LPIC-2(LPICレベル2)は、Linux Professional Institute(LPI)が実施するLinux技術者認定の中級レベルです。201-450と202-450という2科目に合格し、かつ有効なLPIC-1を保有していることで認定されます。つまり、この試験を検討している人のほとんどはすでにLPIC-1を持っているか、取得の見通しが立っている人です。
そうした読者にとって知りたいのは「難しいかどうか」ではなく、「LPIC-1に受かった自分の位置から、あとどれだけ積み上げれば届くのか」という距離のはずです。ところがLPIC-2は合格率が公表されていないため、合格率を軸にした一般的な難易度の測り方が使えません。数字の代わりに何を手がかりにするかが、この試験の見積もりの肝になります。
そこで本記事は、LPIC-2の難易度を「LPIC-1との差分」で分解します。何が同じで、何が変わるのか。ケンテイラボが収録しているLPIC-2対策問題は全676問・8分野で、201の範囲にあたる4分野と202の範囲にあたる4分野に分かれています。この配分を材料に、距離を具体化していきます。なお出題形式・試験時間・合格基準・受験料といった要項は改定されることがあるため、受験前には必ずLPIの公式サイトで最新の情報を確認してください。
結論:難しさは覚える量ではなく、見る位置が変わることにある
先に結論を書きます。LPIC-2がLPIC-1より難しいのは、覚えるコマンドの数が増えるからではありません。難しさの正体は、問われる立ち位置が「1台のLinuxを操作する人」から「サービスを提供するサーバーを構成し、動かし続ける人」へ変わることにあります。同じLinuxを扱っていても、見ている高さが一段変わるのです。
LPIC-1は、コマンドとその挙動を知っていれば答えられる設問が中心でした。パーミッションの意味、プロセスの見方、パッケージ管理、シェルの書き方。いずれも「操作を知っているか」を問う問いです。対してLPIC-2では、DNSサーバーを立てる、Webサーバーでバーチャルホストを分ける、Sambaで共有を切る、Postfixでメールを受ける、といった構成の設問が中心になります。コマンドは手段のひとつに過ぎず、設定ファイルにどう書くかが本題になります。
この違いは、学習の手ざわりにもはっきり出ます。LPIC-1は参考書のページ数と理解量がほぼ比例しましたが、LPIC-2は「読んだのに手が動かない」という状態が起きやすい。named.confの構造を読んで理解したつもりでも、ゾーンファイルのSOAレコードを白紙から書けるかは別問題です。難易度の実感が人によって大きくぶれるのは、この読解と再現のあいだの落差をどこで埋めたかが人ごとに違うからです。
したがってLPIC-2の攻略は、暗記量を積み増す作業ではなく、「読めば分かる」を「白紙から書ける」に変換する作業になります。この変換にかかる時間が、LPIC-1からLPIC-2までの距離の実体です。
この視点に立つと、必要な準備期間の見積もり方も変わります。ページ数や章の数で計画を立てると、実際には演習に時間を取られて予定が崩れます。「参考書を何周するか」ではなく「どのサービスを自分の手で構築し終えたか」を進捗の単位にすると、残りの距離が測りやすくなります。読了率と到達度が一致しないのが、この試験の学習計画の難しさです。
合格率が公表されていないなかで、難易度をどう見積もるか
まず事実として、LPIはLPIC-2の合格率も受験者数も公表していません。したがって「合格率は◯%です」と数字で言い切っている情報は、いずれも出典が確認できない推定か、特定のスクールや講座の受講生に限った内輪の集計です。本記事でも合格率を推定して書くことはしません。根拠のない数字で「思ったより通りそうだ」と判断するのは、この試験ではとくに危険です。
では何を手がかりにするか。公表されていない合格率の代わりに使えるのは、公表されている試験の設計です。LPIC-2は各科目60問を90分で解く形式で、選択式に加えて記述式(穴埋め)が含まれます。合格基準は200〜800点のスケールで500点以上。加えて、両科目に合格したうえで有効なLPIC-1を保有していることが認定の要件です。これらはすべて公式に示されている条件で、難易度を考える土台になります。
もうひとつの手がかりが、出題範囲そのものの構造です。LPIの公開している出題範囲(objectives)には、各トピックに重み(weight)が付いており、どの領域が何問ぶん相当かの目安が読み取れます。合格率という結果の数字が手に入らないぶん、入力側にあたるこの範囲表を丁寧に読むことが、そのまま難易度の見積もりになります。
