第三種冷凍機械責任者の法令科目には、ひとつの軸が通っています。装置の「1日の冷凍能力」が何トンか、という軸です。許可が要るのか届出でよいのか、そもそも法の適用を受けるのか、どの免状を持った冷凍保安責任者を選任するのか、どの検査が何年ごとに課されるのか。これらはすべて、トン数によって切り替わります。
逆に言えば、境目を取り違えると条文を読めていても答えが合いません。しかも境目はガスの種類によっても動くため、数字だけの丸暗記は崩れます。トン数を起点に、法令の分岐を1本にまとめます。
「1日の冷凍能力」という物差しの決まり方
冷凍関係の法令が使う物差しは、設備が1日にどれだけの熱を汲み出せるかを表す「1日の冷凍能力」です。実際の運転時間ではなく、設備の仕様から計算で決まる値である点が重要です。この数値が確定して初めて、許可の対象なのか届出で足りるのかが決まります。
算定方法は冷凍保安規則第5条に定められており、設備の形式ごとに基準が異なります。遠心式圧縮機を使用する設備では原動機の定格出力1.2キロワットをもって1トンとし、吸収式冷凍設備では1時間の入熱量27,800キロジュールをもって1トンとします。同じ「1トン」でも、出発点が出力なのか熱量なのかが設備によって変わるわけです。
遠心式と吸収式は数値を取り違えやすいので、設備の形式と基準値をひと組にして覚えてください。
許可・届出・適用除外が分かれるトン数
冷凍のために高圧ガスを製造する場合、1日の冷凍能力と冷媒ガスの種類の組み合わせで、都道府県知事等の許可が必要か、届出で足りるかが変わります。高圧ガス保安法第5条が本則で許可20トン・届出3トンを定め、施行令第4条がガスの種類ごとにこれを超える値を定める、という二段構えです。
- 【施行令第4条】第一種ガス(ヘリウム、窒素、二酸化炭素、燃焼性の基準に適合するフルオロカーボン、空気など)……50トン以上で許可、20トン以上で届出
- 【施行令第4条】アンモニア、および燃焼性の基準に適合しないフルオロカーボン……50トン以上で許可、5トン以上で届出
- 【法第5条の本則】上記以外のガス(プロパン、イソブタン、クロルメチルなど施行令第4条の表に無いもの)……20トン以上で許可、3トン以上で届出
適用除外も同じ物差しで決まります。施行令第2条第5項により、冷凍能力が3トン未満の冷凍設備内における高圧ガスは法の適用を受けません。さらに、3トン以上5トン未満の冷凍設備内の高圧ガスであっても、それが第一種ガスであれば同じく適用除外となります。
つまずきやすいのは、許可の基準が50トンと20トンに割れ、届出の基準が20トン・5トン・3トンと三つに割れる点です。アンモニアのように不活性でないガスは、届出の基準が第一種ガスより低く置かれています。トン数だけを見て判断せず、まず冷媒が何かを確認する順序を習慣にしてください。
冷凍保安責任者は100トンと300トンで切り替わる
人の側の区分は冷凍保安規則第36条に置かれています。1日の冷凍能力が300トン以上の施設は第一種冷凍機械責任者免状を持つ者、100トン以上300トン未満の施設は第一種または第二種の免状を持つ者、100トン未満の施設は第一種・第二種・第三種のいずれかの免状を持つ者から選任します。
第三種の守備範囲は、この一番下の「100トン未満」です。上位の免状が下位の範囲を兼ねる構造なので、覚えるのは各免状の上限だけで足ります。
もうひとつ落としやすいのが、免状だけでは選任できないという点です。同条は所定の製造に関する経験もあわせて求めており、100トン未満の施設であれば、1日の冷凍能力が3トン以上の施設で1年以上の経験が必要とされています。ここでも3トンという数値が顔を出します。「免状の区分」と「経験の要件」は別々の条件であり、両方そろって初めて選任できます。
検査は種類ごとに主体と周期が違う
検査は、施設を作った直後に行うものと、使い続けている間に繰り返すものに分かれます。完成検査は、製造施設を新設したときや、位置・構造・設備の変更工事を行ったときに、技術上の基準への適合を確かめる検査です。工事の内容によっては完成検査を要しない区分もあります。
使い続けている施設に課されるのが、保安検査と定期自主検査です。保安検査は冷凍保安規則第40条により、特定施設について3年に1回行われます。定期自主検査は同規則第44条により1年に1回以上行い、選任した冷凍保安責任者に監督させたうえで、検査記録を作成します。定期自主検査の対象となる冷凍能力については、条文が「アンモニア又はフルオロカーボン(不活性のものを除く。)」を冷媒ガスとするもので20トンと定めています。ここは施行令第4条が使う「燃焼性の基準」とは別の用語なので、置き換えて覚えないでください。
保安検査は3年に1回、定期自主検査は事業者自身が1年に1回以上。3と1は取り違えやすいので、周期は確実に固定してください。
なお、耐圧試験や気密試験はこれらの法定検査とは別の話です。冷凍保安規則では、気密試験は冷媒設備について許容圧力以上、耐圧試験は配管以外の部分について液体を用いて許容圧力の1.5倍以上(液体で行うことが困難な場合は気体で1.25倍以上)と定められています。耐圧試験に「配管以外の部分について」という限定が付く点は、正誤の分かれ目になります。倍率の数値と検査の周期は、混同しないよう分けて整理してください。
トン数の物差しが効かない例外・認定指定設備
ここまでの区分表には例外があります。認定指定設備です。これは、冷凍保安規則第57条の技術上の基準(冷媒設備が製造業者の事業所において脚上または一つの架台上に組み立てられていること、事業所で耐圧試験・気密試験に合格すること、事業所で試運転を行い使用場所に分割されずに搬入されること など)を満たし、法第56条の7第2項の認定を受けた設備を指します。なお「冷媒設備及び圧縮機用原動機を一の架台上に一体に組み立てる」は冷凍保安規則第36条第2項第1号イの、冷凍保安責任者の選任を要しない製造施設の要件であって、認定指定設備の要件とは別の条文です。混同しやすいので分けて覚えてください。
その結果、冷凍保安責任者の選任や検査の扱いが一般の製造施設とは異なります。トン数の表をそのまま当てはめると誤る典型例なので、区分を覚えたあとに「ただし認定指定設備は別扱い」と条件を添える形で押さえてください。
6つの数字を1本の数直線に並べる
ここまでに出てきた境目は、3・5・20・50・100・300の6つです。これを1本の数直線として頭に置くと、条文をまたいだ問いにも対応できます。
小さい側の3・5・20・50は施設そのものの話で、適用除外と、許可・届出の区分に対応します。大きい側の100・300は人の話で、冷凍保安責任者の免状区分に対応します。20トンだけは両側に登場し、第一種ガスの届出基準であると同時に、アンモニア等を冷媒とする施設の定期自主検査の基準にもなります。
そのうえで、それぞれの数字に「どのガスか」「許可か届出か」という条件を必ず添えてください。数直線を書き、その下にガスの種類を並べた表を自分で作り直せるようになれば、法令科目のうちトン数が絡む領域は安定します。