TOPIK(韓国語能力試験)は、大韓民国教育部・国立国際教育院が主催する韓国語の公的資格試験です。日本国内では公益財団法人韓国教育財団が主管し、4月・7月・10月の年3回実施されています。そのうち初級にあたるTOPIK Iは、聞き取り30問と読解40問の計70問を、すべて4肢選択のマークシートで解く形式です。
この試験を対策するうえで最初に理解しておきたいのは、TOPIK Iが「合格・不合格」を出す試験ではないということです。受験時に級を選ぶわけではなく、200点満点の総合得点によって1級が認定されるのか、2級が認定されるのか、あるいは級が付かないのかが後から決まります。つまり受験者側がやるべきことは「合格ラインを超える」ではなく、「自分が欲しい級の点数帯まで積み上げる」という設計です。
本記事では、目標とする級から逆算してTOPIK Iの学習を組み立てる方法を解説します。出題形式が持つ意味、初級の学習者が必ず通る4つの関門、そして当サイト(ケンテイラボ)に収録している対策問題の分野構成をどう使うかまでを順に見ていきます。
「1級を受験する」という出願はできない — 級は結果として付いてくる
TOPIKの出願で選ぶのは、TOPIK IかTOPIK IIかという区分だけです。TOPIK Iの中で「1級を受ける」「2級を受ける」と申し込むことはできません。受験するのは全員が同じ問題で、判定は試験後に総合得点で行われます。200点満点のうち80点から139点であれば1級、140点以上であれば2級が認定され、80点未満は級の認定なしとなります。
ここで重要なのは、聞き取り100点・読解100点という配点が同じであり、しかも領域ごとの足切りがなく総合得点で判定される点です。聞き取りが苦手でも読解で挽回でき、逆に会話には慣れているが文字を読むのが遅いという人は聞き取りで稼げます。得意な側に寄せて点を作ることが構造的に許されている試験だといえます。
- 出題:聞き取り30問(100点)+読解40問(100点)の計70問・200点満点
- 形式:すべて4肢選択のマークシート方式。作文・口述はない
- 試験時間:100分(10時から11時40分の1教時のみ・休憩なし)
- 判定:総合得点で80点以上139点までが1級、140点以上が2級。80点未満は級の認定なし
- 実施:年3回(4月・7月・10月)
- 受験料:5,000円(税込/日本国内・公益財団法人韓国教育財団)
- 主催:大韓民国教育部・国立国際教育院/日本国内の主管:公益財団法人 韓国教育財団
- 水準の目安:CEFRでは1級がA1、2級がA2に相当
なお、TOPIK I単独の、あるいは1級・2級それぞれの級取得率は公式には公表されていません(韓国教育部は試験全体の応試者数と合格者数を公開していますが、TOPIK IとTOPIK IIを分けた内訳はありません)。インターネット上ではさまざまな数字が語られていますが、出典の確認できない推定値です。本記事でも合格率については断定的な数値を示さず、点数のラインそのものから逆算する形で学習量を考えていきます。
80点と140点 — 目標にする級で必要な学習量は大きく変わる
1級の認定に必要な80点は、200点満点に対して40%です。2級の140点は70%にあたります。この30ポイントの差は、感覚的な「少し頑張る」では埋まりません。40%というのは、聞き取りでも読解でも半分以上落としてよい水準で、確実に取れる問題だけを拾っても届く可能性があります。一方70%は、基礎語彙と基本文法にほとんど穴がない状態を要求されます。
したがって最初に決めるべきなのは「どちらの級が目的に対して必要か」です。韓国語学習を始めた記念として到達度を記録に残したい、学習を続けるための区切りが欲しい、という目的であれば1級で十分に機能します。一方、留学要件や履歴書での提示、あるいはTOPIK IIへの足がかりとして意味を持たせたいのであれば、2級を取りに行くべきです。
- 1級(80点)を目標にする場合:ハングルの読みと基礎語彙、基本の助詞・現在形の丁寧語まで固めれば射程に入る
- 2級(140点)を目標にする場合:過去形・尊敬形・接続語尾・不規則活用まで含め、初級文法をひと通り運用できる状態が必要
- どちらの場合も、時間を自分で管理できる読解40問を取りこぼさないことが得点の土台になる
- 2級を狙うなら、読解でほぼ落とさないうえで聞き取りでも半分以上を確保する、という配分イメージを持っておく
