1級電気工事施工管理技術検定の第一次検定は、一般財団法人建設業振興基金が年1回実施しています。合格率は令和5年度40.6%、令和6年度36.7%、令和7年度41.5%と、この3年は4割前後で動いてきました。
一方、第一次検定・第二次検定という現行の形になった初年度、令和3年度の合格率は53.3%でした。数年で1割以上の落差が生じていることになります。
本記事では、建設業振興基金と国土交通省が公表している数値だけを使い、性質の違う第一次検定と第二次検定を混ぜずに分けて確かめます。
令和3年度53.3%から令和7年度41.5%までの実績
公表されている第一次検定の受検者数・合格者数・合格率は次のとおりです(カッコ内は実施日)。
- 令和3年度(令和3年6月13日)受検者15,001名/合格者7,993名/合格率53.3%
- 令和5年度(令和5年6月11日)受検者16,265名/合格者6,606名/合格率40.6%
- 令和6年度(令和6年7月14日)受検者23,927名/合格者8,784名/合格率36.7%
- 令和7年度(令和7年7月13日)受検者24,821名/合格者10,290名/合格率41.5%
令和4年度の数値は、建設業振興基金のサイトが直近の年度ぶんしか実施結果を掲載していないため確認できませんでした。この並びは連続した4年ではなく、令和3年度と令和5年度のあいだが1年空いています。
それでも動きの向きははっきりしています。令和3年度の53.3%に対して令和6年度は36.7%で16.6ポイント低く、直近でいちばん高い令和7年度の41.5%と比べても11.8ポイント低い水準です。令和5年度から令和6年度にかけては40.6%から36.7%へ3.9ポイント下がり、令和7年度にかけて4.8ポイント戻しています。
受検者数は同じ期間に15,001名から24,821名まで増えています。令和5年度から令和6年度にかけては受検者が7,662名増え、その年度の合格率は3.9ポイント下がりました。
令和8年度は受検者27,387名・合格者9,947名までが公表されている
令和8年度の第一次検定は令和8年7月12日に実施され、合格通知日は令和8年8月25日でした。建設業振興基金が公表している実施結果には、受検者数27,387名、合格者数9,947名と記載されています。
ただしこの実施結果には合格率の欄がありません。試験地別の合格率まで載せた年度の結果表は、第二次検定(令和8年10月18日実施予定)が終わったあとに掲出される形になっているためです。2026年9月時点で、令和8年度の第一次検定の合格率を示した公式資料は確認できていません。
公表されている2つの実数だけを前年度と並べてみます。受検者数は令和7年度の24,821名から27,387名へ2,566名増えました。これに対して合格者数は10,290名から9,947名へ343名減っています。受検者数で見れば、令和5年度の16,265名から3年で11,122名増えたことになります。
合格率が公表されていない以上、ここから割合を出して断定することは避けます。それでも、受検者数が増える一方で合格者数が前年度を下回ったことは、公表値そのものから読み取れます。
受検率は3年連続で81%台、申し込んだ人の約2割が来ない
建設業振興基金の結果表は、受検者数のほかに受検予定者数(申込者数)と受検率を載せています。第一次検定の3年ぶんは次のとおりです。
- 令和5年度 受検予定者19,977名/受検者16,265名/受検率81.4%
- 令和6年度 受検予定者29,286名/受検者23,927名/受検率81.7%
- 令和7年度 受検予定者30,494名/受検者24,821名/受検率81.4%
実数にすると、令和5年度は3,712名、令和6年度は5,359名、令和7年度は5,673名が、申し込んだうえで受検していません。受検率は3年とも81%台で、ほとんど動いていません。
この2割弱をどう扱うかは、合格率の解釈に直結します。合格率は受検者数を分母にした割合なので、当日来なかった人は最初から計算に入っていません。申込者を分母に置き直せば、示されている水準よりさらに低い割合になります。
第一次検定の受検手数料は15,800円で、消費税は非課税です。申し込んで手数料まで納めた人のうち5,000名を超える規模が当日会場に現れない状態が、令和6年度と令和7年度に続いています。
全体60%を満たしても、応用能力6問中3問に届かなければ不合格
第一次検定の合格基準は1つではありません。国土交通省が定める令和8年度の合格基準では、1級電気工事施工管理について「第一次検定(全体)得点が60%以上、(施工管理法(応用能力))得点が50%以上」とされています。全体と応用能力の両方を同時に満たす必要がある二重基準です。
