2026/09/07

読めるのに聞き取れない|HSK3級で日本語話者が削られる場所

300点満点で180点という合格ラインは、セクションごとではなく合計での判定です。つまり苦手を他で補えます。漢字が閲読で効く場面と聴力・書写で裏目に出る場面、中国語検定との性格差を切り分けました。

執筆:ケンテイラボ編集部(資格試験対策アプリ開発・運営)

HSK(漢語水平考試)3級は、中華人民共和国教育部直属の中外語言交流合作中心が主催する中国政府公認の中国語能力試験で、日本国内の実施はHSK日本実施委員会が担っています。600語程度の常用単語と基本的な文法を身につけた学習者を対象に、聴力・閲読・書写の3セクション計80問で、日常的な場面の中国語運用力を判定する試験です。難易度を調べようとすると「大学の第二外国語で2年目の前期くらい」といった目安に行き当たりますが、その一言では自分がどこで詰まるのかまでは見えてきません。

HSKの難しさには、他の多くの資格試験にはない特徴があります。それは、受験者の母語によって難しさの形そのものが変わるということです。特に日本語を母語とする学習者は、漢字を知っているという大きな下駄を履いた状態で閲読に臨める一方、その同じ漢字の知識が聴力と書写では逆向きに働く場面があります。本記事では、この「漢字が有利に働く場面」と「漢字が足を引っ張る場面」の非対称性を軸に、日本語話者から見たHSK3級の難易度を整理します。なお、HSKの合格率は公式には公表されていないため、本記事では合格率や受験者数の数字は扱いません。

結論:日本語話者の難しさは「読めるのに聞き取れない・書けない」という形で現れる

先に結論を述べると、日本語を母語とする学習者にとってのHSK3級は、「閲読で稼ぎ、聴力で削られ、書写で最後の詰めを問われる」という凸凹した形になりやすい試験です。漢字圏の学習者は、中国語の文を目で見たときに単語の意味の見当がつくため、学習の早い段階から閲読30問で一定の得点が期待できます。ところが聴力40問はすべて中国語の音声で進行し、漢字という手がかりが目の前から消えた状態で処理しなければなりません。さらに書写10問はHSK3級から加わる記述式で、簡体字を自分の手で書けるかどうかがそのまま点数になります。

この構造がやっかいなのは、自己評価がずれやすいことです。テキストを読んで理解できているという感覚は、日本語話者の場合、漢字によって水増しされている可能性があります。「読める」ことと「中国語ができる」ことのあいだには、非漢字圏の学習者よりも大きな隙間が空きやすい。この隙間に気づかないまま聴力の対策を後回しにして本番を迎えると、合計点が合格ラインにわずかに届かないという結果になりがちです。

裏を返せば、この非対称性を最初から前提にして学習時間の配分を決めれば、HSK3級は日本語話者にとってかなり手が届きやすい試験だとも言えます。3級でつまずく箇所の多くは「中国語がそもそも難しいから」ではなく、「日本語の漢字知識が中国語の音や字形に干渉するから」生まれるもので、干渉が起きる場所はかなりはっきりしています。以下では、合格ラインの読み方から始めて、その干渉の起きる場所を一つずつ見ていきます。

300点満点180点は「合計での判定」──苦手セクションを他で補える

HSK3級の配点は、聴力100点・閲読100点・書写100点の合計300点満点で、合格ラインは180点、つまり6割です。ここで押さえておきたいのは、これがセクションごとの足切りではなく、3セクションの合計点による判定だという点です。極端に言えば、記述式の書写で崩れたとしても、聴力と閲読で取り返せる設計になっています。

6割という数字だけを見ると平凡な合格ラインに思えますが、内訳を意識すると学習の優先順位が変わります。マークシート方式である聴力40問と閲読30問だけで、配点全体の3分の2にあたる200点を占めます。一方で書写は同じ100点分を持ちながら問題数は10問しかなく、単純に均せば1問あたりの重みが3セクションで最も大きいセクションということになります。問題数と配点の比が、セクションによってまったく違うのです。

