観光英語検定試験(観光英検)3級は、全国語学ビジネス観光教育協会が実施する検定です。筆記50問とリスニング40問の計90問・90点満点で、令和8年度の検定料は5,150円(税込・協会会員は4,500円)。年2回実施され、3級は両回とも行われます。
この試験を準備するうえで最初に押さえるべきなのは、90点満点という数字が合否の判定には使われないという点です。本記事は、そこから逆算して準備の順序を決めます。
90点満点なのに、合計点では判定されない
公式には「各級とも、筆記・リスニング両科目がそれぞれ合格基準点以上の場合のみ合格とします。合計点によるものではありません」と明記されています。筆記とリスニングは別勘定で、どちらか一方でも基準点に届かなければ不合格です。
第51回(令和8年6月28日実施)の3級の基準点は、筆記が50点満点中29点以上、リスニングが40点満点中22点以上でした。仮に筆記で50点満点を取っても、リスニングが21点なら不合格になります。逆にリスニングが満点近くても、筆記が28点なら落ちます。
割合に直すと筆記58%・リスニング55%で、要求されている水準はリスニング側のほうがわずかに低くなっています。ただしこれは第51回の数字であって、毎回この値というわけではありません。
得意なほうで稼いで苦手なほうを補う、という組み立てが使えないので、準備の段階から2つを別々の課題として扱う必要があります。英語力を全体として底上げする、という漠然としたやり方では、片方が基準を割ったときに理由が分かりません。
基準点は試験が終わってから決まる
もうひとつ特徴的なのは、合格基準点が事前に固定されていないことです。協会が公開している検定試験の自己評価シートには、試験終了後に作問委員が問題内容と正答率を分析し、筆記とリスニングそれぞれの合格基準点を決定する、と書かれています。
つまり受験前の時点では「何点取れば受かる」が確定していません。公表されるのは受験後です。作問委員会は前回試験などと比較検討して合格基準が変わらないよう対応しているとされていますが、受験する側から見れば、目標点は「基準点ぎりぎり」ではなく余裕を持った位置に置くしかありません。
第51回の3級は、志願者324人・受験者296人・合格者175人で、合格率は対受験者59.1%(対志願者54.0%)でした。同じ回の2級は対受験者61.2%です。
公式が示す目安は約3,000語、範囲は旅行の場面に閉じている
公式の「出題の基本方針」では、3級の範囲は「曜日、時刻、数字(単位含む)、英語の掲示やパンフレット、地名、世界と日本の観光名所、日本の祭りや年中行事また民芸品、あいさつ等、観光・旅行に必要となる初歩的な英語および英語による日常会話」とされています。
到達レベルの目安は「約3,000語の語彙力、基本的な文法・構文(高等学校中等学年程度の学習内容)の理解度をみる」です。具体的な到達像として、海外グループ旅行で少数の同僚と一緒に英語を使って行動できること、国内で外国人に道案内やパンフレット類を英語で説明できることが挙げられています。
なお、公式サイトや受験案内に他の英語資格との換算は示されていません。目安として書かれているのは語彙数と学校の学習段階だけです。したがって準備の目標も、他の試験の級に置き換えるのではなく、旅行の場面で出てくる語と表現をどれだけ持っているかで測るほうが実態に合います。
範囲が観光の場面に閉じているというのは、裏を返せば出てくる語彙が偏っているということです。空港・交通・ホテル・観光・買い物といった場面ごとに、繰り返し出る語と言い回しがあります。英語一般を広く積むより、この偏りに合わせて狭く深くやるほうが効率が良い試験です。
ケンテイラボに収録している3級の対策問題465問は、次の4つの区分に分けてあります。これはケンテイラボ側の整理で、公式の科目区分ではありません(公式が示しているのは筆記50問・リスニング40問という2科目の内訳までです)。どの方向の練習にどれだけ手を動かせるかの目安として見てください。
収録問題4分野の内訳と比重
ケンテイラボでは観光英語検定3級の収録問題を4の分野に分けて整理しています (学習しやすさを優先した本サイト独自の区分で、実施団体が公表している 出題区分そのものではありません)。収録している465問を分野別に集計すると、 最も問題数が多いのは「② 英語コミュニケーション」の136問(全体の29.2%)、 最も少ないのは「① 観光用語」の70問(同15.1%)です。上位3分野だけで全体の84.9%を占めるため、 ここを先に固めるかどうかが得点の土台になります。
収録問題では英語コミュニケーションが136問、英文構成・英文読解が134問、海外・国内の観光と文化が125問、観光用語が70問です。語そのものを問うものより、場面の中で使えるかを問うもののほうが多い構成になっています。
リスニングは教室ごとの一斉放送で、聞き直せない
受験案内には、リスニング試験は受験者一人ひとりにICプレーヤーを配る個別音源方式ではなく、各試験教室ごとにCDプレーヤー等を用いる全体放送方式で実施する、と明記されています。自分のペースで止めたり戻したりはできません。