現実的な戦略として有効なのは「2級の学習内容で準備して、結果として1級でも構わないと考えておく」ことです。総合得点方式である以上、上を狙った学習が下の級を取りこぼす原因になることはありません。逆に1級ぎりぎりを狙う学習をしていると、当日の聞き取りの調子ひとつで級の認定なしに落ちる余地が残ります。
問われるのは「聞く」と「読む」だけ — 書けなくても解ける試験の設計
TOPIK Iには作文も口述もありません。求められるのは、聞こえた音や目に入った文字を認識して、4つの選択肢から正しいものを選ぶ能力だけです。これは学習設計に大きな意味を持ちます。単語をハングルで正確に書けなくても、見て意味が分かれば得点になります。文を組み立てて話せなくても、正しい形を選べれば得点になります。
この性質を踏まえると、初期の学習では「書く練習」に時間を大量に投じる必要はありません。もちろん手を動かして書くことは記憶の定着に有効ですが、それはあくまで覚えるための手段であって、試験で直接測られる能力ではないという整理ができます。限られた学習時間を、語彙の認識速度と文法形の判別に集中させるほうが得点効率は上がります。
一方で、聞き取りと読解では時間の性質がまったく違います。聞き取りは音声の進行に従うため、1問に立ち止まることができません。読解は自分のペースで進められる代わりに、時間配分の責任がすべて受験者側にあります。なお、聞き取りと読解それぞれに何分が割り当てられているかについては、公式が1教時100分としてのみ公表しており、内訳は明示されていません。市販の対策書などで示される時間はあくまで目安として扱い、模擬演習では「音声が終わってから残り時間で読解40問を処理する」という流れ自体に慣れておくのが安全です。
ハングルは「読める」で止めない — 自動化しないと時間が足りなくなる
ハングルは組み合わせの規則がはっきりしているため、文字そのものを覚える段階は比較的短期間で越えられます。しかし試験対策として問題になるのは、覚えたかどうかではなく、読む速度が意味の処理に追いつくかどうかです。1文字ずつ子音と母音を分解して読み上げている状態では、読解40問を時間内に処理しきれません。
特に負荷が高いのがパッチム(文字の下に付く終声)です。パッチムは表記と実際の発音が一致しないことが多く、後ろに続く音によって形が変わります。この音の変化は聞き取りでそのまま失点につながります。知っている単語なのに音として認識できず聞き逃す、という事態が起きるからです。
- 連音化:パッチムの音が次の母音に移って読まれる。表記どおりに読むと聞き取りで一致しなくなる代表例
- 濃音化・鼻音化:特定の並びでパッチムや次の子音の音が変わる。規則を知らないと別の単語に聞こえる
- 似た形の母音・子音の判別:目で見て一瞬で区別できるまで反復する
- 音読の習慣化:目で読むだけでなく声に出すことで、読解の速度と聞き取りの認識が同時に育つ
学習の順序としては、文字を覚えたらすぐに音の変化まで含めて処理する段階へ進むことをおすすめします。文字の暗記が終わってから語彙、語彙が終わってから発音、と分けてしまうと、聞き取りの対策が最後まで先送りされます。単語を覚えるときに必ず音とセットにしておけば、語彙学習がそのまま聞き取り対策を兼ねます。
語彙は五十音順ではなく「場面」で束ねて覚える
TOPIK Iで問われる語彙は、日常生活の場面に強く集中しています。家族の話、買い物、食事、道案内、交通機関、天気や体調といった話題が繰り返し登場し、抽象的な議論や専門的な話題はほとんど出てきません。この偏りは学習の設計にそのまま利用できます。単語帳を頭から順に覚えるより、場面ごとに関連語をまとめて覚えるほうが、実際の出題の形に近いからです。
たとえば「買い物」という場面を1つ立てると、値段の言い方、助数詞、店員と客の定型表現、金額の桁の読み方が一度に必要になります。これらは別々に覚えると相互に結び付かず、聞き取りの対話でどれか1つが欠けただけで答えを選べなくなります。逆に場面単位で束ねておけば、対話の冒頭で場面を特定した時点で、そのあと登場する語彙の候補が絞れます。
- 家族・人・住まい:家族の呼称、人を数える言い方、住まいを説明する表現。呼称が話し手との関係で変わる点に注意
- 生活・持ち物・買い物:値段と数量。漢数詞と固有数詞の二系統をどう使い分けるかが最大の関門
- 場所・建物・空間:施設名と位置を表す名詞。案内表示や営業時間の掲示を読む問題に直結する
- 食べる:料理名と味を表す形容詞、注文の定型表現。メニューを読む実用文にもつながる
- 学校・道具・仕事:時間割や予定を述べる場面。時間・曜日の言い方が同時に必要になる
