2026/09/07

HSK3級の最大の壁は書写10問|600語をどう埋めきるか

聴力は2回流れる、閲読は3つの部分で見どころが違う、書写は手で簡体字を書く。セクションごとに求められる作業が別物です。600語という語彙の上限、声調の効きどころ、文法を固める順序をたどります。

執筆:ケンテイラボ編集部(資格試験対策アプリ開発・運営)

HSK(漢語水平考試)は、中国教育部直属の機関である中外語言交流合作中心が主催する中国政府公認の中国語能力試験で、日本国内の実施はHSK日本実施委員会が担っています。その筆記3級は、600語程度の常用単語と基本的な文法を身につけた学習者を対象とし、聴力40問・閲読30問・書写10問の計80問で日常的な中国語の運用力を測ります。配点は3セクション各100点の合計300点満点で、180点以上が合格ラインです。

この試験の性格は、2つの特徴に集約できます。1つは、覚えるべき語彙の量が「600語程度」と数字で示されていること。もう1つは、3級から手書きで漢字を書く書写のセクションが加わることです。前者は学習の設計を一気に楽にし、後者は日本語話者にとって独特の壁になります。本記事では、この2点を軸にHSK3級の対策を組み立てていきます。なお、HSKの合格率は公式には公表されていないため、本記事では合格率の数値には踏み込みません。

語彙600語という上限が引かれていることの意味

多くの語学試験では「日常会話レベル」「基礎的な文章が読める」といった説明はあっても、必要な語彙の量そのものが数字で示されることはあまりありません。HSKは級ごとに対象となる語彙数が明示されており、3級はそれが600語程度とされています。学習者から見れば、これは「どこまでやれば土台が完成するのか」が最初から見えているということです。範囲の見えない試験にありがちな、いつまで単語を増やせばよいのか分からないという不安が、構造的に発生しにくくなっています。

上限が引かれている試験では、最短ルートははっきりしています。教材を次々に足すのではなく、対象となる語彙表を1つ決めて最後まで潰し切ることです。600語は1つの単語帳を何周も回せる程度の分量なので、範囲を広げる方向に労力を使うより、同じ600語に別の角度から何度も触れるほうが得点につながります。

ただし注意したいのは、600語を「知っている」だけでは3セクションに対応できないことです。HSK3級は同じ語彙に対して、セクションごとに違うレベルの習熟を求めてきます。聴力では音として反応できること、閲読では字面を見て意味が取れること、そして書写では手を動かして書けることが必要です。同じ1語でも、この3段階のどこまで到達しているかで得点への貢献度が変わります。

  • 聴力(100点):音を聞いた瞬間に意味が浮かぶ状態。声調まで含めて記憶していないと反応できない
  • 閲読(100点):簡体字を見て意味が取れる状態。読めれば足りるので、到達コストは比較的低い
  • 書写(100点):何も見ずに手で書ける状態。3段階のなかで最も負荷が高く、3級から新たに求められる
  • 合計300点満点・180点以上で合格。セクションごとの足切りではなく合計点での判定

合格判定が合計点で行われることは、学習計画を立てるうえで重要な意味を持ちます。書写で崩れても、聴力と閲読の200点分で取り返せる設計になっているからです。配点の3分の2を占めるマークシート2セクションを先に安定させ、そのうえで書写を上積みしていく。この順序を最初に決めておくと、限られた時間の配分で迷わなくなります。

試験の外形も押さえておきましょう。試験時間は聴力が約35分に解答用紙への記入時間5分が加わり、閲読30分、書写15分で、正味およそ85分です。HSK日本実施委員会の時間帯区分では3級は午後の時間帯Bにあたり、受付開始13時10分・試験開始13時30分で全体はおよそ100分間となります。受験料は6,600円(税込)です。

