高圧ガス製造保安責任者試験のうち、第一種冷凍機械責任者と第二種冷凍機械責任者は、どちらも「法令」「保安管理技術」「学識」の3科目で実施されます。国家試験は年1回で、令和8年度は令和8年11月8日(日)に第一種・第二種とも同日実施です。受験資格の制限はなく、高圧ガス保安協会(KHK)の案内も「年齢、学歴、性別、経験等に関係なく、誰でも受験できます。」としています。
3科目という枠は共通でも、出題数と出題形式は級で違います。第一種の学識は記述式5問、第二種の学識は択一式10問です。この記事では、級ごとに何がどれだけ違うのか、そして講習による科目免除ルートを使うかどうかを軸に、準備の組み立て方を見ていきます。
合格基準は「各科目とも満点の60パーセント程度」で、科目ごとに置かれている
令和8年度の受験案内書は、合格基準を「各科目とも満点の60パーセント程度です。」とだけ書いています。試験全体の合計点ではなく、科目ごとの基準です。得意な科目で大きく稼いで苦手な科目の不足を埋める、という戦い方を前提にできません。
第一種なら法令20問・保安管理技術15問・学識の記述5問のそれぞれで6割程度、第二種なら法令20問・保安管理技術10問・学識10問のそれぞれで6割程度、という形になります。第二種の保安管理技術と学識は10問ずつしかないため、1問あたりの重みは法令20問より大きくなります。1問落とすことの意味が科目によって違う、という点は早い段階で意識しておきたいところです。
なお「1科目でも基準を下回ると不合格になる」という言い回しそのものは、今回確認したKHKの公式ページと受験案内書には見当たりませんでした。公表されているのは「各科目とも」という表現までです。また、ある年度に基準を満たした科目だけを翌年度に持ち越す仕組みについても、公式資料では確認できませんでした。公式に示されている免除は、次に触れる講習修了証によるものと、上位資格・他区分の免状や合格通知書によるものの2系統です。
基準が「60パーセント程度」と書かれている点も、そのまま受け取っておくほうが安全です。何点以上で合格という固定値としては公表されていません。
第一種の学識だけが記述式。第二種は3科目とも択一式
出題形式は級で分かれます。第一種冷凍機械責任者は、法令が択一式20問、保安管理技術が択一式15問、学識が記述式5問。第二種冷凍機械責任者は、法令が択一式20問、保安管理技術が択一式10問、学識が択一式10問で、記述式の科目はありません。
- 第一種:法令=択一式20問/保安管理技術=択一式15問/学識=記述式5問
- 第二種:法令=択一式20問/保安管理技術=択一式10問/学識=択一式10問
- 法令の択一式20問だけは級共通。ここは第一種と第二種で同じ形の科目になる
試験内容の書き分けも案内書にあります。保安管理技術は、第一種が「冷凍のための高圧ガスの製造に必要な高度の保安管理の技術」、第二種が「通常の保安管理の技術」。学識は、第一種が「通常の応用化学及び機械工学」、第二種が「基礎的な応用化学及び機械工学」とされています。
つまり第一種と第二種の差は、扱う範囲の広さよりも、解答の出し方に表れます。第二種は選択肢の中から誤りを見つけられれば足りますが、第一種の学識は、計算の過程や理由を自分で書いて示す必要があります。仕上げの練習が、選択肢の吟味から答案の組み立てへ変わるということです。
第一種を目指す場合、問題を解いたあとに「なぜその選択肢が正しいのか」を文章で書き起こす作業を、どこかの時点から挟むことになります。択一で正解できる状態と、記述で書ける状態は同じではありません。
科目ごとの時間割は級共通。学識120分の中身だけが違う
試験時間は試験の種類ごとではなく科目ごとに定められていて、第一種・第二種のどちらも同じ時間帯で実施されます。法令が9時30分から10時30分の60分、保安管理技術が11時10分から12時40分の90分、学識が13時30分から15時30分の120分です。
同じ120分でも、第一種は記述式5問、第二種は択一式10問を解きます。第一種は1問あたり24分を使える計算で、式や単位まで書ききることを見込んだ配分です。第二種は1問12分で、択一式としては長めの時間が取られています。
保安管理技術も、第一種は90分で15問、第二種は90分で10問です。どちらの級も、時間そのものに追われる設計にはなっていません。解答のペース配分を練習するより、解ける問題を1問でも増やすほうに時間を回して構わない形です。