ただし、合計判定であることを、苦手セクションを捨ててよい理由にするのは危険です。聴力は配点の3分の1を占めるうえ問題数が最も多く、ここが大きく崩れると、閲読と書写の両方でほぼ満点に近い状態が必要になってしまいます。合計判定の恩恵は「多少の凸凹を吸収してくれる」ことであって、「1セクションを丸ごと空白にしても通る」ことではありません。得意なセクションで7割から8割、苦手なセクションでも5割は確保するという形が、現実的な組み立てになります。

漢字が有利に働く場面──閲読は「意味の見当がつく」ところから始められる

閲読は30問で構成され、第1部分が関連する文の組み合わせ10問、第2部分が空所補充10問、第3部分が短文読解10問という形式です。すべて中国語の文字で提示されるため、漢字を読み慣れている学習者にとっては、最初から情報が入ってくる状態でスタートできます。この点が、アルファベット圏の学習者との最大の違いです。

有利さがもっとも分かりやすいのは、日本語の漢語と重なる二字熟語です。「学習」「時間」「地図」「電話」「経験」といった語は、簡体字の字形の差を差し引けば日本語とほぼ同じ意味で使われます。中国語の書き言葉に現れる名詞や動作を表す語には、この種の重なりが大量にあります。そのため、文全体を精密に訳せなくても、鍵となる語をいくつか拾えば話題の見当がつく、という状態を早い段階で作れます。

閲読第1部分の関連文の組み合わせでは、この見当が特によく効きます。左右の文を厳密に解釈しなくても、時間を表す語、場所を表す語、同じ話題を指す語が両方に現れていれば、対応関係が浮かび上がるからです。第3部分の短文読解でも、設問と本文で共通して使われている漢字を手がかりに、答えの根拠がどのあたりにあるかを絞り込めます。

ただし、この有利さは「意味の見当がつく」ところまでで止まることを覚えておく必要があります。その語がどの品詞で、どんな語順で、どの語と組み合わせて使われるのかまでは、漢字は教えてくれません。閲読第2部分の空所補充のように、意味ではなく文法的な位置関係を問う設問では、漢字の下駄はほとんど効かなくなります。

漢字が足を引っ張る場面──意味のずれ・字形の差・日本語式の音読み

漢字の知識が逆に働く場面は、大きく3種類に分けられます。1つ目は、日本語の漢字語と中国語の語で意味がずれている場合です。よく知られた例では、中国語の「走」は「走る」ではなく「歩く」を、「汽车」は「汽車」ではなく「自動車」を指します。「东西」は方角ではなく「もの」を意味し、「小心」は臆病ではなく「気をつける」という注意喚起の語です。

この種のずれは、まったく知らない語よりもたちが悪い場合があります。知らない語なら立ち止まって確認しますが、見覚えのある漢字はそのまま日本語の意味で読み流してしまうからです。閲読第3部分の短文読解で、文全体はなんとなく分かるのに設問の答えだけが合わない、というときは、この読み流しが起きていることが少なくありません。

2つ目は、簡体字の字形です。日本の新字体と中国の簡体字は、それぞれ別の経緯で簡略化されているため、同じ漢字に旧字体・日本の新字体・簡体字という3通りの形が存在することになります。「読」は「读」、「語」は「语」、「習」は「习」、「機」は「机」、「車」は「车」のように、日本語の字形からは推測しにくい形になっている字が多数あります。読むときは前後の文脈が助けてくれるため、字形の細かい違いを意識しないまま先に進んでしまいがちで、そのつけが書写で回ってきます。

3つ目が、日本語式の音読みによる干渉で、これが聴力にもっとも重くのしかかります。日本語の音読みは中国語の古い発音に由来しますが、現代中国語の発音とは大きくずれており、何より声調がありません。「学生」という語を「がくせい」という日本語音と結びつけて覚えてしまうと、xuéshengという実際の音が耳に入ってきたときに、それが同じ語だと結びつかないのです。