実際に適用された確定値も公表されています。令和8年度と令和7年度の第一次検定はいずれも「60.0点(100点換算)、施工管理法(応用能力)6問中3問以上」、令和6年度と令和5年度は「60問中36問以上正解(応用能力:6問中3問以上正解)」でした。表記の仕方は変わっていますが、求められる水準は同じです。
この応用能力の基準値は、施工管理技術検定の種目ごとに異なります。令和8年度の合格基準に並んでいる数字は次のとおりです。
- 土木 60%/建築 60%
- 電気工事 50%/管工事 50%
- 電気通信工事 40%
- 造園 30%
電気工事は中間の50%です。応用能力は6問出題なので、3問以上の正解が必要という形になります。土木や建築のように60%を求められるわけではありませんが、造園の30%と比べれば許容できる取りこぼしは少なく、6問のうち4問を落とせば全体の点数にかかわらず不合格です。
不合格通知には応用能力専用の文言が用意されている
この二重基準が形式だけのものでないことは、成績通知の書き分けからわかります。受検の手引によれば、不合格者への通知は2通りに分かれています。
全体の得点が合格基準に届かなかった場合は「◯◯問 正解」とだけ通知されます。これに対して、全体は合格基準以上なのに施工管理法(応用能力)の得点が基準未満だった場合は、「◯◯問 正解(施工管理法(応用能力)の得点が合格基準未満のため不合格)」と、理由を明記した形で通知されます。
専用の文言が用意されているということは、全体では36問以上を取りながら応用能力の6問で3問に届かず落ちる結果が、制度として想定されているということです。合計点だけで仕上がりを判断すると、この落ち方は視界に入りません。
応用能力の6問は、令和8年度の問題冊子では〔No.55〕〜〔No.60〕にあたり、午後の部の冒頭にまとまって置かれています。全問解答が必要な必須問題で、避けることはできません。
89問のうち60問を選ぶ試験で、選べない6問がどこにあるか
令和8年度の第一次検定は「89問出題し,そのうち60問解答を要する試験であり,各問題1点,60点満点」と、問題冊子の配点欄に明記されています。29問ぶんは解かずに済む計算です。
ただし、どこを飛ばせるかは決まっています。午前の部は〔No.1〕〜〔No.6〕の6問が必須、〔No.7〕〜〔No.12〕は6問のうち4問を選択、〔No.13〕〜〔No.44〕は32問のうち14問を選択、〔No.45〕〜〔No.52〕は8問のうち5問を選択、〔No.53〕〔No.54〕の2問が必須で、合計31問を解答します。
午後の部は〔No.55〕〜〔No.60〕の応用能力6問が必須、〔No.61〕〜〔No.67〕の7問も必須、〔No.68〕〜〔No.76〕は9問のうち6問を選択、〔No.77〕〜〔No.89〕は13問のうち10問を選択で、合計29問です。午前の31問と合わせて60問になります。
選択の幅がいちばん広いのは午前の〔No.13〕〜〔No.44〕で、32問から14問を選びます。その一方で、独自の合格基準がかかる応用能力の6問は必須側に置かれています。解く問題を広く選べる試験でありながら、落とせない6問だけが別の基準を持っています。
解答形式も分かれています。電気工学等・施工管理法(知識)・法規は四肢択一ですが、施工管理法(能力)にあたる応用能力問題だけが五肢択一で、選択肢の数そのものが違います。また、選択問題の解答数が指定された数を超えた場合は減点されます。
同じ年度でも第一次検定と第二次検定では通り方が違う
第二次検定の数値も3年ぶん公表されています。同じ年度の第一次検定と並べます。
- 令和5年度 第一次40.6%(受検16,265名)/第二次53.0%(受検8,535名・合格4,527名)
- 令和6年度 第一次36.7%(受検23,927名)/第二次49.6%(受検8,250名・合格4,093名)
- 令和7年度 第一次41.5%(受検24,821名)/第二次69.6%(受検9,494名・合格6,607名)
どの年度も第二次検定のほうが合格率は高く、令和7年度は28.1ポイントの差がついています。令和6年度の差は12.9ポイント、令和5年度は12.4ポイントでした。同じ年度のなかで、第一次検定より第二次検定のほうが通りやすい並びになっています。
受検率にも違いがあります。第二次検定は令和5年度86.5%、令和6年度84.5%、令和7年度86.2%で、第一次検定の81%台より高い水準です。第一次検定の合格基準を満たさなかった場合、第二次検定は受検できません。第二次検定の受検者は、すでに1つ関門を通った層に絞られています。
数字の性質が違う以上、「1級電気工事施工管理技士の合格率」としてひとまとめに語ることはできません。第一次検定を見るなら4割前後、第二次検定を見るなら5割から7割弱、と分けて押さえる必要があります。
合格者の44.7%が大学、19才は0.3%にとどまる
令和8年度の実施結果には、合格者の属性も載っています。学歴は大学44.7%、高等学校37.5%で、この2つで82.2%を占めます。年齢は25〜29才が23.2%で最多でした。