聴力40問は「2回流れる」ことを前提に聴き方を変える

聴力は全40問で、4つの部分に分かれています。第1部分が写真選択10問、第2部分が正誤判断10問、第3部分が短い会話10問、第4部分がやや長い会話10問という構成です。そして最大の特徴は、放送が2回流れることです。この仕様を知っているかどうかで、試験中の頭の使い方はまったく変わります。

1回目ですべてを聞き取ろうとすると、聞き逃した瞬間に焦りが生まれ、その動揺が次の問題まで引きずられます。2回流れる前提であれば、1回目は「何が問われているのか」を大づかみにする時間、2回目は残った候補を確定させる時間、と役割を分けられます。このリズムを普段の練習から作っておくことが、本番での安定につながります。

形式が4つに固定されているので、部分ごとに「何を待ち構えるか」を先に決めておけます。第1部分の写真選択は、写真に写っている行為や物を指す語が1つ聞き取れれば決着することが多く、文全体を訳す必要はありません。第2部分の正誤判断は、放送された内容と提示された文が一致するかを判断する形式なので、言い換え・否定・数字のすり替えが判断の分かれ目になります。

第3部分と第4部分の会話問題では、放送が始まる前に設問と選択肢に目を通しておけるかどうかが差になります。選択肢が場所を並べているなら場所を、時刻や金額を並べているなら数字を待ち構えればよいからです。会話問題で問われやすいのは、数字・時間・場所・人物関係の4つ。この4点を頭に置いて聴くだけで、必要な集中の量が減ります。

  • 第1部分(写真選択10問):写真の中の動作・物を指す語を1つ拾う。全訳しようとしない
  • 第2部分(正誤判断10問):言い換えられているか、否定されているか、数字がずらされていないかを確認する
  • 第3部分(短い会話10問):2人のやり取りから、誰が何をするのかという関係を取る
  • 第4部分(やや長い会話10問):情報量が増えるぶん、設問の先読みで聴く対象を絞る

また、聴力には解答用紙へ記入するための時間が別に5分設けられています。放送中は問題冊子に印をつけておき、マークは後でまとめて写す運用が可能だということです。マーク作業に気を取られて次の問題の冒頭を聞き逃す、という典型的な失点をこの5分が防いでくれます。

閲読30問は3つの部分で見るところがまったく違う

閲読は全30問で、第1部分が関連文の組み合わせ10問、第2部分が空所補充10問、第3部分が短文読解10問です。同じ「読解」という名前でも、解くときに使う能力は部分ごとに違います。まとめて「読む練習」をするのではなく、部分ごとに解き方を用意しておくほうが効率的です。

第1部分の関連文の組み合わせは、提示された文と対応する文を結びつける形式です。ここで働くのは読解力というより、対応関係を見つける力です。問いかけと応答、指示語が受けている対象、時間や場所の一致、そして呼応する接続語といった手がかりを拾っていきます。確実に決まるペアから先に処理し、残りを消去法で埋めるという全体最適の解き方が有効です。1問ずつ順番に確定させようとすると、迷った1問で時間を失います。

第2部分の空所補充は、実質的に文法問題として扱えます。空所に入るのはどの品詞か、その品詞は文中のどこに置かれるかを考えれば、意味を細かく検討する前に候補が絞れることが少なくありません。量詞、程度副詞、接続語の後半といった位置の決まった要素が繰り返し問われるので、前後の語との相性を見る癖をつけておきましょう。

第3部分の短文読解は、短い文章を読んで設問に答える形式です。ここでは設問文を先に読んでから本文に入るほうが、探す情報が定まって速くなります。閲読は30問を30分で処理するので、1問あたり1分です。第1部分と第2部分をテンポよく抜けて、第3部分に時間を残す配分を練習段階で作っておきましょう。

  • 第1部分(関連文の組み合わせ10問):問いと答え、指示語、呼応する接続語をヒントに。決まるものから埋める
  • 第2部分(空所補充10問):意味より先に品詞と位置。量詞・副詞・接続語の呼応が定番
  • 第3部分(短文読解10問):設問を先に読み、探す情報を決めてから本文へ

