第一種冷凍機械責任者と第二種冷凍機械責任者の合格率を調べると、同じ年度・同じ級なのに数字が2つ出てきて戸惑うことがあります。高圧ガス保安協会(KHK)が公表している一覧表が、受験者を「全科目受験」と「科目免除」に分けて集計しているためです。
令和7年度の第一種冷凍機械責任者は、全科目受験が受験者646人・合格者324人で合格率50.2%、保安管理技術免除及び学識免除の区分が受験者541人・合格者520人で合格率96.1%でした。差は45.9ポイントあります。どちらもその年度の第一種の合格率であり、片方だけを取り出すと実態から離れます。
この記事では、第一種と第二種それぞれについて、年度と受験区分をそろえた形で数字を並べ直します。級・年度・受験区分のどれかを混ぜると結論が反転するので、以下では必ず3点をセットで示します。
「第一種50.2%・第二種38.2%」はどちらも全科目受験だけの数字
まず、令和7年度の全科目受験どうしを比べます。第一種は経済産業大臣が実施する大臣試験、第二種は都道府県知事が実施する知事試験なので、合格率は別々のPDFで公表されています。
- 令和7年度 第一種 全科目受験:受験者646人/合格者324人/50.2%
- 令和7年度 第二種 全科目受験:受験者1,694人/合格者647人/38.2%
上位級である第一種のほうが12.0ポイント高い、という並びです。直感に反しますが、これは令和7年度という1年ぶんの断面にすぎません。同じ全科目受験どうしでも、年度を変えると順序が変わります。そのことは後の節で確かめます。
受験者数の規模も違います。第二種の全科目受験1,694人に対し、第一種は646人で4割弱の規模です。母数が小さいぶん、第一種の数字は年度ごとの動きが大きく出やすい性質を持っています。
講習修了証を持つ人の合格率は96.1%と87.9%
もう一方の区分が科目免除です。KHKが実施する高圧ガス製造保安責任者講習(冷凍)を受講し、講習後の検定試験に合格すると講習修了証が交付されます。この修了証があると、国家試験では「保安管理技術」と「学識」が免除され、受験するのは「法令」1科目だけになります。第一種・第二種で免除される科目の範囲は同じです。
- 令和7年度 第一種 保安管理技術免除及び学識免除:受験者541人/合格者520人/96.1%(同年度の全科目受験50.2%との差45.9ポイント)
- 令和7年度 第二種 保安管理技術免除及び学識免除:受験者680人/合格者598人/87.9%(同年度の全科目受験38.2%との差49.7ポイント)
- 令和6年度 第一種 保安管理技術及び学識免除:受験者553人/合格者452人/81.7%(同年度の全科目受験24.5%との差57.2ポイント)
- 令和6年度 第二種 科目免除:受験者593人/合格者453人/76.4%(同年度の全科目受験28.4%との差48.0ポイント)
4つとも、同じ級・同じ年度のなかで45ポイント以上開いています。倍以上の開きが2年連続で、しかも両方の級で出ているということです。合格率の差としては相当に大きい部類に入ります。
ただし免除は無料で手に入るものではありません。講習は第一種・第二種とも21時間(法令7時間・保安管理技術7時間・学識7時間)で、受講受検料は第一種28,100円、第二種24,200円です。講習後の検定試験は保安管理技術と学識の2科目で実施され、法令は講習では扱うものの検定試験としては実施されません。一方で、交付された講習修了証による科目免除に有効期限はなく失効しません。
第一種の全科目受験は1年で24.5%から50.2%へ動いた
次に、第一種の全科目受験だけを年度で並べます。区分を固定して年度だけ動かすと、この試験の振れ幅が見えます。
- 令和4年度 第一種 全科目受験:受験者733人/合格者268人/36.6%
- 令和6年度 第一種 全科目受験:受験者599人/合格者147人/24.5%
- 令和7年度 第一種 全科目受験:受験者646人/合格者324人/50.2%
令和6年度から令和7年度への1年で25.7ポイント上がっています。受験者数は599人から646人へ47人増えただけなのに、合格者数は147人から324人へ2倍以上になりました。受験者層が1年で入れ替わったとは考えにくいので、年度ごとの出題内容の違いが素直に表れていると見るのが自然です。
同じ第一種でも免除区分の側は令和6年度81.7%から令和7年度96.1%で、動きは14.4ポイントでした。振れが大きいのは全科目受験の側だけです。1科目に絞った受験と3科目を通す受験とで、年度差の受け止め方が違うということになります。