そして最後に、自分自身の正答率です。合格率が分からない試験で最も信頼できる指標は、他人の通過率ではなく、初見の問題に対する自分の得点です。この考え方は本記事の最後にもう一度取り上げます。
200〜800点のスケールドスコアが意味すること
LPIC-2の合格判定は、200〜800点のスケールで500点以上という形で示されます。ここで注意したいのは、これが「素点の何割で合格」という表現ではないという点です。素点、つまり60問のうち何問正解すれば500点に届くのかは公表されていません。よく見かける「◯割取れば通る」という言い方には、公式の裏づけがないということです。
スケールドスコアは一般に、出題される問題セットごとの難易度のばらつきを補正して、受験回にかかわらず同じ基準で合否を判定するための仕組みです。やさしい問題セットに当たった人と難しいセットに当たった人が、同じ素点で同じ評価にならないよう調整されます。受験者から見ると、これは「問題の当たり外れで運任せにはならない」という安心材料であると同時に、「何問落とせるかを事前に計算できない」という不自由さでもあります。
実務的な結論はシンプルです。ボーダーラインを狙う戦略が成立しません。素点の必要ラインが分からない以上、「7割取れれば十分だから3割は捨てる」という設計そのものが立てられないからです。捨て分野を決め打ちするのではなく、全分野を一定の水準まで持ち上げてから、余力を弱点に回すという順序のほうが安全です。
もうひとつ、スコアレポートの読み方にも影響します。試験後に示されるセクションごとの成績は、次に何を補強するかを決める材料としては有効ですが、「あと何点でどこが足りなかったか」を素点に換算して逆算することはできません。落ちた場合は差分を計算するより、弱かった分野を丸ごとやり直すほうが結果的に早いことが多いでしょう。
なお、試験は各科目60問を90分で解く形式です。単純に割ると1問あたり90秒で、分量としては極端に厳しい設定ではありません。ただし記述式が混ざること、設定ファイルの断片を読ませる設問があることを考えると、余裕があるとも言い切れません。分からない設問に時間を吸われて後半を落とす形が最も惜しいので、時間配分の感覚は問題演習の段階でつかんでおきたいところです。
LPIC-1を持っている人が、どこでつまずくのか
ここからが本題です。LPIC-1の知識を土台にしてLPIC-2に進んだとき、具体的にどこで足が止まるのか。傾向としてよく挙がる4つの場所を順に見ていきます。
単体コマンドの知識から「サーバーを構成する」への転換
LPIC-1では、コマンド名とオプションの組み合わせが分かれば正解にたどり着けました。LPIC-2の設問は、その先の「何のためにどう組むか」を問います。たとえばBIND 9でキャッシュ専用サーバーを作る、forwardersを指定して問い合わせを転送する、Apacheでバーチャルホストを分けてSNIで複数サイトを収容する、といった構成の意図を理解していないと、選択肢の違いが見分けられません。
ここでつまずく人に共通するのは、「コマンドは覚えたが、サービスが動く流れを追えていない」という状態です。DNSであれば、クライアントの問い合わせがどこを経由してどう返るのか。メールであれば、MTAが受けてからメールボックスに届くまでに何が起きるのか。この流れを一度でも自分の言葉で説明できるようにしておくと、個々の設定項目が意味を持ってつながります。
設定ファイルの階層と、どこに何を書くかという記憶
LPIC-2では、設定ファイルのパスとその中のディレクティブをセットで問う設問が多く出ます。しかもファイルは単層ではありません。全体に効くグローバルな設定、サービス単位の設定、ディレクトリや共有単位の設定、といった階層があり、下位の記述が上位を上書きする関係になっています。この階層を意識せずに項目だけ覚えると、「どこに書くか」で誤答します。
対策としては、主要なサービスごとに「ファイル名・置き場所・その中の代表的な項目」を三点セットで押さえるのが有効です。次のあたりは繰り返し登場するので、名前を見た瞬間に役割が浮かぶ状態にしておきたいところです。
- named.conf … BIND 9の中心。optionsとzoneのステートメント構造、forwardersやゾーン転送の制限をどこに書くか
- httpd.conf … Apacheの設定。Listen、バーチャルホスト、ディレクトリ単位のアクセス制御、ログの指定
- smb.conf … Sambaの共有設定。グローバルセクションと共有セクションの役割分担
- dhcpd.conf … DHCPのスコープ設定。サブネット宣言とオプションの書き分け
- main.cf … Postfixの主要設定。受信範囲やリレーの扱い、エイリアスとの関係