3級から加わる書写10問 ― 中国語を「手で書く」という壁

HSK3級で新たに登場するのが書写です。全10問で、第1部分が語句の並べ替え5問、第2部分が空所に漢字を書く5問。聴力と閲読がマークシート方式であるのに対し、書写は記述式です。ここまで選択肢の中から選ぶ形式に慣れてきた学習者が、初めて自分で答えを作ることを求められる場面になります。

第1部分の語句の並べ替えは、与えられた語句を正しい語順に組み立てる問題です。ここで採点対象になるのは、まさに中国語の語順ルールそのものです。副詞は主語の後・動詞の前に置く、介詞句は原則として動詞の前に置く(ただし在・到・给は放在…/走到…/送给…のように動詞の後ろに置く型があり、「把」構文ではこの後置型が3級の出題形)、補語は動詞の後ろに置く、「把」構文では動詞の後ろに結果を示す成分が必要になる。こうした規則を「意味」ではなく「置く位置」として覚え直しておくと、この5問は安定した得点源になります。

そして第2部分が、日本語話者にとって独特の壁になります。空所に入る漢字を、選ぶのではなく書く問題だからです。読めば分かる、見れば選べる、という状態では答えられません。簡体字を、自分の手で、正しい字形で書き出せるかどうかが直接問われます。中国語の学習は音声と読解に時間を割きがちなので、書く練習だけが手つかずのまま本番を迎えるという事態が起こりやすいところです。

対策は単純で、覚えた語を紙に書く時間を学習に組み込むしかありません。ただし600語という上限があるおかげで、書けるようにすべき対象は無限には広がらず、日常的な話題で繰り返し出てくる基本語から手を動かしていけば足ります。選択式で答えられた語ほど、書けないまま通過している可能性があります。

配点上の位置づけも確認しておきましょう。書写は100点分ですが、合格判定は300点満点の合計点で行われ、セクションごとの足切りはありません。つまり書写が振るわなくても、聴力と閲読で取り返せます。とはいえ100点は全体の3分の1であり、丸ごと捨てるにはあまりに重い。並べ替え5問は文法の知識がそのまま点になるため、まずはここを取りにいくのが費用対効果の高い方針です。

日本語の漢字と簡体字のズレをどう処理するか

日本語話者は、漢字を知っているという利点を持って中国語学習を始められます。閲読では意味の見当がつく語が最初から多く、有利に進められます。ところがこの利点は、書写になると一転して落とし穴に変わります。頭の中にある漢字が日本の字体であるために、簡体字を書いたつもりで日本の漢字を書いてしまうからです。

簡体字と日本の漢字の関係は、おおまかに3つのパターンに分かれます。第1に、日本の漢字とまったく同じ字体のもの。これは何もしなくても書けます。第2に、日本でも簡略化されているが、簡略化の仕方が中国と異なるもの。ここが最も事故が起きやすい領域です。第3に、日本語には存在しない形まで簡略化されているもの。こちらは見た瞬間に別物だと分かるので、かえって混同しません。

  • 日本の漢字と同形:意識せず書ける。学習コストはほぼゼロ
  • 簡略化の方向が違う:読が「读」、発が「发」、実が「实」、対が「对」のように、日中それぞれ別の方向に簡略化された字。書いた本人が違いに気づきにくい
  • 日本語にない字形:門が「门」、車が「车」、漢が「汉」、語が「语」のように大きく変わる。別の字として素直に覚えられる
  • 意味がずれる語:同じ漢字でも意味が異なることがある。「走」は日本語の走るではなく歩くこと

実務的な対処は、書写で出題されうる基本語に絞って書く練習をすることです。600語のすべてを書けるようにする必要はなく、日常的な場面でよく使う語から順に、手で書いて字形を確認していきます。このとき、日本の漢字と「どこが違うか」を意識しながら書くのが重要です。違いを言語化せずに眺めているだけだと、本番で日本の字体が出てきます。