なお令和5年度の一覧表は、KHKが合格率一覧表の掲載期間を翌年度試験実施日の1週間前までと定めているため、現在は同サイトから参照できませんでした。公表されていないのではなく掲載が終了しているとみられます。ここで令和4年度を挟んでいるのはそのためです。
第二種の全科目受験は36.7%・28.4%・38.2%を行き来している
第二種も同じように、全科目受験だけを年度で並べます。
- 令和3年度 第二種 全科目受験:受験者2,351人/合格者863人/36.7%
- 令和6年度 第二種 全科目受験:受験者1,692人/合格者481人/28.4%
- 令和7年度 第二種 全科目受験:受験者1,694人/合格者647人/38.2%
令和6年度と令和7年度は受験者数が1,692人と1,694人でほぼ同じです。それでも合格者数は481人から647人へ増え、合格率は9.8ポイント上がりました。ここでも、受験者の側の変化ではなく年度ごとの試験の側の差として読むほうが筋が通ります。
第二種の免除区分は令和3年度85.2%、令和6年度76.4%、令和7年度87.9%です。11.5ポイントの幅に収まっており、全科目受験側の9.8ポイントと比べても水準そのものが常に70%台後半から80%台にあります。第一種と同じく、区分をそろえて初めて年度差が読める構造です。
合計の合格率では第一種71.1%が第二種52.4%を上回る
KHKの一覧表には、全科目受験と科目免除を足し合わせた「計」の行もあります。検索で出てくる合格率がこの計の値であることも少なくありません。
- 令和7年度 第一種 計:受験者1,187人/合格者844人/71.1%(うち免除区分541人=45.6%)
- 令和7年度 第二種 計:受験者2,374人/合格者1,245人/52.4%(うち免除区分680人=28.6%)
- 令和6年度 第一種 計:受験者1,152人/合格者599人/52.0%(うち免除区分553人=48.0%)
- 令和6年度 第二種 計:受験者2,285人/合格者934人/40.9%(うち免除区分593人=26.0%)
令和7年度の計では、第一種71.1%が第二種52.4%を18.7ポイント上回ります。令和6年度の計でも第一種52.0%が第二種40.9%を上回っており、2年とも上位級のほうが高い数字です。
理由は受験者の構成にあります。第一種は受験者の45.6%が免除区分なのに対し、第二種は28.6%です。合格率が90%前後の集団の比率が高いほうが、計の値は自然と上がります。計の数字は試験の難しさよりも、誰がその年に受けに来たかを映しているといえます。
「保安管理技術免除のみ」は両級とも受験者0人だった
KHKの一覧表は免除を1列にまとめず、「保安管理技術免除及び学識免除」と「保安管理技術免除のみ」に分けています。ところが令和7年度は、第一種・第二種のいずれも「保安管理技術免除のみ」の受験者が0人でした。
現行の第一種冷凍機械講習・第二種冷凍機械講習の修了証は、保安管理技術と学識の2科目をまとめて免除します。保安管理技術だけが免除される扱いは、昭和41年9月30日以前に修了した旧制度の講習修了証など、限られた条件でしか発生しません。列としては残っていても、実際にはほぼ使われていないということです。
したがって受験の選択肢は、実質的に「3科目を全部受ける」か「講習ルートで法令1科目に絞る」かの2つです。合格率を見比べるときも、この2択の数字として読めば足ります。
合格基準は「各科目とも満点の60パーセント程度」
合格基準について、KHKの受験案内書は「各科目とも満点の60パーセント程度です。」と記しています。試験全体の総合点ではなく、科目ごとに置かれた基準です。第一種・第二種とも、受験するすべての科目でこの水準を満たすことが求められます。
科目構成は級で異なります。第一種は法令が択一式20問、保安管理技術が択一式15問、学識が記述式5問。第二種は法令が択一式20問、保安管理技術が択一式10問、学識が択一式10問です。同じ「学識」でも、第一種は記述式、第二種は択一式です。
全科目受験ならこの3科目それぞれで6割程度を確保する必要があり、講習ルートなら法令20問だけで済みます。先に見た45ポイント超の合格率差は、この対象科目数の差がそのまま出たものと読めます。
なお「1科目でも基準を下回れば不合格」という言い回しそのものは、KHKの公式ページと受験案内書を確認した範囲では見当たりませんでした。公表資料にある表現は「各科目とも」までです。また、ある年度に基準を満たした科目を翌年度へ持ち越す仕組みについても、確認できた免除の根拠は講習修了証と上位資格・他区分の免状等の2系統のみで、記載を見つけられませんでした。どちらも存在しないと断定はできないため、確定していない事項として扱います。
免除者は60分で帰り、全科目受験者は15時30分まで残る