目を引くのは若い層の薄さです。19才は0.3%、20才は0.7%で、合わせて1.0%です。
1級の第一次検定は、令和6年度の受検資格改正によって「試験実施年度に満19歳以上となる者」であれば受検できるようになりました。実務経験は不要です。改正前は、大学の指定学科を卒業後3年以上、高校の指定学科なら10年以上といった学歴別の実務経験年数が必要で、19才が受けること自体ができませんでした。
入口は開いていますが、合格者に占める19才・20才は合わせて1.0%です。実務経験を積んだ層が中心という構成は、まだ大きくは変わっていません。実務経験の要件は第二次検定側へ移り、第一次検定に合格した段階では1級電気工事施工管理技士補になります。
なお令和6年度から令和10年度までは経過措置期間で、第二次検定については改正前の受検資格と新しい受検資格のどちらかを選べます。受検者数が令和6年度に大きく増えたのは、この改正で第一次検定の入口が広がった時期と重なります。
合格率ではなく自分の正答数で位置を測る
ここまでの数字を、第一次検定に向き合うときの前提としてまとめます。
- 第一次検定の合格率は令和5年度40.6%、令和6年度36.7%、令和7年度41.5%で、令和3年度の53.3%より低い水準にある
- 令和8年度は受検者27,387名・合格者9,947名までが公表され、合格率は2026年9月時点で確認できない
- 受検率は3年連続で81%台、令和7年度は5,673名が申し込んだうえで受検していない
- 合格には全体60%と応用能力6問中3問の両方が必要で、片方だけでは通らない
そのうえで、89問から60問を解答して6割を確保するという目標は変わりません。全体の得点と応用能力の6問は別々に管理する必要があるので、分野ごとにどこまで取れているかを分けて把握できると扱いやすくなります。
ケンテイラボが1級電気工事施工管理技士(第一次検定)向けに収録している問題の分野内訳は次のとおりです。分野名と収録問題数、構成比が並びます。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボでは1級電気工事施工管理技士(第一次検定)の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している619問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「⑦ 施工管理」の84問(全体の13.6%)、 最も少ないのは「② 電気工学Ⅱ(電力系統・電気応用)+発電設備」の71問(同11.5%)です。上位3分野だけで全体の40.1%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
分野ごとの性格の違いも見ておきます。次の表は収録問題を集計したもので、数値を含む問題の割合と、問題文の平均文字数を分野別に示しています。数値が多い分野は基準値や計算が絡み、問題文が長い分野は条件を読み取る負荷が高くなります。
分野別の学習タイプ(収録619問の集計)
ケンテイラボに収録している1級電気工事施工管理技士(第一次検定)の問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。
この試験でもっとも数値の比率が高いのは「⑧ 法規」で79%、 もっとも低いのは「② 電気工学Ⅱ(電力系統・電気応用)+発電設備」で23%でした。 また問題文がもっとも長いのは「⑧ 法規」の平均51字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。
- ① 電気工学Ⅰ(電気理論・電気機器):75問/数値を含む問題 31%/問題文 平均47字
- ② 電気工学Ⅱ(電力系統・電気応用)+発電設備:71問/数値を含む問題 23%/問題文 平均44字
- ③ 変電・送配電設備/構内電気設備 共通事項:75問/数値を含む問題 45%/問題文 平均43字
- ④ 受変電・自家発電・動力・電灯設備:75問/数値を含む問題 60%/問題文 平均35字
- ⑤ 防災・通信・監視・避雷・配線・省エネ・耐震:75問/数値を含む問題 65%/問題文 平均44字
- ⑥ 電車線・その他の設備+関連分野:80問/数値を含む問題 30%/問題文 平均50字
- ⑦ 施工管理:84問/数値を含む問題 51%/問題文 平均47字
- ⑧ 法規:84問/数値を含む問題 79%/問題文 平均51字
数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。
ケンテイラボには1級電気工事施工管理技士(第一次検定)の対策問題を619問収録しています。分野別に解けるので、電気工学の側で落としているのか、施工管理や法規で落としているのかを、合格率ではなく自分の正答数として確かめる用途に使えます。