2026/09/10

乙種7類で最下位、甲種第3類より低い乙種第3類の合格率

令和7年度は26.8%で、乙種の7つの類のなかで最も低い数字でした。受験資格の要る甲種第3類が31.6%なので上下が逆転しています。何がこの差を作っているのかを見ていきます。

執筆:ケンテイラボ編集部(資格試験対策アプリ開発・運営)

消防設備士の試験は類ごとに合格率が公表されています。乙種第3類は令和7年度が受験者965人・合格者259人で26.8%でした。令和6年度は1,193人中282人で23.6%、令和5年度は1,144人中253人で22.1%です。

この数字は、乙種の7つの類のなかで3年連続の最下位です。しかも受験資格の要る甲種第3類のほうが高いという逆転も起きています。本記事では、その理由になりそうな要素を制度と出題の両面から分解します。

令和7年度の類別合格率を並べてみる

令和7年度(令和7年4月から令和8年3月)の乙種の類別合格率は次のとおりです。

  • 乙種第1類 28.5%(受験2,048人・合格584人)
  • 乙種第2類 29.7%(受験790人・合格235人)
  • 乙種第3類 26.8%(受験965人・合格259人)
  • 乙種第4類 34.0%(受験8,047人・合格2,736人)
  • 乙種第5類 41.2%(受験1,168人・合格481人)
  • 乙種第6類 35.6%(受験32,400人・合格11,541人)
  • 乙種第7類 64.7%(受験5,822人・合格3,766人)

第7類が64.7%と突出して高く、第5類・第6類・第4類が30〜40%台、第1類・第2類・第3類が20%台後半という並びです。第3類はこの下位グループのなかでも最も低くなっています。

同じ令和7年度の甲種第3類は、受験者4,353人・合格者1,375人で31.6%でした。乙種第3類より4.8ポイント高い数字です。甲種は機械・電気などの学科の卒業や乙種免状交付後2年以上の整備経験といった受験資格が必要で、乙種は誰でも受けられます。誰でも受けられる側のほうが数字が悪い、という形になっています。

受験資格の有無が、そのまま受験者の顔ぶれの差になる

甲種第3類を受けるには、機械・電気・工業化学・土木・建築に関する学科の卒業、乙種免状交付後2年以上の整備経験、電気工事士や電気主任技術者・技術士といった要件のいずれかが必要です(消防法第17条の8第4項)。

つまり甲種の受験者は、その時点で関連分野の学歴か実務経験を持っています。一方、乙種第3類は学歴・実務経験・年齢・国籍のいずれにも制限がありません。前提知識のばらつきが乙種のほうが大きくなるのは自然です。

合格率は「試験の難しさ」だけでなく「誰が受けているか」で動きます。乙種第3類の26.8%を、甲種第3類の31.6%より難しい試験だと読むのは正確ではありません。読み取れるのは、受験者の準備の水準に差がある可能性のほうです。

1つの免状で3つの設備を扱うことの負荷

第3類が扱うのは不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備の3つです。1つの類のなかに基準の違う3設備が同居しているので、覚えるべき数値が枝分かれします。

たとえば移動式のホース接続口までの水平距離は、不活性ガス消火設備が15メートル以下(消防法施行令第16条第三号)、ハロゲン化物消火設備が20メートル以下(同第17条第二号)、粉末消火設備が15メートル以下(同第18条第二号)です。3つのうち1つだけ違います。

一方で噴射ヘッドについては、ハロゲン化物も粉末も「不活性ガス消火設備の例による」と条文で参照されています(令第17条第一号、令第18条第一号)。共通で処理される部分と個別に分かれる部分が入り組んでいて、どちらなのかを都度確認しないと混ざります。

比較として、乙種第6類は消火器、乙種第7類は漏電火災警報器と、対象が単一です。合格率が高い類ほど対象設備の範囲が狭い、という傾向は読み取れます。

配管が業務範囲に入るぶん、問われる範囲が広い

消防法施行令第36条の2第1項は、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・屋外消火栓設備については電源・水源・配管の部分を除くと定めています。一方、不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の3設備については、除かれるのは電源の部分だけです。