- 職業・交通・旅行:交通手段と乗り降りの動詞。目的地や手段を選ぶ聞き取りの定番
- 趣味・自然・動物:好き嫌いや得意不得意を述べる表現。自己紹介文の読解に頻出
- 心身・天気・感情:体調を訴える表現と天気、気持ちを表す形容詞
数の扱いだけは特に注意が必要です。韓国語には漢数詞と固有数詞の二系統があり、値段は漢数詞、個数は固有数詞というように使い分けます。日本語話者にとっては仕組み自体は理解しやすいものの、聞き取りの速度では判断が追いつかないことが多い部分です。金額が万の単位で動く表示にも慣れておくと、数字を問う聞き取りで落としにくくなります。
助詞と語尾 — 日本語に似ているのに一対一では対応しない部分
韓国語は語順が日本語とほぼ同じで、助詞を使って文の要素を示す点も共通しています。この類似は日本語話者にとって大きな有利ですが、同時に落とし穴でもあります。助詞の対応が一対一ではないため、日本語の助詞をそのまま置き換えると誤りになる場面があるからです。
- 이/가と은/는:日本語の「が」と「は」に近いが、対比や話題の提示の感覚が完全には重ならない
- 에と에서:日本語の「に」と「で」に一対一で対応しない。移動の到達点は에、動作が行われる場所は에서と用法で覚え直す
- 「〜に乗る」は을/를 타다:日本語では「に」だが、韓国語では対格をとる
- 「〜が好きだ」は을/를 좋아하다:これも日本語の「が」に引きずられると助詞を間違える
- 手段を表す(으)로:直前の語のパッチムの有無で形が変わる
語尾については、丁寧さの段階を整理しておくことが軸になります。初級で必要になるのは、丁寧な言い方である-아요/어요、過去を表す-았/었-、そして尊敬を表す-(으)시-の3つです。この3つが組み合わさって語形が変化するため、単独で覚えても文中では認識できません。組み合わせた形をまとめて音で覚えるのが現実的です。
否定の形も早い段階で固めておきたい部分です。動詞の前に置く形と語尾で表す形の2通りがあり、さらに「しない」と「できない」で使う語が変わります。否定表現は聞き逃すと意味が正反対になるため、聞き取りでの失点が大きい項目です。肯定と否定をペアにして音で聞き分ける練習を組み込んでおくと安全です。
用言の活用 — パッチムの有無で形が変わるという最初の関門
韓国語の動詞・形容詞は、辞書に載っている形のままでは文の中に現れません。語幹に語尾を付けて活用させる必要があり、その付け方が語幹末にパッチムがあるかどうかで変わります。この「条件によって形が分岐する」という仕組みが、多くの学習者にとって最初の関門になります。
厄介なのは、規則どおりに活用しない用言が初級の基本語彙の中に多数含まれていることです。よく使う形容詞ほど不規則な活用をする傾向があり、辞書形と活用形が見た目でつながらないものもあります。たとえば「辛い」を意味する맵다は매워요という形になり、辞書形しか覚えていないと文中で出会っても同じ語だと気付けません。
- 語幹末のパッチムの有無で、付ける語尾の形が変わるという基本の分岐をまず体に入れる
- 不規則活用は種類ごとにまとめず、頻出する単語から辞書形と活用形をセットで覚える
- 活用形は書いて覚えるだけでなく、必ず音でも覚える。聞き取りで出会うのは活用形のほうである
- 接続語尾(理由・逆接など)は文が長くなると崩れやすいため、例文ごと丸暗記して型を蓄える
活用の学習では、表を作って網羅的に埋めるより、出会った単語をその都度活用形で記録していくほうが結果的に速く定着します。TOPIK Iの範囲で登場する用言は数が限られており、問題演習を繰り返すうちに同じ語に何度も出会うためです。表を完成させることを目標にすると、試験に出ない形にまで時間を使ってしまいます。
読解で繰り返し出る題材の型を先に知っておく
TOPIK Iの読解は、長文をじっくり読ませる形式ではありません。標識や案内表示、広告、メニュー、時刻表といった実用的な短い文と、自己紹介や日記のような短文が中心です。これらは題材の型が繰り返されるため、型ごとに「どこを見れば答えが出るか」を先に把握しておくと処理速度が上がります。
- 標識・掲示の型:何の場所か、何が禁止・許可されているかを問う。単語1つで判断できることが多い
- 案内・営業時間の型:曜日と時刻の表記を拾えば答えが出る。全文を読む必要はない
- 広告・値札の型:品名と価格、割引の条件が問われる。数字と単位に注目する
- 短文・自己紹介の型:内容一致を問う。主語が誰か、いつの話かを最初に確定させる
- 順序を問う型:文をつなぐ語(そして、しかし、だからにあたる語)を手がかりに並べる