科目免除を受けている場合は、受験する科目の時間帯だけ会場に行きます。法令1科目だけになれば、拘束されるのは午前の60分です。
講習21時間と検定試験を通ると、11月に受けるのは法令だけになる
KHKが実施する高圧ガス製造保安責任者講習(冷凍)を受講し、講習後の検定試験に合格すると講習修了証が交付されます。これに基づいて国家試験を申請すると、第一種・第二種とも「保安管理技術」と「学識」が免除され、受けるのは「法令」1科目だけになります。この免除に有効期限はなく、失効しません(修了証の原本は保管が必要です)。
講習は第一種・第二種とも21時間で、法令7時間・保安管理技術7時間・学識7時間という構成です。検定試験として実施されるのは保安管理技術と学識の2科目で、法令は検定では出ません。ただし法令を含むすべての講習科目を受講しないと検定試験を受検できない決まりです。
受講受検料は第一種が28,100円、第二種が24,200円(いずれも課税、令和7年4月1日から改定)で、テキスト代は含まれません。開催は第一種が年1回(4〜5月頃)、第二種が年2回(2月頃と6月頃)とされています。具体的な日程はKHKの年間スケジュール側に載っているため、申し込む前に公式で日付を確認してください。
免除の効果は合格率に表れています。令和7年度の第一種は、全科目受験が受験者646人・合格者324人で50.2パーセント、保安管理技術及び学識の免除者が541人・520人で96.1パーセントでした。第二種は、全科目受験が1,694人・647人で38.2パーセント、免除者が680人・598人で87.9パーセントです。
前年度はさらに差が開いています。令和6年度の第一種は全科目受験24.5パーセント・免除者81.7パーセント、第二種は全科目受験28.4パーセント・免除者76.4パーセント。全科目受験の合格率は年度による振れが大きく、第一種でいえば24.5パーセントから50.2パーセントまで動いています。講習ルートを使うかどうかは、費用と21時間を、この振れ幅と引き換えにするかという判断になります。
一方で、検定試験そのものの合格基準や検定の合格率は、今回確認した範囲の公式ページでは分かりませんでした。講習を受ければ自動的に免除される仕組みではなく、検定に合格して初めて修了証が出る点だけは押さえておく必要があります。
法令科目は「令和8年4月1日現在施行されている法令」で出る
受験案内書は、法令の出題について「令和8年4月1日現在施行されている法令に基づき出題」と基準日を明示しています。試験日は11月8日ですが、そこで問われるのは4月1日時点で施行されている条文です。第一種・第二種のどちらも同じ扱いです。
基準日が決まっているということは、手持ちの教材のどこを疑えばよいかがはっきりするということでもあります。古い版を使う場合でも、改正が入った箇所だけを基準日の条文で確認すれば足ります。逆に、基準日より後に施行される改正を先回りして覚える必要はありません。
法令で扱われるのは高圧ガス保安法とその政省令です。冷凍保安責任者の選任について定めているのは冷凍保安規則第36条で、1日の冷凍能力が300トン以上なら第一種、100トン以上300トン未満なら第一種または第二種、100トン未満なら第三種まで、という区分が表になっています。条文は免状の種類だけでなく、それぞれに必要な製造の経験年数まで定めています。
収録624問の8分野を、法令・保安管理技術・学識に割り当てる
ケンテイラボに収録している第一種・第二種向けの問題は624問で、8つの分野に分けてあります。次の表が、分野ごとの収録数と構成比です。本試験の配点そのものではなく、収録問題の内訳としてご覧ください。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボでは第一種・第二種冷凍機械責任者の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している624問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「① 冷凍サイクルと圧縮機」の92問(全体の14.7%)、 最も少ないのは「⑤ 冷媒配管と制御機器・付属機器」の73問(同11.7%)です。上位3分野だけで全体の40.2%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
