2026/09/07

相続法改正はいつ施行されたか|相続アドバイザー3級の年表

かつては正解だった選択肢が、施行日をまたいだ瞬間に誤りへ変わります。相続土地国庫帰属、遺産分割の10年ルール、相続登記の義務化、生前贈与加算の延長までを施行日の順に並べた年表です。

執筆:ケンテイラボ編集部(資格試験対策アプリ開発・運営)

相続分野の学習でつまずきやすいのが、制度が新しくなった時期の把握です。相続に関する法律は2018年の民法(相続法)改正以降、施行日をずらしながら次々と姿を変えてきました。改正前の知識のまま解くと、かつては正解だった選択肢がそのまま誤りになります。

出題は民法(相続法)と相続税法の二本柱で、そのどちらにも近年の改正が入り込んでいます。制度名だけを覚えても「いつから適用されるのか」で迷うため、施行日をセットで持っておく必要があります。この記事では主な改正を施行日順に並べ、改正前の姿とあわせて整理します。なお、扱うのは一般的な制度の説明であり、個別の相続や税額の判断は専門家への確認が前提になります。

2018年の民法(相続法)改正は施行日が分かれている

相続法の大きな見直しは一度に施行されたわけではなく、内容ごとに時期がずれています。同じ「改正」でも適用開始日が違うので、まとめて覚えると取り違えのもとになります。

自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日)

改正前は、自筆証書遺言は本文も財産目録もすべて手書きでなければなりませんでした。2019年1月13日からは、遺言書に添付する財産目録についてパソコンで作成したり通帳の写しを添付したりできます。ただし目録の各頁に署名押印が必要です。緩和されたのは目録だけで、本文の自書要件は残っている点が問われます。

預貯金の払戻し制度と遺留分の金銭債権化(2019年7月1日)

改正前は、遺産分割が終わるまで相続人が単独で被相続人の預貯金を引き出すことは原則できませんでした。2019年7月1日施行の払戻し制度により、各共同相続人は口座ごとに「相続開始時の預貯金債権の額×3分の1×その相続人の法定相続分」まで、同一の金融機関につき150万円を限度として単独で払い戻せます。150万円の上限が口座単位ではなく金融機関単位である点が引っかけになりやすい部分です。

同じ日に遺留分の扱いも変わりました。かつての遺留分減殺請求は目的物そのものを取り戻す権利で、不動産が共有状態になる問題がありました。現在は遺留分侵害額請求として金銭債権に一本化されています。

配偶者居住権(2020年4月1日)

改正前は、配偶者が住み慣れた家に住み続けることを確実にするには建物の所有権を取得するのが実質的な方法で、評価額の高い自宅を取得すると、その分だけ預貯金など他の財産を受け取りにくくなっていました。2020年4月1日施行の配偶者居住権は、居住を続ける権利と所有権を切り分ける仕組みです。遺産分割や遺贈によって設定できること、登記が対抗要件になることが出題の中心です。

法務局の自筆証書遺言書保管制度(2020年7月10日)

自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、紛失や改変の懸念がありました。2020年7月10日に始まった法務局の保管制度を使えば遺言書を預けることができ、家庭裁判所の検認が不要になります。「自筆証書遺言は必ず検認が必要」という記述は、この制度を使った場合には当てはまりません。方式緩和と保管制度は施行日が別である点にも注意します。

相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日)

改正前は、相続で取得した土地が不要でも手放す手段が乏しく、放置された土地が増える一因になっていました。2023年4月27日施行のこの制度により、相続等で取得した土地を一定の要件のもとで国に引き取ってもらえます。誰でも自由に使えるわけではなく、建物がある土地や担保権が設定された土地は却下されるなど要件が細かい点、審査手数料と負担金の納付が必要な点が問われます。

遺産分割における特別受益・寄与分の10年ルール(2023年4月1日)

改正前は遺産分割に期限がなく、特別受益や寄与分を何十年後でも主張できました。2023年4月1日施行の民法904条の3により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割は、原則として法定相続分(または指定相続分)によることになりました。遺産分割そのものができなくなるのではなく、具体的相続分を主張できる期間が区切られたという理解が要点です。このルールは施行前に開始した相続にも適用されますが、経過措置があり、相続開始から10年を経過する時か2028年4月1日のいずれか遅い時までに家庭裁判所へ遺産分割の請求をすれば、具体的相続分による分割ができます。また10年経過前に家庭裁判所へ遺産分割の請求をしていた場合など、条文上の例外もあります。

相続登記の義務化と相続人申告登記(2024年4月1日)

改正前、相続による不動産の名義変更は任意で、放置しても罰則はありませんでした。2024年4月1日からは相続登記が義務化され、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象になります。ここで落としやすいのが経過措置です。義務は施行後に発生した相続だけの話ではなく、2024年4月1日より前に相続したことを知っていた不動産でも、相続登記がされていないものは義務化の対象になります。その場合の期限は2027年3月31日までです。

あわせて、簡易な履行手段として相続人申告登記が設けられました。遺産分割がまとまらない段階でも、自分が相続人である旨を申し出ることで義務を果たせる仕組みです。3年という期間と10万円以下という過料の額は、数値を入れ替えた選択肢が作られやすいところです。

生前贈与加算が段階的に7年へ(2024年1月1日以後の贈与)

暦年課税で贈与された財産のうち、相続開始前の一定期間分は相続財産に加算されます。この期間が3年から7年に延長されました。対象は2024年1月1日以後の贈与で、移行は段階的です。相続開始日が2026年12月31日以前なら従来どおり3年以内、2031年1月1日以後の相続で7年以内となります。延長された期間に取得した財産については、合計100万円まで加算されません。

相続時精算課税に基礎控除が新設(2024年1月1日以後)

改正前の相続時精算課税には少額の贈与を除く仕組みがありませんでした。2024年1月1日以後は年110万円の基礎控除が創設され、特別控除2,500万円・税率一律20%という従来の枠組みと併せて使われます。暦年課税の基礎控除と金額が同じなので、どちらの制度の話かを読み違えないようにします。

年表の使い方

覚える単位は「制度名と施行日のセット」です。制度の内容だけを覚えると、事例問題で相続開始日が示されたときにどちらの取扱いになるか判断できません。次の並びを一度書き出して、各行から内容を言えるか確認してください。

  • 2019年1月13日:自筆証書遺言の方式緩和(財産目録)
  • 2019年7月1日:預貯金の払戻し制度/遺留分の金銭債権化
  • 2020年4月1日:配偶者居住権
  • 2020年7月10日:法務局の自筆証書遺言書保管制度
  • 2023年4月1日:遺産分割の10年ルール(民法904条の3)
  • 2023年4月27日:相続土地国庫帰属制度
  • 2024年1月1日:生前贈与加算の7年への延長/相続時精算課税の基礎控除
  • 2024年4月1日:相続登記の義務化・相続人申告登記

古い年度のテキストや解説を使うときは、この年表と照らして記述が現在の制度に合っているかを確かめると安全です。改正点は出題側にとっても取り上げやすいテーマなので、施行日ごとに何が変わったかを説明できるようにしておくと、事例問題でも判断が速くなります。

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