読解で意識したいのは、すべての単語を理解しなくても正解にたどり着ける問題が相当数あるという点です。知らない単語で立ち止まるのではなく、問いが何を尋ねているかを先に読み、必要な情報だけを本文から拾う進め方に切り替えると、処理できる問題数が増えます。総合得点で級が決まる以上、時間切れで読解の後半を空欄にすることが最も避けたい失点の形です。
収録問題の分野内訳から見える、学習範囲の広がり方
以下は、ケンテイラボに収録しているTOPIK I対策問題の分野別の内訳です。ここでの分野は、語彙と場面のテーマによって学習しやすいように区切った当サイト独自の区分であり、公式の出題区分(聞き取り・読解)とは別の軸である点にご注意ください。どの場面の語彙がどれくらいの量を占めるのかを把握する目安として使ってください。
収録問題8分野の内訳と比重
ケンテイラボでは韓国語能力試験 TOPIK Iの収録問題を8の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している314問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「① 家族・人・住まい」の40問(全体の12.7%)、 最も少ないのは「⑧ 心身・天気・感情」の34問(同10.8%)です。上位3分野だけで全体の38.1%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
分野の数が8つに分かれ、それぞれがほぼ同じ規模になっていることからも分かるとおり、TOPIK Iの語彙は特定の話題に偏って集中しているわけではなく、日常生活の各場面に均等に広がっています。特定の分野だけを深掘りしても得点は伸びにくく、全分野を薄く早く一巡してから密度を上げるほうが、総合得点方式の試験とは相性が良い進め方です。
分野別の学習負荷 — 数字が絡む分野はどこか
次の表は、収録している問題そのものを集計したものです。分野ごとに「数値を含む問題の割合」と「問題文の平均文字数」を示しています。数値を含む問題の割合が高い分野は暗記した数の運用が問われる領域、平均文字数が長い分野は文全体を読んで判断する必要がある領域と読み替えられます。
分野別の学習タイプ(収録314問の集計)
ケンテイラボに収録している韓国語能力試験 TOPIK Iの問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。
この試験でもっとも数値の比率が高いのは「④ 食べる」で13%、 もっとも低いのは「⑦ 趣味・自然・動物」で0%でした。 また問題文がもっとも長いのは「③ 場所・建物・空間」の平均35字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。
- ① 家族・人・住まい:40問/数値を含む問題 3%/問題文 平均28字
- ② 生活・持ち物・買い物:40問/数値を含む問題 0%/問題文 平均25字
- ③ 場所・建物・空間:40問/数値を含む問題 0%/問題文 平均35字
- ④ 食べる:40問/数値を含む問題 13%/問題文 平均14字
- ⑤ 学校・道具・仕事:40問/数値を含む問題 0%/問題文 平均27字
- ⑥ 職業・交通・旅行:40問/数値を含む問題 0%/問題文 平均25字
- ⑦ 趣味・自然・動物:40問/数値を含む問題 0%/問題文 平均25字
- ⑧ 心身・天気・感情:34問/数値を含む問題 3%/問題文 平均27字
数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。
数字が絡む分野は、知識としては単純でも本番での処理速度が落ちやすい領域です。特に値段・個数・時刻は、漢数詞と固有数詞の使い分けが重なるため、聞き取りで一瞬迷うと次の問題に影響します。数を扱う問題だけを集中的に反復して、判断を考えずに出せる状態にしておくと、当日の失点を抑えられます。
目標級から逆算する学習スケジュールの組み方
ここでは学習の出発点別に2つのモデルを示します。必要な期間は学習に充てられる時間や韓国語との接触量で大きく変わるため、以下はあくまで進め方の順序を示す目安であり、この期間で必ず到達できるという性質のものではありません。自分の進み具合に合わせて各段階の長さを調整してください。
パターン1:ハングルから始める場合