3級のリスニングは40問を14時00分から14時35分頃までの一斉放送で受けます。1問あたりに使える時間はおよそ50秒ですが、実際には放送のペースに従うことになります。練習の段階から、音声を止めずに最後まで通す形で解いておかないと、本番のテンポに合いません。
試験中はスマートフォンや腕時計型の情報端末を時計代わりに使うことも禁止されているため、腕時計の持参が案内されています。筆記の60分は自分で時間を配分する必要があるので、これは実務的に効いてきます。
筆記60分のあいだに何を確実に取るか
当日は集合12時50分、筆記が13時00分から14時00分、続けてリスニングが14時00分から14時35分頃という流れです。集合から開始までの10分間は試験の説明にあてられます。2級は同じ日の午前(集合10時05分)なので、2級と3級の併願は時間帯が分かれていて可能です。
筆記は50問を60分なので、1問あたり1分強の余裕があります。時間が足りなくなる試験ではありませんが、基準点が29点前後に置かれることを踏まえると、確実に取れる問題を落とさないことのほうが重要になります。
- 曜日・時刻・数字と単位:機械的に取れる。ここを落とすと基準点に響く
- 掲示やパンフレットの読み取り:観光地・空港・ホテルで実際に見る形式に慣れておく
- 地名と観光名所:世界と日本の両方。日本の祭りや年中行事、民芸品も範囲に入る
- あいさつと定型のやり取り:場面ごとに決まった言い方があるので、丸ごと覚える
日本の祭り・年中行事・民芸品が範囲に入っている点は見落とされやすいところです。英語の勉強としてではなく、外国人に日本を説明する語彙として押さえる必要があります。
公式教材は教科書と過去問と解説書に分かれている
3級に対応する公式教材はいくつかの種類に分かれています。協会編著の教科書『CD付 ベーシック観光英語 English for Tourism -Basic-』(三修社・2,000円税別)は教科書のため、解答や教授用資料は付属しません。独学で使う場合はこの点に注意が要ります。
- 『CD付 ベーシック観光英語 English for Tourism -Basic-』:3級対応の教科書。解答は付属しない
- 『観光英検3級の精選過去問題 CD付&音声DL』(三修社・2,300円税別):解答付きで独学に向く
- 回ごとの公式解説書:実際に使われた問題冊子と別冊解説、会場で流されたリスニングCDが同梱される
- 『受検前にぜひチェックしておきたい頻出150項目(過去問徹底解析 3・2級)』
会場で流された音源そのものが手に入るのは、解説書だけの利点です。全体放送方式の聞こえ方に慣れておきたいなら、市販の教材用音声よりこちらのほうが本番に近くなります。解説書や書籍は協会への注文書または申込フォームで代金先払いの購入です。
申込は払込取扱票だけ、書き間違いは合格証に残る
個人受験の申込方法は、センター指定の払込取扱票(受験願書を兼ねる)に記入し、郵便局またはゆうちょ銀行のATM・窓口で検定料を払い込む方式のみです。オンラインでの受験申込は用意されておらず、公式サイトからできるのは願書請求・資料請求までです。
受験案内には「合格証カードの再発行は致しません」「払込取扱票に記載された通りのローマ字で合格証は発行しますので正確に記入してください」とあります。願書のローマ字の書き間違いは、そのまま合格証に残ります。申込の時点で確認しておくべき点です。
検定料の納入後は、受験級や試験会場の変更も返金もできません(受験しなかった場合も返金はありません)。ただし公共交通機関の事故等で欠席になった場合は、事故証明書などを提出すれば次回の試験を無料で受けられます。
3級のあとに2級へ進む場合
2級の出題範囲には「3級の範囲を含む」と公式に明記されています。3級で積んだものはそのまま2級に持ち越せます。語彙の目安は3級の約3,000語(高等学校中等学年程度)から、2級では約5,000語(高等学校修了程度)に上がります。
基準点も第51回では3級が筆記29点・リスニング22点だったのに対し、2級は筆記33点・リスニング24点でした。満点は同じまま要求だけが上がる形です。
なお1級は形式そのものが違い、筆記(記述式10分)とネイティブとの個人面接(約10分)で構成され、受験資格も2級の取得者に限られます。3級から1級へ飛ぶことはできないので、階段は3級・2級・1級の順に上がることになります。
収録465問の使い方
ケンテイラボには3級の対策問題を465問収録しています。筆記側の対策として、場面ごとの語と言い回しが出てくるかを確認する用途に向いています。リスニングは音声を伴うため、収録問題だけでは代替できません。過去問題集や解説書の音源と組み合わせてください。
筆記とリスニングが別勘定である以上、進捗も別々に測るのが自然です。筆記側は収録問題の正答率で、リスニング側は過去問の音源を止めずに解いたときの得点で、それぞれ確認するとよいと思います。