ピンインと声調がどこで効いてくるか

ピンインと声調は、3級の出題で直接問われる場面と、間接的に得点を左右する場面の両方があります。直接効いてくるのは、まず聴力です。聴力40問はすべて中国語の音声で放送されるため、声調を聞き分けられるかどうかがそのまま得点に直結します。同じ音でも声調が違えば別の語になるという中国語の性質上、声調の記憶が曖昧な語は、聞こえていても意味に変換できません。

書写第2部分も、読みと漢字を結びつける力が問われる場面です。頭の中で音が浮かんでいても、その音に対応する簡体字が出てこなければ答えは書けません。つまり音と字形が双方向に結びついている必要があります。単語を覚えるときに、意味だけ・字だけ・音だけのどれか1つで止めていると、この往復ができないままになります。

間接的に効いてくるのは、語彙の記憶そのものの質です。声調を単語の一部として一体で覚えている人と、後から付け足す情報として扱う人では、同じ600語でも定着の強さが変わります。声調符号を書かずに覚える、黙読だけで覚えるといった省略は、聴力の失点として跳ね返ってきます。

日本語話者に固有のつまずきとして、日本語の漢字音に引きずられた思い込みも挙げられます。日本語での読み方から中国語の音を類推してしまい、実際の発音と食い違ったまま記憶してしまうパターンです。漢字が読めることの副作用ともいえるので、新しい語に出会ったときは必ず音声で確認し、自分で声に出す工程を挟むようにしたいところです。

文法項目はどの順番で固めていくか

600語という語彙の上限が決まっている以上、3級で差がつくのは語彙量よりも文法の運用です。ケンテイラボがHSK3級向けに収録している問題は、学習しやすい順に8つの分野へ整理してあります。これは学習用の区分であり、公式の出題区分である聴力・閲読・書写とは別の軸で切ったものです。文法項目をどの順に固めるかを考えるときの地図として使ってください。

  • ① 発音・数詞・量詞:ピンインと四声、数の数え方、量詞の使い分け。すべての土台になる
  • ② 疑問文:文末の疑問標識、疑問詞、反復疑問、選択疑問。設問の趣旨を取り違えないために早めに
  • ③ 副詞(程度・時間範囲・語気頻度):位置の規則が厳格で、書写の並べ替えの急所になる
  • ④ 介詞・能願動詞・定語と状語:介詞句は動詞の前。修飾語の順序と書き分けが繰り返し問われる
  • ⑤ 補語(様態・程度・結果・方向):日本語に対応する構造がなく、最大の関門になりやすい
  • ⑥ 是〜的・存現文・使役と禁止:焦点を当てる表現と、語順が日本語と逆転する存現文
  • ⑦ 「把」構文・受け身・比較:並べ替えの定番。比較文の制約もここで整理する
  • ⑧ アスペクト・複文:完了と経験の標識、呼応する接続語。空所補充と並べ替えの両方に効く

順番の考え方はこうです。①と②は他分野の前提になるので最初に置きます。①の量詞や数の表現は、日付・時刻・年齢・金額として聴力にも閲読にも出てきます。②の疑問文は、設問そのものが疑問文の形で示されるため、疑問詞を取り違えると設問の趣旨ごと外してしまいます。ここまでは得点というより事故防止のための土台です。

③から⑤、そして⑦は、書写第1部分の並べ替えで直接問われる領域です。副詞の位置、介詞句の位置、補語の位置、「把」構文の制約。いずれも「その語をどこに置くか」という問題であり、意味を理解しているだけでは正解になりません。日本語に対応する構造がない⑤の補語は特に時間がかかるので、早めに着手して繰り返す対象にしておくとよいでしょう。