さらに悪いことに、日本語話者は「音を聞く→漢字を思い浮かべる→日本語の意味に変換する」という迂回路を作りやすい傾向があります。この経路は文字を見ているときには高速に働きますが、聴力では最初の段階で止まってしまい、音声はその間にも先へ進みます。対策の方向ははっきりしていて、漢字は「意味の入口」としては積極的に使い、「音の入口」としては使わないことです。ピンインと声調をセットにして、音から直接意味に届く経路を、漢字とは別立てで作る必要があります。

聴力が最大の関門になる理由──放送は2回でも、部分ごとに求められる処理が違う

聴力は40問で、4つの部分に分かれています。第1部分が写真選択10問、第2部分が正誤判断10問、第3部分が短い会話10問、第4部分がやや長い会話10問という構成で、放送はいずれも2回流れます。1回しか読まれない試験に比べれば、2回という設定は大きな救済です。

ただし、2回とも同じ聞き方をしていては情報は増えません。1回目で全体の場面と話題をつかみ、2回目では「どこを確認するか」を決めて待ち構える、という役割分担ができて初めて2回という条件が生きてきます。1回目から一語一句を追いかけると、聞き取れなかった1語に意識が引っ張られ、その後の数秒がまるごと抜け落ちます。

そして重要なのは、4つの部分で求められている処理がそれぞれ違うということです。第1部分の写真選択は、動作や物を表す語を1つ特定できれば選べることが多く、聞き取るべき語の種類が絞られています。第2部分の正誤判断は、放送された内容と提示された文が一致するかを判定する形式なので、言い換えられた表現に気づけるか、否定や条件を正しく処理できるかが分かれ目になります。

第3部分と第4部分の会話問題では、会話全体を再現する必要はなく、設問が求めている情報だけを取り出せれば十分です。問われるのはたいてい、話し手の関係、場所、時間、数量、これからどうするつもりかといった項目に限られます。そのため、放送が始まる前に「今回はどの種類の情報を拾うか」という受け皿を用意しておけると、処理の負担がはっきり軽くなります。

日本語話者が聴力でつまずく原因は、語彙が足りないことよりも、音の識別に関わるところに集中しがちです。声調の違いだけで語が変わる組み合わせ(「買う」と「売る」にあたる語のように、子音と母音は同じで声調だけが違う対)、軽声で弱く読まれる音節、三声が連続したときの読み方の変化などは、日本語には対応する現象がないため、意識して訓練しないと自然には身につきません。600語の意味をすべて知っていても、音として識別できなければ聴力40問では点になりません。

書写で問われるのは「手で書ける簡体字」──認識と再生のあいだにある差

書写は10問で、第1部分が語句の並べ替え5問、第2部分が空所に漢字を書き入れる5問という構成です。HSK3級は、この記述式のセクションが加わる最初の級にあたります。マークシートであれば選択肢のなかから正しいものを選べばよいのに対し、書写では白紙の状態から答えを作り出さなければなりません。

第2部分でそのまま問われるのが、「認識できること」と「書けること」の差です。読むときには、前後の文脈と字全体のシルエットが助けてくれるため、細部が曖昧なままでも意味を取れてしまいます。ところが自分の手で書くとなると、点の有無、はねの向き、部首の形まで、記憶から正確に取り出す必要があります。ピンインが手がかりとして示されていても、そこで日本語の漢字を書いてしまえば正解にはなりません。

日本語話者にとって厄介なのは、簡体字の大部分が日本語の漢字と同じか、よく似ていることです。ほとんどが同じであるがゆえに、「たぶんこの字も同じだろう」という処理が働いてしまい、実は違う一部の字を取りこぼします。対策としては、学習中に出会った語のうち日本語と字形が異なる字だけを別立てで書き出し、手で書く回数を確保するのが確実です。全部を書き取りの対象にする必要はなく、差がある字に絞ればよいという点は、むしろ日本語話者の利点です。