試験時間は科目ごとに決まっていて、第一種・第二種で共通です。法令が9時30分から10時30分の60分、保安管理技術が11時10分から12時40分の90分、学識が13時30分から15時30分の120分。科目免除者は、自分が受験する科目の時間帯だけを受けます。
つまり講習ルートの人は法令の60分で終わり、全科目受験の人は合計270分を1日で通すことになります。第一種の場合、最後の120分は記述式5問です。合格率の差を、拘束時間と解答形式の差として捉え直すこともできます。
合格発表の時期も級で違います。令和8年度の場合、知事試験である第二種の合格者番号公表が令和8年12月18日、大臣試験である第一種が令和9年1月26日で、約1か月ずれます。記述式試験の解答例の公表は令和8年12月中旬です。受験資格そのものは第一種・第二種とも年齢・学歴・性別・経験を問いません。ただし免状を取得したあと冷凍保安責任者として選任されるには、冷凍保安規則第36条が定める高圧ガスの製造に関する経験が別に必要です。
全科目受験を選ぶなら、624問をどこに割り当てるか
ここまでの数字は、全科目受験を選ぶかどうかの判断材料でした。全科目受験で臨む場合、保安管理技術と学識まで自力で仕上げることになります。ケンテイラボに収録している第一種・第二種冷凍機械責任者の624問を分野別に分けると、次の内訳になります。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボでは第一種・第二種冷凍機械責任者の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している624問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「① 冷凍サイクルと圧縮機」の92問(全体の14.7%)、 最も少ないのは「⑤ 冷媒配管と制御機器・付属機器」の73問(同11.7%)です。上位3分野だけで全体の40.2%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
分野ごとの負荷の質も同じではありません。次の表は、収録問題そのものから「数値を含む問題の割合」と「問題文の平均文字数」を集計したものです。数値の多い分野は計算の練習量、文字数の多い分野は条文や手順の読み取りが、それぞれ時間を食います。
分野別の学習タイプ(収録624問の集計)
ケンテイラボに収録している第一種・第二種冷凍機械責任者の問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。
この試験でもっとも数値の比率が高いのは「⑦ 高圧ガス保安法の目的・定義と事業」で67%、 もっとも低いのは「④ 圧縮機・熱交換器の保守管理」で18%でした。 また問題文がもっとも長いのは「① 冷凍サイクルと圧縮機」の平均53字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。
- ① 冷凍サイクルと圧縮機:92問/数値を含む問題 51%/問題文 平均53字
- ② 伝熱理論と熱交換器:76問/数値を含む問題 24%/問題文 平均36字
- ③ 制御機器・冷媒・材料と圧力容器:74問/数値を含む問題 34%/問題文 平均37字
- ④ 圧縮機・熱交換器の保守管理:78問/数値を含む問題 18%/問題文 平均40字
- ⑤ 冷媒配管と制御機器・付属機器:73問/数値を含む問題 27%/問題文 平均49字
- ⑥ 安全装置・圧力試験・据付けと試運転:76問/数値を含む問題 47%/問題文 平均32字
- ⑦ 高圧ガス保安法の目的・定義と事業:81問/数値を含む問題 67%/問題文 平均50字
- ⑧ 保安・容器・指定設備:74問/数値を含む問題 34%/問題文 平均37字
数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。
最後に、合格率を扱うときの注意点を整理しておきます。
- 級・年度・受験区分の3点をそろえないと比較にならない。令和7年度の第一種は全科目受験50.2%と免除96.1%が同居している
- 全科目受験の合格率は年度の振れが大きい。第一種は令和6年度24.5%から令和7年度50.2%へ25.7ポイント動いた
- 「計」の値は免除区分の構成比に引っ張られる。令和7年度は第一種71.1%が第二種52.4%を上回る
- 合格基準は総合点ではなく「各科目とも満点の60パーセント程度」で、科目ごとに置かれている
ケンテイラボには第一種・第二種冷凍機械責任者の対策問題を624問収録しています。分野別に解けるので、公表されている合格率ではなく自分の正答率で、全科目受験に向かうか講習ルートを取るかを判断する材料にできます。