分野と試験科目の対応はおおまかに次のとおりです。①から⑥までが保安管理技術と学識の範囲、⑦と⑧が法令の範囲にあたります。法令側は⑦が81問・⑧が74問で、合わせて155問あります。
- ①冷凍サイクルと圧縮機(92問)・②伝熱理論と熱交換器(76問):学識の計算と理論の土台になる部分
- ③制御機器・冷媒・材料と圧力容器(74問)・⑥安全装置・圧力試験・据付けと試運転(76問):学識と保安管理技術にまたがる
- ④圧縮機・熱交換器の保守管理(78問)・⑤冷媒配管と制御機器・付属機器(73問):保安管理技術の現場寄りの部分
- ⑦高圧ガス保安法の目的・定義と事業(81問)・⑧保安・容器・指定設備(74問):法令
講習ルートで法令だけを受ける方は、⑦と⑧の155問に範囲を絞れます。全科目受験なら8分野を通しで回すことになります。同じ624問でも、どちらの受け方を選ぶかで使う範囲が変わるということです。
第一種を受ける場合、①と②は記述式の学識に直結します。答えの記号を選ぶだけでなく、式と単位を紙に書き出しながら解くと、択一で当てられる状態と記述で書ける状態の差がどこにあるかが見えてきます。第二種であれば、同じ範囲を択一式のまま回して構いません。
年1回・11月8日の一発勝負。申込は8月、発表は級で1か月ずれる
国家試験は年1回です。令和8年度の試験日は令和8年11月8日(日)で、第一種・第二種とも同じ日に実施されます。逃すと次は1年後になるため、途中で仕上がりを確かめる機会は自分で作るしかありません。
受験願書の受付は、電子申請が令和8年8月17日(月)午前10時から9月2日(水)午後5時まで、書面申請が8月17日(月)から8月31日(月)まで。書面のほうが締切が2日早く、KHK自身も受付期間が短いと注意を促しています。受験手数料は第一種が電子申請17,300円・書面申請17,800円、第二種が電子申請11,100円・書面申請11,600円で、どちらの級も電子申請のほうが500円安く済みます。
試験後の公表は、試験問題と択一式の正解答番号が11月9日(月)午後3時、記述式試験の解答例が12月中旬です。第一種を受けた方が学識の出来を照らし合わせられるのは、択一の正解が出てから1か月ほどあとになります。自己採点のタイミングが級で違う、ということでもあります。
合格者番号の公表日も級で分かれます。第二種は令和8年12月18日(金)、第一種は令和9年1月26日(火)。これは第一種が経済産業大臣の試験(大臣試験)、第二種が都道府県知事の試験(知事試験)で、試験実施権者が違うためです。合格率も大臣試験と知事試験で別々の表として公表されます。
300トンの線をどこに置くか。第一種と第二種の選び分け
受験資格はどちらの級にもないので、第二種を経ずに第一種から受けることもできます。選ぶ基準になるのは、免状で携われる製造施設の範囲です。
第一種冷凍機械責任者免状は、1日の冷凍能力に制限なく、すべての冷凍の製造施設の保安に携われます(冷媒ガスの種類の制限もありません)。第二種冷凍機械責任者免状は、1日の冷凍能力が300トン未満の製造施設に限られます。大型の冷凍空調設備や冷凍倉庫まで任される立場を見込むなら第一種、中型までなら第二種、という分かれ方です。なお、どちらの免状でも選任できるのは冷凍保安責任者のみで、保安技術管理者や販売主任者などには選任できません。
ただし免状を取っただけでは冷凍保安責任者になれません。冷凍保安規則第36条は、免状の種類に加えて高圧ガスの製造に関する経験年数を求めています。300トン以上の施設なら100トン以上の製造施設を使用する製造に関する1年以上の経験、100トン以上300トン未満の枠なら20トン以上の施設で1年以上の経験、という形です。
受験と選任が分かれている以上、実務経験がすでに積み上がっている方と、これから現場に入る方とで、急ぐ理由は変わります。経験年数が足りない段階でも試験は受けられるので、先に免状を取っておいて経験の要件を後から満たす、という順序も成り立ちます。どちらの級を受けるかは、いま扱える設備ではなく、数年先に任されそうな設備の規模から逆算するほうが決めやすいはずです。