文法項目別の負荷──日本語の語順・発想と食い違うところ

HSK3級の文法項目のなかには、日本語の発想からそのまま類推できるものと、まったく類推が効かないものが混在しています。前者に学習時間を使いすぎ、後者を後回しにすると、閲読では通用しても書写第1部分で崩れるという形になります。ここでは、日本語話者にとって負荷が高くなりやすい項目を4つ取り上げます。

補語──動詞の後ろに情報を足すという発想がない

補語は、動詞や形容詞の後ろに置いて意味を補う成分で、3級では様態補語、程度補語、結果補語、方向補語に加えて、可能補語(听得懂・看不见のように「得」「不」を挟む形)と数量補語も範囲に入ります。「听懂」は聞いて理解できた、「看完」は見終わった、というように、動詞の後ろに結果を表す語を貼り付けて一つのまとまりを作ります。日本語には対応する構造がなく、修飾する情報は動詞の前に置くのが基本であるため、「後ろに足す」という発想自体に慣れが必要です。

特に負荷が高いのが、「得」を使う様態補語です。目的語がある文では動詞を繰り返すという規則があり、この繰り返しを落とすと文が成立しません。また、結果補語を否定するときには「不」ではなく「没」を使うという点も、初学段階では見落としやすいところです。補語は書写第1部分の並べ替えで語順が問われる項目でもあるため、意味の理解だけで止めず、語の並びとして覚え直しておく価値があります。

「把」構文と受け身──語順を動かす操作に理由が必要

「把」構文は、目的語を動詞の前に引き出して、その対象をどう処置し、結果どうなったかを述べる形式です。日本語話者がここでつまずくのは、「なぜわざわざ語順を動かすのか」という動機の部分と、動詞の後ろに結果を表す成分を必ず必要とするという制約の部分です。動詞をぽつんと1語だけ置いた形は成立せず、補語や「了」など何らかの成分を伴う必要があります。つまり「把」構文は、前項の補語を理解していることが前提になる項目でもあります。

受け身の「被」も、日本語の癖が出るところです。日本語は受け身を非常に多用する言語なので、その感覚のまま中国語に移すと、不要な「被」を入れてしまいます。中国語の「被」は、望ましくない出来事について使われる傾向があり、日本語の受け身よりも使用場面が狭いという点を押さえておくと、余計な誤用を減らせます。

アスペクト助詞「了・着・过」──時制ではないという理解

「了」「着」「过」は動作の局面を表す標識で、時制を表すものではありません。「了」は完了や変化、「着」は状態の持続、「过」は経験を示します。ここで日本語話者に起きやすいのは、学校で英語を学んだ経験から「了」を過去形と重ねてしまう誤解です。過去のことを述べていても「了」が付かない文はいくらでもあり、逆に未来の出来事について「了」が現れることもあります。

「过」は経験を表すため、否定は「没…过」の形になります。この否定の作り方は、意味を考えれば筋が通っているのですが、暗記として覚えていると本番で取り違えます。アスペクトは閲読第2部分の空所補充で繰り返し問われる項目であり、しかも選択肢が「了・着・过」の3つに絞られている形で出れば、理解しているかどうかがそのまま正誤に出ます。

複文の呼応──片方だけ覚えていても選べない

2つの節をつなぐ複文では、「因为…所以」「虽然…但是」「如果…就」「不但…而且」「一边…一边」「先…然后」といった呼応表現が中心になります。日本語では接続の働きを助詞や接続詞1つで済ませることが多く、前後がセットで現れるという構造に慣れていません。そのため、後ろ半分だけを覚えていて前半が出てこない、という中途半端な状態になりがちです。

呼応表現は、閲読第2部分の空所補充と書写第1部分の並べ替えの両方で出題されます。空所補充では相方の語が文中に見えているので、ペアで覚えていれば即答できます。並べ替えでは、どちらの節が先に来るかという順序まで問われるため、意味と語順の両方を押さえておく必要があります。覚える数自体は多くないので、投じた時間が点になりやすい項目でもあります。