第3類では配管が消防設備士の独占業務に含まれます。センターが公開している実技の過去問題に、粉末消火設備(全域放出方式)の配管構成がトーナメント形式である理由を記述で問うものがあるのは、この扱いと対応しています。

業務範囲が広いということは、問われる範囲も広いということです。第1類との比較で、配管の扱いが試験内容の差として出てきます。

実技だけは免除がなく、必ず60%が要る

合格基準は、筆記が各科目40%以上かつ全体で60%以上、加えて実技で60%以上です。科目免除を受けた場合は、免除された科目を除いた残りで判定されます。

乙種第3類の科目免除は6パターンありますが、そのすべてで実技(鑑別等5問)は免除されません。センターの一覧表では、乙種第1類・第2類・第3類の実技欄が縦書きで「免除なし」と潰されています。

他の類では扱いが違います。乙種第4類・第7類は電気工事士の免状で鑑別等が1問免除になり、乙種第5類・第6類では一定の消防団員が実技を全部免除されます。実技に逃げ道がないという点でも、第3類は第1類・第2類と同じグループに置かれています。

鑑別等は写真・イラスト・図面等による記述式です。四肢択一の筆記と違い、部分的に覚えているだけでは書けません。5問中3問を取れないと止まる、という条件は数字以上に重く感じられるはずです。

公式の過去問が4問しか出ていない

消防試験研究センターは受験用のテキストや問題集を発行していません。公式が受験参考として出しているのは「過去に出題された問題」のPDFだけで、乙種は全類まとめて1本です。そこに乙種第3類として載っているのは、類別法令1問・規格1問・構造機能1問と実技の鑑別等1問の計4問です。

令和8年6月更新版に載るのも令和7年度以前に出題されたものの一部にとどまります。試験問題の著作権はセンターが保有していて、教育目的(非営利)以外の二次利用は禁止されています。

受験者数の多い類であれば、市販の問題集や受験者の情報が蓄積されます。乙種第3類の令和7年度の受験者は965人で、乙種第6類の32,400人の33分の1です。情報の量そのものが少ない類だ、という点は準備のしにくさに直結します。

半年に1度しか回ってこない受験の機会

試験は消防法第17条の8第3項により「毎年一回以上、都道府県知事が行う」とされ、実際の回数と時期は都道府県ごとに違います。東京(中央試験センター)の令和8年度日程では、乙種第3類は乙種第1・2・5類と同じ枠にまとめられ、令和8年5月31日と令和8年10月12日の年2回だけです。

同じ東京で乙種第6類は年9回、乙種第4類・第7類は年5回、甲種第4類は年11回実施されます。受験機会の差はかなり大きいと言えます。

回数が少ないと、1回の受験の重みが上がります。「とりあえず受けてみて感触を掴む」という進め方が取りにくく、次の機会まで半年空く可能性があります。また同一試験日に違う種類の試験は受けられないため、乙種第3類を受ける日は同じ枠の第1類・第2類・第5類を諦めることになります。

数字をどう受け止めるか

ここまでを整理すると、乙種第3類の合格率が低いことには複数の要因が重なっています。受験資格がなく受験者の前提知識がばらつくこと、1つの免状で3設備を扱うため覚える数値が枝分かれすること、配管まで業務範囲に入ること、実技に免除がないこと、公開されている過去問と受験者情報が少ないこと、受験機会が限られること。

逆に言えば、これらはいずれも準備の段階で対処できる要素でもあります。3設備を項目ごとに横並びで整理し、実技の記述形式に慣れ、限られた公開問題から問われ方を把握しておく。合格率26.8%という数字は、そこまでやった人の割合ではありません。

ケンテイラボには乙種第3類の対策問題を559問収録しています。分野別に解けるので、3設備の数値が混ざっていないかを確認する用途に使えます。実技の鑑別等については、別記事で3設備の見分け方を扱います。

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