この5つはLPIC-2の中心的なサービスですが、丸暗記で乗り切ろうとすると量に押し潰されます。実際に一度書いてサービスを起動し、構文チェックのコマンドで検証してみると、階層の関係が身体に残ります。
記述式で、綴りそのものを問われる
LPIC-2の試験には、選択式に加えて記述式(穴埋め)の設問が含まれます。ここが選択式に慣れた学習者にとって最大の関門になります。選択肢があれば「見れば分かる」レベルの知識でも通用しますが、白紙にコマンド名やオプション、設定項目名を打ち込む形式では、綴りが1文字違うだけで得点になりません。
この形式に効くのは、読む学習ではなく打つ学習です。参考書を眺めるだけでは、記憶が「見て分かる」段階で止まります。仮想マシンで実際にコマンドを打ち、設定ファイルを手で書いて、動かして確認するというサイクルを通した項目だけが、白紙から再現できる知識に変わります。LPIC-1の学習を選択式問題だけで乗り切った人ほど、ここで想定以上の時間を使うことになります。
選択式問題を使う場合も、少し工夫すると記述式への備えになります。選択肢を見る前に答えを頭のなかで書き出し、それから選択肢を確認する。この順序に変えるだけで、「思い出せるつもりだったが出てこない」項目があぶり出されます。選択肢に助けられて正解した問題は、記述式では落とす候補だと考えておくのが安全です。
2科目ぶんの範囲を、同時に保持し続ける負荷
LPIC-2は201-450と202-450の2科目に合格して初めて認定されます。この「2科目ぶんを抱える」こと自体が、見落とされがちな負荷です。201の学習を終えて202に移ると、201で覚えたカーネルのモジュール管理やLVMの手順が少しずつ薄れていきます。逆に202を先にやれば、DNSやメールの設定が201の学習中に抜けていきます。
しかも201と202は内容の重なりが小さく、片方の学習がもう片方の維持に寄与しません。範囲がまったく別方向を向いているぶん、単純に2回ぶんの記憶を並行して保持する必要があります。1科目ずつ短期集中で受け切るか、両方を薄く回し続けるかという判断は、この保持コストをどう扱うかの判断でもあります。この点は後の見出しでもう少し詳しく整理します。
201と202、重いのはどちらか
「先に受けるならどちらが楽か」はよく話題になりますが、両者は性質が違うため、単純な上下では比べられません。分野の構成から見ていきます。ケンテイラボの収録問題では、201の範囲にあたるのが①キャパシティプランニングとLinuxカーネル、②システムの起動とファイルシステム、③高度なストレージ管理とネットワーク、④システムメンテナンスの4分野で合計340問。202の範囲にあたるのが⑤DNS、⑥Webサービスとプロキシ、⑦ファイル共有とネットワーククライアントの管理、⑧電子メールサービスとシステムセキュリティの4分野で合計336問です。総量はほぼ拮抗しています。
違いは中身の分布に出ます。201側は②システムの起動とファイルシステムが114問と単独で突出しており、systemdのユニットとターゲット、旧来のSysV initとランレベル、GRUBやUEFIからの復旧、/etc/fstabの書式やファイルシステムの保守までを1分野で背負っています。systemdとSysVという二つの体系を覚え分ける必要があるぶん、記憶の混線が起きやすい領域です。
一方の202側は、⑥Webサービスとプロキシ91問、⑦ファイル共有とネットワーククライアントの管理86問、⑧電子メールサービスとシステムセキュリティ84問、⑤DNS75問と、4分野が比較的均等に並びます。ただしこれは本サイトの収録数で、公式の weight では 202-450 は System Security の14が突出し、DNSは8で最小です(201-450 側の最大は Networking Configuration の11)。収録数の均等さは論点の広さの目安であって、配点の分布ではありません。BIND、Apache、Squid、nginx、Samba、NFS、DHCP、PAM、LDAP、Postfix、Dovecot、iptables、OpenSSH、OpenVPN と、対象となるソフトウェアの数がそのまま負荷になります。
整理すると、201は「深い1分野を含むが、扱う対象は自分の目の前の1台」。202は「1分野あたりは浅いが、扱うソフトウェアの種類が多く、それぞれに固有の設定文法がある」。普段からサーバー構築に触れている人は202のほうが取っつきやすく、逆にOS内部やストレージ寄りの仕事をしている人は201のほうが手応えを感じやすい傾向があります。どちらが重いかは、経歴によって入れ替わると考えたほうが実態に近いでしょう。
