ケンテイラボでは、京都検定3級の収録問題のうち寺院を「天台・真言系」と「禅・浄土・日蓮ほか」の2つに分けて整理しています(本サイト独自の学習用の区分で、京都商工会議所が公表している出題区分ではありません)。この分け方そのものが、覚え方のヒントになっています。寺院名を五十音順に並べて1つずつ暗記するのではなく、宗派という軸で束ねる、ということです。
寺院を単体で覚えようとすると、似た名前の門跡寺院や、通称と正式名称の対応で必ず混ざります。ところが宗派でまとめると、開祖・本山・伽藍の様式・庭園の作り・本尊の傾向までがひとかたまりで頭に入り、1つ思い出せれば残りが芋づる式に出てきます。
以下、宗派ごとに開祖と成立、京都の代表的な寺院、共通する見分け方を整理します。歴史のなかで所属が変わった寺院もあるため、対応がはっきりしているものだけを挙げます。
天台宗 ― 最澄と、比叡山から広がった一門
天台宗は、平安時代のはじめに最澄(伝教大師)が唐で学んだ天台の教えをもとに開いた宗派です。総本山は比叡山延暦寺で、所在地は滋賀県大津市ですが、京都の北東を守る位置にあり、京都の歴史とは切り離せません。延暦寺は後に宗派を開く僧たちが修行した場でもあり、日本仏教の母山と呼ばれます。
- 開祖は最澄(伝教大師)。総本山は比叡山延暦寺で、京都市街の北東に連なる
- 大原の三千院と寂光院、洛北の曼殊院、山科の毘沙門堂、東山の青蓮院などが天台系
- 三千院・青蓮院・妙法院は「天台三門跡」と呼ばれ、皇族や貴族が住職を務めた
- 三十三間堂(蓮華王院)は妙法院に属し、本尊の千手観音坐像(湛慶作・国宝)と1,001躯の千手観音立像で知られる
延暦寺、三千院、曼殊院のように山中や山裾に伽藍を構える天台系寺院もありますが、三十三間堂のような市街地の堂もあるため、立地だけで宗派を判定することはできません。門跡寺院が宸殿や書院を備え、御所に近いつくりである点も手がかりです。
真言宗 ― 空海が伝えた密教の寺
真言宗は最澄とほぼ同じ時期に、空海(弘法大師)が唐で密教を受け継いで開いた宗派です。京都では、平安京の羅城門の東に建てられた東寺(教王護国寺)が嵯峨天皇から空海に与えられ、真言密教の根本道場となりました。高野山金剛峯寺は和歌山県にあり、京都の寺院とは分けて整理しておきます。
- 開祖は空海(弘法大師)。京都の中心は東寺(教王護国寺)で、その五重塔は木造の塔として日本一の高さ
- 醍醐寺、仁和寺、大覚寺、智積院はいずれも真言宗のなかの別々の派の本山にあたる
- 仁和寺・大覚寺・随心院・勧修寺は、皇族や貴族と縁の深い格式を持つ寺院
- 神護寺、泉涌寺も真言系。泉涌寺は皇室との関わりの深さから「御寺」と呼ばれる
真言系の寺院に共通するのは、五重塔や多宝塔が伽藍の見どころになっていること、本尊に大日如来や不動明王など密教の尊像が多いこと、曼荼羅を伝えることです。
禅宗 ― 五山の格式と枯山水
禅宗は鎌倉時代に中国から伝わり、栄西が臨済宗を、道元が曹洞宗を日本に伝えました。栄西が京都に建仁寺を開いたのに対し、道元の曹洞宗は越前(福井県)の永平寺を本山としたため、京都で目立つのは臨済宗のほうです。
- 京都五山は上から天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺で、南禅寺はその上の別格に置かれる
- 大徳寺と妙心寺は一時は五山に列せられたが、のちに五山の制度を離れ、「林下」の禅林として独自に広がった