文字を覚えるところから始める場合、最初の山は「読む速度が意味の処理に追いつくまで」です。ここを越えないまま語彙の暗記に進むと、覚えたはずの単語が本文の中で認識できないという状態が続きます。文字と音の段階に思い切って時間を使うほうが、結果的に全体は短くなります。
- 第1段階:ハングルの読み書きと音の変化。単語を覚えるときは必ず音とセットにする
- 第2段階:場面別の基礎語彙を一巡。1つの場面につき関連語をまとめて入れていく
- 第3段階:基本の助詞と丁寧な言い方、現在形の運用。ここまでで1級の水準が視野に入る
- 第4段階:過去形・尊敬形・不規則活用・接続語尾。2級を狙うならこの段階が本番
- 第5段階:問題演習で全分野を反復し、時間内に読解を解ききる感覚を作る
この進め方では、第3段階を終えた時点で一度全分野の問題を通しで解いてみることをおすすめします。1級の水準に届いているかどうかがそこで見え、残りの時間で2級まで押し上げるかを判断できます。目標級を早い段階で固定せず、途中の到達度で決め直せるのが総合得点方式の利点です。
パターン2:ハングルは読めるが語彙が足りない場合
文字と基本的な発音はすでに身に付いていて、簡単な挨拶や自己紹介はできるという段階からの場合、課題は語彙の量と文法形の判別に絞られます。この状態では、教材を最初から順に進めるより、分野別の問題演習で穴を先に見つけるほうが効率的です。
- 第1段階:全分野の問題を一度通しで解き、正答率の低い分野を特定する
- 第2段階:弱い分野の語彙を場面ごとにまとめて補充する。数を扱う分野は優先的に
- 第3段階:助詞の使い分けと活用の分岐を、間違えた問題から逆算して埋める
- 第4段階:聞き取り対策として音読と音声の反復を日課に組み込む
- 第5段階:本番と同じ長さで通し演習を行い、読解を最後まで解ききれるか確認する
この出発点であれば、2級を目標に置くのが自然です。読解で安定して得点できる状態を作ったうえで、聞き取りの精度を上げていけば140点のラインは現実的な射程に入ります。逆に、聞き取りの対策を後回しにしたまま語彙だけを増やしていくと、読解では取れるのに総合得点が伸びないという停滞が起きやすくなります。
TOPIK IIとの距離 — 作文が加わると何が変わるのか
TOPIK Iの上位にあたるTOPIK IIでは、聞き取りと読解に加えて書き取りが課されます。この違いは単に領域が1つ増えるということ以上の意味を持ちます。TOPIK Iで求められていたのは、聞こえた音や読んだ文を認識して選ぶ能力でしたが、書き取りでは自分で語を選び、正しい形に活用させ、文としてつなげる能力が問われます。認識から産出への転換です。
この転換で最初につまずくのが、TOPIK Iでは選べれば済んでいた活用と助詞です。選択肢の中から正しい形を見分けるのと、白紙の状態から正しい形を自分で作るのとでは、要求される定着の深さがまったく違います。TOPIK IIへ進む予定があるなら、TOPIK Iの学習段階から「書ける」水準を意識しておくと、あとの接続が滑らかになります。
具体的には、覚えた文を音読するだけでなく、時々は何も見ずに書き出してみる習慣を持つことです。TOPIK Iの試験そのものには直接必要のない作業ですが、活用の定着を確認する手段としては優秀で、しかも書き出せるようになった形は聞き取りでも認識しやすくなります。TOPIK Iで2級まで取ったうえで上を目指すのであれば、この投資は無駄になりません。
収録314問・8分野をどう使い切るか
ケンテイラボにはTOPIK I対策の問題を314問、8つの分野に分けて収録しています。すべて4肢選択で、解説を付けています。分野は場面テーマで区切られているため、語彙の学習と問題演習を分けずに進められる構成になっています。
- 最初の一巡は分野を絞らず全分野を通す。どの場面が弱いかを先に把握する
- 二巡目は正答率の低かった分野だけを繰り返す。分野単位で回せる利点をここで使う
- 解説に出てくる活用形や助詞は、その場でノートに集めて自分用の要点リストにする
- 間違えた問題は語彙が原因か文法が原因かを分けて記録する。対策の内容が変わるため
- 直前期は全分野を通しで解き、時間内に最後まで到達できるかを確認する
TOPIK Iは、落ちるか受かるかではなく、どこまで積み上げたかがそのまま級として記録される試験です。80点に届けば1級、140点に届けば2級という2つのラインが最初から分かっている以上、学習は「どこまで積むか」を自分で決めるところから始まります。目標級を先に決め、そこから必要な範囲を逆算する。この順序で組み立てられれば、初級の学習であっても迷わずに進められるはずです。