受験順に迷ったときの目安を挙げるなら、自分の実務に近いほうを先に受けるのが無難です。最初の1科目で合格の手応えを得られると、残りの科目に取り組む見通しが立ちやすくなります。加えて、先に受けた科目で試験そのものの形式、とくに記述式の出方に慣れておけるという副次的な効果もあります。どちらにも縁がない場合は、土台となる仕組みを扱う201から入ると、202のサービス構築の理解が進みやすくなります。
収録676問は、どの分野にどう配分されているか
ここで、ケンテイラボが収録しているLPIC-2対策問題676問の分野内訳を示します。各分野の収録問題数と全体に占める構成比、そして分野ごとに何が問われるのかの解説を一覧にしたものです。自分がどの分野に何時間を割くべきかの配分を考える材料として使ってください。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボではLPIC レベル2の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している676問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「② システムの起動とファイルシステム」の114問(全体の16.9%)、 最も少ないのは「④ システムメンテナンス」の74問(同10.9%)です。上位3分野だけで全体の43.1%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
- ② システムの起動とファイルシステム:114問(16.9%) 解説つきで見る →
- ⑥ Webサービスとプロキシ:91問(13.5%) 解説つきで見る →
- ⑦ ファイル共有とネットワーククライアントの管理:86問(12.7%) 解説つきで見る →
- ⑧ 電子メールサービスとシステムセキュリティ:84問(12.4%) 解説つきで見る →
- ① キャパシティプランニングとLinuxカーネル:77問(11.4%) 解説つきで見る →
- ③ 高度なストレージ管理とネットワーク:75問(11.1%) 解説つきで見る →
- ⑤ DNS:75問(11.1%) 解説つきで見る →
- ④ システムメンテナンス:74問(10.9%) 解説つきで見る →
この分野構成は、LPIが公開しているLPIC-2の出題範囲に沿って組んだものです。ただし収録問題数と実際の試験での出題比率が一致するわけではないため、構成比はあくまで「その分野が扱う論点の量」を示す目安として読んでください。試験本番での配点の重みを知りたい場合は、公式の出題範囲に記載された各トピックのウェイトを確認するのが確実です。
この表を眺めるときのポイントは、問題数の多い分野が「難しい分野」とは限らないという点です。問題数はその分野が扱う論点の広さを反映しています。②システムの起動とファイルシステムが最多なのは論点が多岐にわたるためで、1問あたりの難度が高いという意味ではありません。逆に⑤DNSは202-450の4分野のなかでは収録数が最少ですが、ゾーンファイルの書式やレコードの役割など、正確に書けないと落とす設問が集中する領域です。
分野ごとの学習負荷を、問題そのものから測る
分野の重さは問題数だけでは測れません。そこで、収録問題そのものを集計した別の指標も見てみます。次の表は、分野ごとに「数値を含む問題の割合」と「問題文の平均文字数」を実際の収録問題から算出したものです。前者が高い分野は数字やバージョン、ポート番号といった具体値の暗記が中心、後者が長い分野は状況を読み解いてから答える設問が多いことを示します。
分野別の学習タイプ(収録676問の集計)
ケンテイラボに収録しているLPIC レベル2の問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。
この試験でもっとも数値の比率が高いのは「③ 高度なストレージ管理とネットワーク」で56%、 もっとも低いのは「⑦ ファイル共有とネットワーククライアントの管理」で7%でした。 また問題文がもっとも長いのは「② システムの起動とファイルシステム」の平均61字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。
- ① キャパシティプランニングとLinuxカーネル:77問/数値を含む問題 30%/問題文 平均59字
- ② システムの起動とファイルシステム:114問/数値を含む問題 43%/問題文 平均61字
- ③ 高度なストレージ管理とネットワーク:75問/数値を含む問題 56%/問題文 平均53字
- ④ システムメンテナンス:74問/数値を含む問題 23%/問題文 平均52字
- ⑤ DNS:75問/数値を含む問題 21%/問題文 平均45字
- ⑥ Webサービスとプロキシ:91問/数値を含む問題 36%/問題文 平均47字