- 金閣寺は正式には鹿苑寺、銀閣寺は慈照寺で、どちらも相国寺に連なる
- 石庭で知られる龍安寺は妙心寺の系統。曹洞宗では宇治の興聖寺が京都の代表格
禅宗寺院は、三門・仏殿・法堂を一直線に並べる伽藍配置が基本です。住職の居所である方丈の前に、白砂と石で山水を表す枯山水は禅宗寺院の方丈前庭に多く見られ、龍安寺や東福寺方丈が代表例です(枯山水そのものは禅宗の専有ではなく、他宗派の寺院や神社にも見られます)。本尊は釈迦如来であることが多く、法堂の天井に描かれた龍も禅寺を見分ける目印になります。
浄土宗・浄土真宗 ― 阿弥陀如来と、並び立つ二堂
浄土宗は法然が、その教えを受け継いだ浄土真宗は親鸞が開いた宗派です。どちらも阿弥陀如来を本尊とし、念仏による救いを説きます。京都は法然と親鸞が活動した地であり、両宗の本山が市中に置かれていることが大きな特徴です。
- 浄土宗の総本山は知恩院。金戒光明寺、知恩寺(百万遍)なども浄土宗の大寺
- 永観堂の名で親しまれる禅林寺は、浄土宗のなかの西山禅林寺派の総本山
- 浄土真宗は、本願寺派の西本願寺と大谷派の東本願寺に分かれて向かい合う
- 西本願寺の飛雲閣は、金閣・銀閣と並んで京の三閣に数えられる
浄土系の寺院は、平地に大きな木造の堂を構えるのが特徴です。とくに真宗の本山は、阿弥陀如来を祀る阿弥陀堂と、宗祖親鸞の像を祀る御影堂が横に並ぶ配置をとります。密教寺院や禅寺とは境内の景色がまったく違います。
日蓮宗と、奈良仏教の流れをくむ寺
日蓮宗は日蓮を開祖とし、法華経の題目を唱えることを中心に据えます。京都では、日像が布教の拠点として開いた妙顕寺をはじめ、本法寺、妙覚寺、立本寺などが町なかに集まりました。織田信長が倒れた本能寺は日蓮宗ではなく法華宗本門流の大本山です。なお本能寺の変の当時は四条西洞院付近にあり、現在地へは後に移転しています。町衆に支持され、山ではなく都市部に広がったのが京都の法華系寺院です。
一方、奈良仏教の流れをくむ寺や、独自の立場をとる寺も京都には残ります。こうした宗派が独特な寺は、それ自体が設問の狙いどころです。
- 清水寺は長く法相宗に属したが、現在は北法相宗の大本山。本尊は十一面千手観音
- 六角堂の名で知られる頂法寺は聖徳太子の創建と伝わり、華道・池坊の発祥の地
- 壬生寺は律宗の寺で、壬生狂言や新選組との関わりで知られる
- 萬福寺は隠元隆琦が開いた黄檗宗の大本山で、中国風の伽藍と建築が目を引く
試験でどう問われるか
出題には「寺院名から宗派を答えさせる」向きと、「宗派や開祖から代表的な寺院を選ばせる」向きの両方があります。片方向だけでは、選択肢の並べ方が変わっただけで手が止まります。一覧表をつくったら、寺院名の列を隠して宗派を言う練習と、宗派の列を隠して寺院を挙げる練習を、必ず両方行ってください。
あわせて効くのが、通称と正式名称の対応です。金閣=鹿苑寺、銀閣=慈照寺、東寺=教王護国寺、六角堂=頂法寺、永観堂=禅林寺のように、京都の寺院は2つの名前を持つものが多く、その言い換えが設問になります。宗派の表に正式名称の列を足しておけば、2つの論点を一度に処理できます。
さらに、宗派の知識は他分野へも波及します。建築・庭園で問われる枯山水は禅宗寺院と、伝統文化の華道は六角堂と結びつきます。宗派で束ねた表は、寺院分野の得点源であると同時に他分野の足場にもなります。