ケンテイラボ収録330問の分野内訳

ここからは、ケンテイラボがHSK3級向けに収録している330問のデータを見ていきます。まず前提として、この分野区分は公式の出題区分(聴力・閲読・書写)とは別の軸で、文法項目別に整理した学習用の区分です。本番の3セクションはいずれも複数の文法項目を横断して出題されるため、セクション単位で復習しても「どの文法が弱いのか」までは分かりません。文法項目ごとに切り分けたほうが、穴の位置を特定しやすくなります。

次の表は、収録330問を発音・数詞・量詞から複文までの分野に分け、それぞれの問題数、全体に占める構成比、分野ごとの解説を示したものです。構成比は本試験の出題比率を表すものではなく、あくまで学習素材としての分量の配分である点にご注意ください。

収録問題8分野の内訳と比重

ケンテイラボではHSK(漢語水平考試)3級の収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している330問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「⑦ 「把」構文・受け身・比較」の44問(全体の13.3%)、 最も少ないのは「⑥ 是〜的・存現文・使役と禁止」の40問(同12.1%)です。上位3分野だけで全体の38.7%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。

文法項目ごとの負荷を収録データで確かめる

同じ330問を、別の角度から集計したのが次の表です。分野ごとに「数値を含む問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しています。数値を含む割合が高い分野は、時刻・日付・年齢・金額・量詞といった具体的な数の扱いが問われている分野で、覚えた形をそのまま当てはめる練習が効きます。平均文字数が長い分野は、1文の中の語の位置関係や、2つの節のつながりを見ないと答えが出ない分野で、文全体を組み立てる力が要求されます。

分野別の学習タイプ(収録330問の集計)

ケンテイラボに収録しているHSK(漢語水平考試)3級の問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。

この試験でもっとも数値の比率が高いのは「① 発音・数詞・量詞」で28%、 もっとも低いのは「⑤ 補語(様態・程度・結果・方向)」で0%でした。 また問題文がもっとも長いのは「④ 介詞・能願動詞・定語と状語」の平均51字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。

  • ① 発音・数詞・量詞40問/数値を含む問題 28%/問題文 平均27
  • ② 疑問文40問/数値を含む問題 10%/問題文 平均33
  • ③ 副詞(程度・時間範囲・語気頻度)42問/数値を含む問題 0%/問題文 平均13
  • ④ 介詞・能願動詞・定語と状語40問/数値を含む問題 10%/問題文 平均51
  • ⑤ 補語(様態・程度・結果・方向)42問/数値を含む問題 0%/問題文 平均33
  • ⑥ 是〜的・存現文・使役と禁止40問/数値を含む問題 5%/問題文 平均31
  • ⑦ 「把」構文・受け身・比較44問/数値を含む問題 5%/問題文 平均40
  • ⑧ アスペクト・複文42問/数値を含む問題 14%/問題文 平均37

数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。

中国語検定3級・4級とはどう違うのか──級の数字は対応しない

中国語学習者からよく出るのが、「HSK3級は中国語検定(中検)でいうと何級くらいか」という質問です。まず前提として、HSKと中検のあいだに公式の換算表は存在しません。運営団体も設計思想も別であるため、「HSK3級=中検◯級」と言い切れる根拠はなく、目安として語られている対応関係も出典によってばらつきます。ここでは対応の数字ではなく、性格の違いとして整理します。

まず級の数え方の向きが違います。HSKは1級から6級へと数字が大きくなるほど上級ですが、中検は準4級・4級・3級・2級・準1級・1級と、数字が小さくなるほど上級です。同じ「3級」という表記でも、体系の中での位置がまったく違うため、数字だけを並べて比べること自体に無理があります。

