ねこ検定の学習で最も差が付きやすいのが、公認参考書『ねこの法律とお金 増補改訂版』が扱う領域です。生態や行動学は猫と暮らしていれば自然に触れますが、法律と費用の話は意識して読まない限り身に付きません。それでいて公式の出題比率は中級で20%、上級では30%を占めます。100問中20問から30問がここから出る計算になるため、合格ラインの70問前後を狙ううえで無視できない比重です。
この記事では、その領域で問われやすい制度の骨組みを整理します。扱うのは一般的な制度の説明で、個別の事情の判断は専門家に確認してください。制度は改正されるため、最新の内容は環境省や自治体の案内で確かめましょう。
土台になるのは動物愛護管理法という一本の法律
猫に関する法律の中心は「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」です。この法律では、牛や馬、犬、猫などが「愛護動物」として挙げられており、猫は飼い主がいるかどうかを問わず愛護動物にあたります。飼い主のいない猫にも法の保護が及ぶ、という点は設問になりやすい部分です。
この法律は、愛護動物をみだりに殺したり傷つけたりする行為、餌や水を与えずに衰弱させる虐待、そして遺棄を禁じています。罰則は殺傷が最も重く、虐待と遺棄がそれに次ぐ段階で、2019年の改正でいずれも引き上げられました。刑罰の名称はその後の刑法改正で懲役・禁錮が拘禁刑に一本化され、動物愛護管理法44条の条文も現在は「拘禁刑」となっています。参考書の版によっては「懲役」とあるので、食い違えば新しい方に合わせましょう。
2019年改正で加わったもの — マイクロチップと飼養管理基準
2019年(令和元年)の改正は内容が多く、しかも段階的に施行されたため、年と制度の対応が混ざりやすい部分です。代表的なものを整理します。
- 犬猫のマイクロチップ制度は2022年(令和4年)6月1日から。販売する事業者に装着と情報登録が義務づけられ、購入した飼い主は所有者情報を自分名義に変更する登録を行う
- すでに飼っている猫への装着は義務ではなく努力義務。ただし装着した場合の登録と、登録済みの猫を譲り受けた場合の変更登録はいずれも義務で、期限は30日以内。2022年6月1日より前から飼っていて既に装着済みの猫については、登録は任意(経過措置)。登録は環境省が指定した指定登録機関が担う
- 事業者が守る飼養管理基準を数字で示した、いわゆる数値規制が2021年(令和3年)6月1日から順次適用。従業員一人あたりの飼養頭数の上限やケージの広さ、繁殖に関する年齢の上限が定められた
- 適正な飼育が難しい状況では、繁殖を制限する措置が飼い主の義務として明確化された
多頭飼育と届出制度 — 条件は自治体によって違う
猫が増えすぎて世話が行き届かなくなる多頭飼育の問題は、においや鳴き声で周辺の生活環境が損なわれる事態として、動物愛護管理法が指導や助言などの対象に位置づけています。一方で「何頭から届け出るか」を決めているのは各自治体の条例です。
犬猫を合わせて一定数以上飼う場合に届出を求める自治体が多いものの、対象となる頭数も、犬と猫を分けて数えるかどうかも地域ごとに異なります。全国共通の基準があるわけではない、という点をそのまま覚えておくのが安全です。
猫の所有権と、拾った猫をめぐる考え方
日本の法律では、動物愛護管理法が「動物が命あるものであること」を基本原則に掲げる一方、民法上は財産、つまり「物」として扱われます。そのため猫にも所有権の考え方が及び、他人の飼い猫を傷つけた場合は、動物愛護管理法違反に問われうるのに加え、財産である以上は刑法の器物損壊罪の問題にもなり、さらに民事上の損害賠償責任も生じます。
道で見つけた猫を保護したときの扱いは、その猫に飼い主がいるかどうかで変わります。迷子になった飼い猫は落とし物と同じように扱われる可能性があるため、まず警察や自治体の窓口に相談するのが基本の流れとされています。
お金の分野は費目の整理から入る
費用は金額そのものより、何にお金がかかるのかという費目の整理が中心になります。迎えたときにまとまってかかるものと、毎年続くものを分けると頭に入りやすくなります。
- 初期にかかるもの:譲渡費用や購入費、キャリーバッグ、トイレと猫砂、食器、爪とぎ、ケージや上下運動のための家具
- 迎えた直後の健康関連:健康診断、ワクチン接種、寄生虫の駆除、不妊去勢手術、マイクロチップの装着と登録
- 毎年続くもの:フード、猫砂、消耗品の買い替え、健康診断やワクチン
- 変動するもの:病気やけがの治療費、預ける費用、シニア期のケア用品、住まいの補修
具体的な金額は飼育環境や地域、動物病院によって幅が大きく、公的に定まった相場はありません。参考書の目安も、金額の暗記でなく費目の抜けをなくす方向で使いましょう。
ペット保険は用語の意味で押さえる
ペット保険は人の健康保険とは仕組みが違い、公的な制度ではなく民間の商品です。試験対策では、共通して使われる用語の意味を説明できる状態にするのが目的です。
- 補償割合:かかった治療費のうち保険から支払われる割合。割合が高いほど保険料も上がる関係にある
- 免責:支払いの対象外となる部分や条件。自己負担する金額を定める形と、対象外の事由を定める形がある
- 待機期間:契約の後、補償が始まるまでの一定期間。この間に見つかった症状は対象外になることがある
- 既往症・先天性の疾患:加入前からある病気は対象外とされることが多い
飼い主が先に亡くなる場合への備えという論点
参考書がこの領域を扱う理由の一つが、猫の寿命が延びたことで、飼い主が先に亡くなる可能性を考える必要が出てきた点です。猫は財産上は物として相続の対象になるため、誰が引き取るかを決めていないと行き先が定まりません。
そこで、世話をすることを条件に財産を遺す負担付遺贈や、財産を託して飼育費用に充ててもらうペット信託といった選択肢が紹介されます。試験対策では、それぞれの仕組みが「存在する」ことと大まかな違いを押さえれば十分です。実際の利用を考える場合は専門家に相談してください。
試験では制度名と数字を対にして問われる
この領域の設問は、制度の趣旨を問うものと、年や数字を問うものに分かれます。趣旨は理解していれば答えられますが、数字は覚えていなければ手が出ません。改正の年と施行の年がずれる制度が多いので、「いつ決まったか」と「いつから始まったか」を分けてメモしておくと混乱が減ります。
また、法律で全国一律に決まることと、条例で自治体ごとに決まることを分けておくと、選択肢の言い切りすぎた記述に気づきやすくなります。中級で20%、上級で30%というこの分野の比重は、公式ガイドBOOKの読み込みだけでは埋まりません。参考書を一冊分の学習範囲として時間を割り当てることが、そのまま合否の差につながります。