浄化槽管理士の免状を手にする方法は、年1回の浄化槽管理士試験に合格するだけではありません。公益財団法人日本環境整備教育センターが開く浄化槽管理士講習を修了しても、同じ免状の交付を申請できます。
この記事では、この2つの道を費用・時間・学ぶ範囲・場所・取得後の扱いの順に並べます。数値は教育センターの試験案内と講習のページ「浄化槽管理士講習」、それに浄化槽法と環境省関係浄化槽法施行規則の条文によります。講習の考査の合格率や受講者数は、今回参照した範囲では確認できなかったため扱いません。
浄化槽法第45条は、合格者と講習の修了者に同じ免状を交付する
浄化槽法第45条第1項は、環境大臣が浄化槽管理士免状を交付する相手として、浄化槽管理士試験の合格者と、指定講習機関の講習課程を修了した者の2つを挙げています。試験を実施するのも講習を行うのも教育センターで、講習機関としての指定は昭和60年4月16日です。
どちらの道でも、最後の手続きは同じです。合格証書または修了証書の写しなどを添えて免状の交付を申請し、収入印紙2,300円を納めます。交付までは約2か月とされています。第45条は2つの道のどちらにも同じ「浄化槽管理士免状」を交付すると定めていて、免状の種類を分けていません。
出費の差は129,800円。浄化槽設備士なら118,500円
試験の受験手数料は23,600円(非課税)で、受理後の返還はありません。講習の受講料は153,400円(非課税)です。印紙代2,300円はどちらにも乗るので、差はそのまま受講料と受験手数料の差、129,800円になります。
- 試験の道:受験手数料23,600円+免状交付申請の印紙2,300円=25,900円
- 講習の道:受講料153,400円+印紙2,300円=155,700円
- 講習の道(浄化槽設備士で一部免除を選択):受講料142,100円+印紙2,300円=144,400円
講習ページでは、受講料の返却は原則として行わないとされています。申込み後の講習地の変更も原則できません。試験の受験手数料と同じく、払ったあとに予定が崩れた場合の戻りは小さいと見ておく必要があります。
丸1日の試験に対し、講習は最長3か月の視聴期間で80時間
令和8年度の試験は10月25日(日)の午前10時から午後3時30分までです。令和7年度の問題用紙では、午前が10時から12時、午後が13時30分から15時30分で、それぞれ2時間でした。拘束されるのはこの1日で、準備の時間は受験者が自分で確保します。
講習は講義動画80時間のオンデマンド視聴です。受講期間は短期(3週間)・中期(2か月)・長期(3か月)の3種類で、講習ページによると教材視聴期間(全講義を一通り見終える期間)はそれぞれ14日間・49日間・77日間です。短期で80時間を見終えるには1日あたり6時間近く、長期なら1日1時間強の計算になります。
講義を見終えたあとに、考査日に対面で考査を受けます。時間は13時から15時までの2時間です。講習ページに並ぶ日程では、考査日は講習期間の最終日からおおむね1週間後に置かれていました。講習ページには、考査の結果発表は考査日から約2週間後を予定していると書かれています。
講習の考査も全7科目。避けて通れる科目は無い
講習の教科目は、施行規則第21条が定める試験の7科目と同じ名前で並んでいます。80時間の割り振りは次のとおりです。
- 浄化槽の点検、調整及び修理:30時間
- 浄化槽の構造及び機能:22時間
- 水質管理:10時間
- 浄化槽概論:8時間
- 浄化槽行政:4時間
- 浄化槽工事概論:4時間
- 浄化槽の清掃概論:2時間
考査は全教科目について行われます。講習を選んでも、学ぶ範囲が試験より狭くなるわけではありません。変わるのは、範囲をどの順でどれだけの時間をかけて学ぶかを、講義の側が決めてくれる点です。独学では自分で決める配分が、講習では時間数として先に示されています。