⑥と⑧は、意味の理解と語順の両方が絡む分野です。⑥の存現文は場所を先頭に置く語順が日本語と逆になるため、並べ替えで崩れやすい項目です。⑧のアスペクト助詞と複文の呼応表現は、閲読第2部分の空所補充で問われます。接続語は前後をセットで覚えていないと、片方だけ見ても選択肢を絞れません。訳語が同じでも使い分けの根拠が違う語は、根拠のほうを覚えるのが結局は近道です。

収録330問の分野内訳を数字で見る

ケンテイラボがHSK3級向けに収録している対策問題は全330問です。前節で挙げた8分野それぞれに、どれだけの問題が割り当てられているかを一覧にしました。各分野の解説も添えてあるので、どの分野に何が含まれるのかを確認する索引としても使えます。分野ごとの問題数は、その分野で押さえるべき項目の多さの目安になります。

収録問題8分野の内訳と比重

ケンテイラボではHSK(漢語水平考試)3級の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している330問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「⑦ 「把」構文・受け身・比較」の44問(全体の13.3%)、 最も少ないのは「⑥ 是〜的・存現文・使役と禁止」の40問(同12.1%)です。上位3分野だけで全体の38.7%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。

分野別の学習負荷を収録データから読む

次の表は、収録している330問を分野別に集計し、数値を含む問題の割合と、問題文の平均文字数を示したものです。数値を含む問題の割合が高い分野は、数字そのものを覚える比重が大きい分野。平均文字数が長い分野は、1問あたりに読む情報量が多く、判断に時間がかかる分野だと考えられます。学習時間をどこに厚く配分するかを決める材料にしてください。

分野別の学習タイプ(収録330問の集計)

ケンテイラボに収録しているHSK(漢語水平考試)3級の問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。

この試験でもっとも数値の比率が高いのは「① 発音・数詞・量詞」で28%、 もっとも低いのは「⑤ 補語(様態・程度・結果・方向)」で0%でした。 また問題文がもっとも長いのは「④ 介詞・能願動詞・定語と状語」の平均51字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。

  • ① 発音・数詞・量詞40問/数値を含む問題 28%/問題文 平均27
  • ② 疑問文40問/数値を含む問題 10%/問題文 平均33
  • ③ 副詞(程度・時間範囲・語気頻度)42問/数値を含む問題 0%/問題文 平均13
  • ④ 介詞・能願動詞・定語と状語40問/数値を含む問題 10%/問題文 平均51
  • ⑤ 補語(様態・程度・結果・方向)42問/数値を含む問題 0%/問題文 平均33
  • ⑥ 是〜的・存現文・使役と禁止40問/数値を含む問題 5%/問題文 平均31
  • ⑦ 「把」構文・受け身・比較44問/数値を含む問題 5%/問題文 平均40
  • ⑧ アスペクト・複文42問/数値を含む問題 14%/問題文 平均37

数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。

600語を埋めるまでの進め方

以下は、出発点の違う2つのパターンについて学習の進め方を並べたものです。期間はあくまで目安であり、1日に確保できる時間や中国語に触れてきた量によって前後します。共通しているのは、語彙表を早い段階で一巡させること、書写の練習を後回しにしすぎないことの2点です。

パターン1:中国語学習が初めての場合

発音から始める必要があるため、いきなり問題演習に入らず、最初のまとまった期間をピンインと四声に充てます。ここを飛ばすと、後で聴力が伸びない原因になり、結局戻ってやり直すことになります。目安としては、半年前後の準備期間を見ておくと無理がありません。

  • 第1期:ピンインと四声、あいさつと基本の文型。声に出す時間を必ず作る
  • 第2期:語彙表を一巡させながら、①発音・数詞・量詞と②疑問文を固める
  • 第3期:③副詞から⑤補語まで、語順の規則を「位置」として整理。ここで書写の並べ替えを始める
  • 第4期:⑥から⑧を追加し、閲読の3部分を形式ごとに練習。並行して基本語を手で書く
  • 直前期:聴力を通しで演習し、2回の放送を使い分けるリズムを固める