より本質的なのは、測ろうとしているものの違いです。HSKは全問題が中国語で提示され、母語を介さずに中国語で処理する運用力を測ります。一方の中検は日本語話者向けに設計された試験で、設問が日本語で示され、日本語と中国語のあいだを行き来する力が問われる部分があります。この違いは、日本語話者にとっての体感難易度に直接影響します。

そのため、両者は難易度の高低というより、得意不得意の出方が違う試験だと考えるほうが実態に合います。漢字の下駄が効きやすいHSKの閲読が得意でも、日本語として自然な訳文を作る作業は別の技能です。どちらを受けるかは難易度ではなく目的で選ぶもので、中国語圏での進学や就業を視野に入れるならHSK、日本国内での学習の到達度を測るなら中検、という使い分けが語られることが多いようです。

4級までの距離──3級合格後に何が倍になるのか

HSK3級の対象語彙は600語程度、次の4級は1200語程度が目安とされており、数字の上ではちょうど倍になります。ただし「覚える単語が倍になるだけ」と受け取ると、実際の負荷を見誤ります。増えるのは語数だけではないからです。

3級までの600語は、身の回りの物、日常的な動作、時間や場所といった、具体的で指し示せるものが中心です。これに対して語彙が広がる段階では、意見・理由・感想・比較・仮定といった抽象度の高い内容を述べる語が増えていきます。抽象的な内容を述べようとすると、文は自然に長くなり、複文の使用頻度が上がり、動作の結果や程度を細かく表す補語の出番も増えます。つまり、語彙が倍になると、文法項目にかかる負荷も連動して重くなるということです。

この見通しから言えるのは、3級の段階で補語・「把」構文・アスペクト・複文を曖昧なまま通過すると、それらは必ず次の段階で戻ってくるということです。3級の合格ラインは合計6割なので、これらが弱いままでも閲読の貯金で合格すること自体は起こり得ます。合格をゴールではなく通過点と考えるなら、3級のうちに文法の穴を埋めておくほうが結果的に近道です。

収録330問を到達度の測定に使う

HSKは合格率が公表されていないため、外形的な数字から自分の位置を知ることができません。そのぶん、自分の解答データから到達度を測る作業の重要性が上がります。ケンテイラボに収録している330問は、分野別に整理されているので、正答率の谷がどの文法項目にあるのかを可視化する用途に向いています。

使い方としては、次のような手順が現実的です。

  • 最初に全分野を一巡し、正答率が低い分野を2つか3つ特定する。この段階では点数の絶対値ではなく、分野間の落差だけを見る
  • 落差の大きい分野が補語・「把」構文・アスペクトのいずれかであれば、書写第1部分の並べ替えが弱点になっている可能性が高いので、語順のルールとして整理し直す
  • 選択肢を選んで正解した問題も、答えを見ずに中国語の文をそのまま手で書き写してみる。書写第2部分で問われる字形の弱点は、この作業でしか見つからない
  • 正答率が高い分野については、文字で解いているのか音でも処理できるのかを分けて確認する。閲読の得点は音の力を保証しない

特に3つ目と4つ目は、日本語話者にとって重要です。文字で解ける問題を文字だけで解き続けている限り、聴力と書写の弱点は表に出てきません。同じ問題を「読んで解く」「音として聞き取れるか確かめる」「手で書けるか確かめる」という3つの使い方に分けると、1問から取れる情報量が大きく変わります。

HSK3級の難易度は、日本語話者にとって「全体としてやさしい/難しい」で語れるものではありません。閲読では他の母語話者より前に進んでいて、聴力と書写では別のスタートラインに立っている、という凸凹の形をしています。合計300点満点180点という合計判定は、その凸凹をある程度まで吸収してくれる仕組みです。自分の凸凹がどこにあるのかを早い段階で測り、有利な部分を確実に取り切り、干渉が起きている部分に時間を配る。この配分ができれば、3級は十分に射程に入る試験です。

実際に問題を解いて知識を定着させよう

ケンテイラボではHSK(漢語水平考試)3級の問題を無料で練習できます。

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