浄化槽設備士の免除は概論と工事概論の受講だけで、考査は残る
浄化槽設備士の資格を持つ人は、講習の一部免除を選べます。免除されるのは教科目の(1)浄化槽概論と(4)浄化槽工事概論で、時間にすると8時間と4時間、合わせて12時間です。受講料は11,300円下がって142,100円になります。
ただし講習ページは、一部免除を選んだ人も考査は免除されないと明記しています。受講しなかった2科目も、考査の対象からは外れません。講義を省けるのは、施工の側ですでに身に付けている内容を聞き直さなくてよいという意味で、確認そのものが無くなるわけではありません。
試験の側も学歴や実務経験などを一切問わず、令和8年度は全員が計80問を受ける形です。
講習は7都道府県で回を分けて開かれ、試験は5都府県で年1回
令和8年度の試験地は宮城県・東京都・愛知県・大阪府・福岡県の5か所です。申請は7月1日から8月6日までのオンライン受付で、ここを逃すと次の機会は翌年度になります。
講習の開催地は北海道・宮城県・千葉県・東京都・愛知県・大阪府・福岡県の7か所で、試験地に北海道と千葉県が加わります。2026年9月14日に講習ページを見た時点では、東京都に第257回から第261回までの5回、福岡県に第98回から第100回までの3回、大阪府に2回、北海道・宮城県・千葉県・愛知県に各1回が掲載されていました。回ごとに設定されている受講期間の種類は異なり、3種類すべてがそろわない回もあります。
講習の申込みは各回の受付期間の初日午前9時からで、講習ページには、受付期間中であっても定員になり次第受付を終えると書かれています。定員の人数そのものは掲載されていませんでした。時期を選べる代わりに、希望の回に入れるかどうかは申込みの早さに左右されます。
どちらの免状でも、就ける立場は条文上同じ
浄化槽法第2条第11号は、浄化槽管理士を、その名称を用いて浄化槽の保守点検の業務に従事する者として免状の交付を受けている者と定めています。保守点検とは、浄化槽の点検、調整又はこれらに伴う修理をする作業のことです。
- 第10条第3項:浄化槽管理者は、条例による登録制度が無い地域では、保守点検を浄化槽管理士に委託できる
- 第48条:条例で保守点検業の登録制度を設けた地域では、登録業者は浄化槽管理士の資格を有する者を保守点検業務に従事させなければならない
- 技術管理者:処理対象人員501人以上の浄化槽に置く義務があり、資格は浄化槽管理士の資格に加えて当該規模の保守点検・清掃の実務2年以上又は同等以上(施行規則第8条)
いずれの条文も、免状を試験で得たか講習で得たかを区別していません。技術管理者に求められる2年以上の実務経験(又はこれと同等以上の知識・技能)も、どちらの道で免状を得たかによって変わりません。
勤務先の負担、使える時間、受けたい時期で分かれる選び方
どちらが有利かは、置かれた条件で入れ替わります。判断の軸になりそうな点を条件ごとに並べます。
- 受講料を勤務先が負担するかどうか:自己負担なら129,800円の差がそのまま効き、会社負担なら差の重みは小さくなる
- まとまった学習時間を自分で組めるかどうか:講習は80時間の講義という形で学ぶ量と順番が決まっている。試験は配分も時間も自分で決める
- 免状が要る時期:試験は10月の1回で、申請は8月上旬まで。講習は地域と回を選べるが、定員で締め切られることがある
- 受けに行ける場所:北海道・千葉県に近い人は、講習なら考査を近くで受けられる可能性がある
- 浄化槽設備士を持っているかどうか:講習の受講は12時間減るが、考査は7科目すべてを受ける
試験を選ぶ場合も、講習の教科目時間は範囲の広さと重みを知る目安として使えます。講習を選ぶ場合も、考査は2時間で7科目を問う形なので、講義を見終えたあとに問題を解いて確かめる時間は別に取っておくことになります。