- ⑦ ファイル共有とネットワーククライアントの管理:86問/数値を含む問題 7%/問題文 平均52字
- ⑧ 電子メールサービスとシステムセキュリティ:84問/数値を含む問題 26%/問題文 平均55字
数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。
数値を含む問題の比率が高い分野は、机の上での反復が効きます。通勤時間に一問一答を回す形でも得点に結びつきやすい領域です。反対に問題文が長い分野は、選択肢を消していく読解の作業が必要になるため、まとまった時間を確保して腰を据えて解くほうが効率的です。同じ1時間でも、どの分野に充てるかで得られる伸びが変わります。
学習計画を立てるときは、この2つの表を重ねて見るのがおすすめです。問題数が多く、かつ数値比率が低い分野は、理解に時間がかかるうえに量もあるという最も重い組み合わせになります。そこを後回しにすると終盤で必ず苦しくなるので、着手順の先頭に置いておくのが無難です。
2科目を分けて受けるか、まとめて受けるか
201と202は別々の試験なので、受験日を分けることも、近い日程でまとめて受けることもできます。どちらが良いかは一概に言えず、置かれた条件で向き不向きが変わります。
科目ごとに日程を分ける進め方が向くのは、次のような条件です。
- 平日の学習時間が細切れで、まとまった期間を確保しにくい
- 201と202のどちらかは業務で日常的に触れており、片方だけ先に仕上げられる
- 一度に受けて両方落とすリスクを避け、確実に1科目ずつ積み上げたい
- 受験料の支出を分散させたい
反対に、近い日程でまとめて受ける進め方が向くのはこうした場合です。
- 短期集中で学習時間をまとめて取れる見通しがある
- 実機環境をすでに用意していて、201と202の演習を同じ環境で続けられる
- 間が空くと学習そのものが止まってしまう自覚がある
- 認定取得の期限が決まっていて、逆算すると分けている余裕がない
判断の軸になるのは、先に触れた「2科目ぶんの記憶を保持する負荷」です。間隔を空けるほど1回の負荷は下がりますが、先に受けた科目の内容が薄れます。まとめて受ければ保持コストは小さくなる代わりに、直前期の負荷が跳ね上がります。自分の生活リズムでどちらの負荷なら耐えられるかを基準にすると決めやすいでしょう。なお受験料は、LPIの公式価格表(日本)で1科目18,000円、2科目合計36,000円とされています。国内の案内では消費税込1科目19,800円と表示されることが多いのですが、公式の価格表には内税か外税かの明記がないため、申し込み時に実際の請求額を確認してください。
独学で届くか——分かれ目は実機環境を用意できるか
LPIC-2は独学で到達できる試験です。ただしその成否は、参考書の選び方や学習法よりも、手を動かせるLinux環境を用意できるかどうかで大きく分かれます。ここがLPIC-1との、もうひとつの実務的な差です。
LPIC-1の段階では、コマンドを試す環境さえあれば十分でした。LPIC-2で必要になるのは、サービスを立ち上げて設定を書き換え、壊して直せる環境です。BINDを起動してdigで引く、Apacheのバーチャルホストを2つ作ってアクセスを分ける、Sambaの共有を切ってクライアントからマウントする、iptablesでフィルタを入れて通信が止まることを確かめる。こうした一連の操作を通した知識が、記述式で綴りを問われたときに効いてきます。
環境は大がかりである必要はありません。手元のパソコンに仮想化ソフトを入れて仮想マシンを1〜2台立てれば、出題範囲の大半は再現できます。クラウド上の小さなインスタンスを使う方法もあります。重要なのは規模ではなく、「設定を壊してもよい」と思える自分専用の環境があることです。業務のサーバーで練習するわけにはいかない以上、この環境の有無がそのまま演習量の差になります。
逆に、環境を用意しないまま書籍と問題集だけで進める場合は、独学の難易度が一段上がると考えたほうがよいでしょう。読解型の設問には対応できても、記述式や設定ファイルの細部を問う設問で取りこぼしが増えます。時間が取れないなら、全分野を実機で試すのではなく、記述式で綴りまで問われる主要サービスに絞って手を動かすだけでも効果があります。
独学で進める場合にもうひとつ効くのが、壊す練習です。LPIC-2の設問には、設定に不備があるときにどこを疑うかという切り口のものが含まれます。正しく動く状態を作るだけでなく、わざと設定を間違えてサービスが起動しないところを見る、名前解決が失敗する状態を作って切り分けコマンドで追う、といった練習を挟むと、こうした設問への対応力が上がります。正常系だけをなぞる学習では届きにくい部分です。
LinuCレベル2との関係をどう考えるか
