う可能性があります。逆に、基準日より後に出た最新改正を追いかける作業は、その年度の第一次検定のためには必要ありません。
なお検定問題の文中に使われる漢字にはふりがなが付記されます。また基金は、検定問題と正答肢番号を試験日の翌営業日午前9時から1年間、WEBサイトで公表しています。直近年度の問題は、この公表分でそのまま確認できます。
第一次検定に落ちると第二次検定は受けられない
受検の手引には「第一次検定の合格基準を満たさなかった場合、第二次検定は受検できません」と明記されています。令和8年度は第一次検定が7月12日、第二次検定が10月18日で、第一次で基準に届かなければ、その年度の10月は受けられません。
第一次・第二次を同時に申請した場合、当初の支払いは第一次検定の受検手数料に充てられ、第二次検定の15,800円は第一次検定の合格後に改めて支払う仕組みです。支払期間は第一次検定の合格発表日から2週間で、令和8年度の指定期日は9月8日でした。
第一次検定に合格すると、1級電気工事施工管理技士補になります。令和3年度以降の第一次検定合格者は、国土交通省へ交付申請することで、国土交通大臣から『1級技術検定(第一次検定)合格証明書』の交付を受けられます。
この技士補という位置づけには実務上の意味があります。主任技術者の資格を有する技士補は監理技術者補佐として現場に配置でき、専任の監理技術者補佐を置いた場合、監理技術者は二つまでの工事現場を兼務できます(特例監理技術者)。第一次検定の合格そのものが、現場配置の制度に組み込まれているということです。
受検資格の側も変わりました。令和6年度から、1級の第一次検定は受検年度末時点で19歳以上であれば学歴や実務経験を問わず受検できます(令和8年度は生年月日が平成20年4月1日以前の方)。実務経験は第二次検定側の要件に移りました。なお第一次検定のみを申請する場合は書面申請ができず、基金のWEBサイトからのインターネット申請に限られます。
収録619問をどの分野から回すか
ケンテイラボには、1級電気工事施工管理の第一次検定向けの問題を619問収録しています。次の表は、その619問を分野別に分けた内訳です。本試験の配点や出題数ではなくケンテイラボ側の整理ですが、どの分野にどれだけ手を動かせるかの目安になります。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボでは1級電気工事施工管理技士(第一次検定)の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している619問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「⑦ 施工管理」の84問(全体の13.6%)、 最も少ないのは「② 電気工学Ⅱ(電力系統・電気応用)+発電設備」の71問(同11.5%)です。上位3分野だけで全体の40.1%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
収録問題では施工管理が84問、法規が84問で最も多く、電車線・その他の設備+関連分野が80問と続きます。電気工学Ⅰ(電気理論・電気機器)、変電・送配電設備/構内電気設備 共通事項、受変電・自家発電・動力・電灯設備、防災・通信・監視・避雷・配線・省エネ・耐震がそれぞれ75問、電気工学Ⅱ(電力系統・電気応用)+発電設備が71問です。
89問から60問を選ぶ試験だと考えると、この8分野のうちどれを「解く側」に置くかを決めることが準備の中身になります。ただし公式が検定科目ごとの出題数を示していない以上、分野と問題番号の帯を1対1で対応させることはできません。確実に対応しているのは、応用能力が〔No.55〕〜〔No.60〕の6問だという1点だけです。
そこで現実的な順序は、まず必須21問を落とさない状態を作り、そのうえで選択の帯で確実に取れるテーマを増やしていく、という形になります。公表されている検定問題と正答肢を使えば、自分がどの帯で点を作れているかを問題番号のまま確認できます。
参考として、第一次検定の合格率は令和7年度が41.5%(受検者24,821名・合格者10,290名)、令和6年度が36.7%(受検者23,927名・合格者8,784名)、令和5年度が40.6%(受検者16,265名・合格者6,606名)と公表されています。令和8年度は受検者27,387名・合格者9,947名という実施結果が出ていますが、合格率を明示した公表は2026年9月12日時点では確認できていません。
出題数も合格基準も、公式資料に「変更する可能性がある」と付記されています。ここに挙げた数字は令和8年度のものなので、受検する年度の受検の手引と合格基準の公表を必ず確認してください。