年金アドバイザー4級は三答択一50問の入門レベルですが、基礎知識中心でありながら取りこぼしが起きやすい試験です。原因の多くは、覚えていないことではなく、日常会話の言葉のまま選択肢を読んでしまうことにあります。「扶養に入っている」「20年払った」といった言い回しは生活の中では通じますが、制度上は別の正式な用語に対応しています。
選択肢は制度用語で書かれています。日常語の感覚で読むと、本来は別物の二つの制度を同じものとして処理してしまい、正誤の判断が入れ替わります。この記事では、つまずきやすい日常語と、それが対応する制度用語・定義を並べて整理します。金額や率は年度で改定されるため、年度を明記して扱います。
「扶養に入る」は年金では第3号被保険者のこと
「扶養に入っている」という言い方は、実際には税の扶養、健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者という三つの別々の制度をまとめて指しています。試験で問われるのは三つ目です。
- 第3号被保険者=第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者。自分では保険料を納めないが、その期間は保険料納付済期間として扱われる
- 収入要件(原則として年収130万円未満)や生計維持の判定は健康保険の被扶養者認定と実質的に共通で、届出も事業主経由で一体に処理される。違うのは対象範囲で、健康保険の被扶養者には子や親も含まれるが、第3号被保険者になれるのは20歳以上60歳未満の配偶者だけ
- 配偶者が自営業者(第1号被保険者)なら第3号にはなれず、自分で第1号として保険料を納める
「年金に加入している」は被保険者の種別まで言い切る
「年金に入っている」だけでは制度上は情報が足りません。国民年金の被保険者は第1号・第2号・第3号の三つの種別に分かれ、保険料の納め方も変わります。設問文が職業や働き方を示していたら、まず種別を確定させます。
- 第1号被保険者=自営業者、農業者、学生、無職など。保険料は令和8年度で月額17,920円の定額。付加保険料は月400円
- 第2号被保険者=厚生年金保険の被保険者である会社員や公務員。保険料は標準報酬月額と標準賞与額に保険料率18.3%を掛け、事業主と折半する
「加入期間」は三つの期間に分けて数える
「20年払った」という言い方は、制度上は複数の期間の合計を指します。受給資格期間の判定と年金額の計算とで数える期間が違う点が最大の注意点です。
- 受給資格期間=老齢基礎年金を受けられるかどうかの判定に使う期間。10年以上で65歳から支給される
- 保険料納付済期間=第1号被保険者として納めた期間、第2号被保険者であった期間のうち20歳以上60歳未満の部分、第3号被保険者であった期間。年金額にそのまま反映される。第2号被保険者であった期間のうち20歳未満と60歳以上の部分は合算対象期間に回る
- 保険料免除期間=免除を受けた期間。受給資格期間には算入されるが、年金額への反映は免除の種類によって異なる
- 合算対象期間=受給資格期間には算入されるが、年金額には反映されない期間
- 満額は令和8年度で月額70,608円(昭和31年4月2日以後生まれ)、月額70,408円(昭和31年4月1日以前生まれ)の2本立て。納付済月数が480か月に満たない分だけ減る
「保険料を免除してもらう」は四つの制度の総称
「免除」とひとことで言っても、制度上は法定免除、申請免除、納付猶予、学生納付特例が別々にあります。年金額に反映されるかどうかを入れ替える形で問われます。
- 法定免除=一定の要件に該当することで当然に免除されるもの
- 申請免除=所得の状況に応じて申請するもの。全額・4分の3・半額・4分の1の4段階がある
- 納付猶予・学生納付特例=納付を先送りする制度。受給資格期間には算入されるが、追納しなければ年金額には反映されない
- 産前産後期間の免除は、免除でありながら保険料納付済期間として扱われる
- 追納できるのは10年以内。追納すれば年金額への反映が回復する
「もらえる年齢」は支給開始年齢と繰上げ・繰下げに分ける
「何歳からもらえるか」は、本来の支給開始年齢の話と、本人の選択で受給開始を早める・遅らせる話に分かれます。混ぜて読むと増減率の問題を落とします。
- 老齢基礎年金の支給開始年齢は原則65歳。受給資格期間10年以上が前提
- 繰上げ受給=60歳から65歳になるまでの間に繰り上げること。昭和37年4月2日以後生まれは1か月あたり0.4%の減額で、60歳請求なら最大24%の減額
- 繰下げ受給=66歳以後に遅らせること。1か月あたり0.7%の増額で、昭和27年4月2日以後生まれは75歳まで待てて最大84%の増額。昭和27年4月1日以前生まれは上限が70歳で最大42%の増額にとどまる
- いったん決まった減額率・増額率は生涯変わらない
「働きながらもらう」は在職老齢年金の仕組み
「働くと年金が減る」は正確ではありません。制度上は在職老齢年金といい、止まるのは老齢厚生年金の一部で、老齢基礎年金は対象外です。判定に使う二つの言葉も日常語とずれています。
- 基本月額=加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の額を12で割った額。給与のことではなく、加給年金額も含めない
- 総報酬月額相当額=標準報酬月額に、直近1年間の標準賞与額を12で割った額を足したもの。月給そのものではない
- この二つの合計が令和8年度の支給停止調整額65万円を超えると、老齢厚生年金の一部が支給停止になる
- 雇用保険との調整は65歳前の年金が対象。特別支給の老齢厚生年金は基本手当と同時には受けられず、高年齢雇用継続給付を受けるときは在職による支給停止に加えて年金の一部が停止される。65歳以降の老齢厚生年金は基本手当との調整の対象ではない
「遺族年金」「障害年金」は基礎と厚生で中身が違う
遺族年金・障害年金は総称です。制度上は基礎年金と厚生年金に分かれ、対象者の範囲や等級のカバー範囲が異なります。片方だけの条件をもう片方に付け替える形は、選択肢で見分けにくくなります。
- 遺族基礎年金の対象は「子のある配偶者または子」に限られる。子のない配偶者は対象にならない
- 遺族厚生年金には受給の優先順位があり、中高齢寡婦加算という上乗せもある
- 障害基礎年金は1級と2級のみ。1級は2級の1.25倍で、子の加算が付く
- 障害厚生年金は3級と障害手当金まであり、障害基礎年金よりカバーする範囲が広い
選択肢を読むときのチェック手順
あとは解く場面で確認する順番を決めておくと安定します。以下の順で読むと、日常語のまま処理する事故を減らせます。
- 登場人物の被保険者の種別(第1号・第2号・第3号)を先に確定させる
- 「加入期間」と書かれていたら、受給資格期間の話か年金額の話かを見分ける
- 「免除」と書かれていたら、どの免除で、年金額に反映されるかどうかまで確認する
- 基礎年金の話か厚生年金の話かを必ず切り分ける。遺族・障害・在職老齢年金はここで差がつく
- 金額や率が出てきたら、どの年度の数値として問われているかを意識する
出題50問のうち30問が「年金の基礎」で、ここで扱った用語の区別がそのまま得点に直結します。三答択一なので、対応関係が頭に入っていれば選択肢を二つまで絞れる場面もあります。なお本記事は制度の一般的な仕組みの解説であり、個別の受給の可否や金額は日本年金機構や年金事務所の案内で確認してください。