パターン2:4級を見据えて3級を通過点にする場合

すでに基本的な発音と文型を学んだ状態から、3級を確認のための一段として受ける場合です。この立場では、3級の合格そのものより「4級以降で崩れない土台を作る」ことが目的になります。したがって、合計180点に届けばよいという発想で書写を捨てるのは得策ではありません。書写で問われる語順の規則は、上位級でそのまま前提として使われるからです。

  • 序盤:600語の語彙表を短期間で一巡し、抜けている語を洗い出す
  • 中盤:⑤補語と⑦「把」構文・受け身・比較を重点的に。上位級でも必ず問われる領域
  • 中盤:書写第2部分に備え、基本語を手で書く時間を毎日の学習に固定で組み込む
  • 終盤:閲読の第2部分と⑧アスペクト・複文を往復し、接続語を呼応のセットで確認する
  • 直前期:3セクションを通しで解き、85分の配分を体に入れる

どちらのパターンでも、聴力の演習は最後にまとめてやるのではなく、早い段階から少しずつ挟むほうが安全です。聴き取りは知識の量だけでは伸びず、慣れる時間そのものが必要だからです。短くても毎日音声に触れる形にしておくと、直前期の負担が軽くなります。

中国語検定(中検)とは何が違うのか

日本国内で中国語の資格として並べて語られるものに、中国語検定(中検)があります。どちらが優れているという性質のものではなく、成り立ちと測るものが違う試験だと理解しておくのが実務的です。HSKは中国の教育部直属機関が主催する中国政府公認の試験で、日本国内の実施はHSK日本実施委員会が担っています。一方の中検は、日本の団体が国内の学習者向けに実施してきた試験です。

分かりやすい違いの1つは級の数え方です。HSKは数字が大きいほど上位で、1級から6級へと上がっていきます。中検は準4級から1級へと、数字が小さいほど上位になります。混同したまま「3級」という数字だけで難易度を比べると、話が噛み合わなくなります。もう1つの違いは出題の言語で、HSKは問題文がすべて中国語で提示されるのに対し、中検には日本語と中国語の間で訳す形式が含まれます。

この違いは、鍛えられる力の違いにもつながります。中国語だけで完結するHSKは中国語を中国語のまま処理する力に向き合うことになり、訳出を含む中検は両言語を対応させる精度が問われます。中国の大学への留学要件としてHSKのスコアが用いられる場面があることも判断材料になるでしょう。優劣ではなく、目的に合うほうを選ぶのが自然です。

収録330問・8分野での仕上げ方

最後に、ケンテイラボに収録しているHSK3級対策の330問をどう使うかを整理します。問題は前述の8分野に振り分けられているので、分野を1つずつ選んで通す使い方ができます。まずは分野別に潰し、正答率の低い分野を特定してから、全体をランダムに回すという二段構えが基本です。

1周目は、間違えた問題に印をつけることだけを目的にします。2周目は解説を読み、なぜその語順・その語でなければならないのかを自分の言葉で説明できるかを確認します。3周目は全分野をランダムに解き、分野の見出しという手がかりがない状態でも正解できるかを見ます。分野別に解いているときは、実際より正答率が高く出るためです。

書写の対策としては、選択肢で正解できた問題についても、答えの語句を紙に書いてみる工程を足すのが効果的です。選べるが書けない語がその場で洗い出せます。並べ替え対策としては、正解した問題でも語順の根拠を口に出して言えるか確かめておくと、書写第1部分での判断が速くなります。

HSK3級は、600語という上限が示され、出題形式も固定されている、輪郭のはっきりした試験です。やるべきことは「決まった語彙を3段階の深さまで持ち上げること」と「語順の規則を位置として覚え直すこと」に集約されます。手で書く練習を後回しにしないことだけ意識して、計画的に進めていきましょう。

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