日本でLinuxの認定を調べると、LPICと並んでLinuC(リナック)という名前が出てきます。混乱しやすいところなので、関係を整理しておきます。もともと日本国内のLPIC試験の運営を担っていた団体が独自の認定としてLinuCを立ち上げ、以降は運営主体の異なる別々の認定として並立している、というのが現在の状況です。名称やレベルの区切り方が似ているのはこうした経緯によるものです。
範囲についても重なりがあります。LinuCのレベル2も、ストレージやネットワーク、各種サーバーサービスの構築運用を対象としており、LPIC-2で学ぶ内容の多くはそのまま通用します。一方で、クラウドやコンテナの扱いなど、各認定が独自に強化している領域もあります。したがって「片方を勉強すればもう片方も自動的に受かる」とまでは言えず、受験するほうの最新の出題範囲を確認する必要があります。
学習教材の面でも影響があります。書店やネット上には両方の対策教材が並んでおり、タイトルだけでは区別しにくいことがあります。範囲が重なっているぶん流用が効く部分は多いのですが、細部の問われ方は認定ごとに異なります。購入前に、その教材がどちらの認定のどのバージョンに対応しているかを確認しておくと、無駄な回り道を避けられます。
どちらが優れているという話ではありません。LPICは国際的に通用する認定として設計されており、LinuCは日本国内の事情を踏まえた認定として運営されています。勤務先や取引先がどちらを指定しているか、転職を考えている業界でどちらの名前が通りやすいか、といった環境要因で選ぶのが現実的です。判断に必要な最新の範囲・料金・有効期間は、それぞれの主催者の公式サイトで確認してください。
5年で失効する認定と、受験タイミングの考え方
LPIC-2の認定は、最後の必須科目に合格した日から5年でアクティブ状態でなくなります(LPIは認定そのものを取り消さず、inactive として扱います)。この点は、受験時期を決めるうえで無視できない条件です。技術認定としては、内容の陳腐化を防ぐために期限を設ける設計は自然ですが、受験者側から見ると「取ったあとの5年をどう使うか」という視点が必要になります。
たとえば、認定を転職や社内評価の材料として使う予定があるなら、その予定から逆算して取得時期を決めるほうが有効期間を無駄にしません。最後の必須科目に合格した日から5年でアクティブ状態が切れるため、取得から時間が経ってから使おうとすると、再受験・上位認定・PDUのいずれかが必要になります(同一試験の受け直しは合格から2年間はできません)。逆に、いま実務でLinuxサーバーを扱っていて知識の整理が目的なら、期限より先に「実務で使える状態を作る」ことを優先してよいでしょう。
もうひとつ、認定要件そのものにも期限が関わります。LPIC-2の認定には有効なLPIC-1の保有が求められるため、LPIC-1の取得から時間が空いている場合は、その有効性を先に確認しておく必要があります。あわせて、LPIC-1で学んだパーミッション、プロセス管理、パッケージ管理、シェルといった土台は、LPIC-2の設問でも前提知識として使われます。ブランクがあるなら、201の学習に入る前に一度おさらいしておくと立ち上がりが速くなります。
収録676問を、到達度の物差しとして使う
合格率が公表されておらず、素点の必要ラインも分からない試験では、判断の基準を自分の外に求めても答えは出ません。頼りになるのは「初見の問題に対して、いま何割正解できるか」という自分自身の数字です。
ケンテイラボが収録しているLPIC-2対策問題は全676問・8分野で、201の範囲にあたる4分野が340問、202の範囲にあたる4分野が336問です。使い方として有効なのは、一度解いた問題の正答率ではなく、まだ解いていない問題群での正答率を測ることです。繰り返した問題の得点は記憶の再生であって、実力の測定にはなりません。分野ごとにまとまった数を残しておき、仕上げ段階で初見として当てると、到達度が見えやすくなります。
測り方にもうひとつ工夫を入れるなら、201の4分野と202の4分野を別々に集計することをおすすめします。合格判定は科目ごとに独立しているため、全体平均で見ても意味がありません。片方が仕上がっていて片方が届いていない、という状態は珍しくなく、そこが見えれば残り時間の配分をすぐに修正できます。
LPIC-2は、範囲が広く、記述式があり、2科目を抱えるという意味で確かに手強い試験です。ただし範囲は有限で、問われる論点も出題範囲として公開されています。LPIC-1からの距離は「読めば分かる」を「白紙から書ける」に変換する作業量そのものであり、その作業は仮想マシン1台と問題演習で着実に進められます。今日の到達度を測るところから始めてみてください。