浄化槽管理士試験は、公益財団法人日本環境整備教育センター(以下、教育センター)が浄化槽法第46条第4項に基づいて行う国家試験です。令和3年度から令和7年度までの5年度分の合格率は20.8%から30.9%のあいだにあり、受験者のおよそ8割が不合格になっています。
この記事では、その合格率がどう動いてきたか、合格基準がどう発表されてきたか、そして受験資格のない試験で何が難しさになるかを扱います。数値は教育センターの各年度の合格発表、令和4年度の合否訂正の告知、試験案内ページ、浄化槽管理士講習の案内ページによります。科目ごとの学習配分や得点目標の立て方は、同じ資格の勉強法の記事で扱っています。
令和3年度から令和7年度で、合格率が3割を超えたのは令和5年度の30.9%だけ
5年度分の受験者数・合格者数・不合格者数を並べると次のとおりです。不合格者数は受験者数から合格者数を差し引いて求めたもので、教育センターが発表している数字ではありません。
- 令和3年度:受験者1,034人/合格者215人(20.8%)/不合格者819人
- 令和4年度:受験者1,049人/合格者233人(22.2%)/不合格者816人
- 令和5年度:受験者1,023人/合格者316人(30.9%)/不合格者707人
- 令和6年度:受験者889人/合格者188人(21.1%)/不合格者701人
- 令和7年度:受験者882人/合格者201人(22.8%)/不合格者681人
5年度のうち4年度は20.8%から22.8%までの2ポイントの幅に収まっていて、令和5年度だけがそこから8ポイント以上離れています。合格者数も令和5年度の316人が突出しており、前後の年度は200人前後です。この試験の合格率を語るときは「2割強の年が続き、1年だけ3割を超えた」と捉えるほうが、5年度の平均で丸めるより実態に近くなります。
もう1つ見ておきたいのが、申請したのに受験しなかった人の数です。申請者数と受験者数の差は、令和3年度141人、令和4年度120人、令和5年度81人、令和6年度104人、令和7年度121人でした。令和7年度は申請者1,003人に対して合格者201人なので、申請者を分母にすると20.0%になります。発表される合格率は、試験会場に来た人だけを数えた値だということです。
80問になった令和6年度、受験者は1,023人から889人に減っていた
各年度の正答表を見ると、令和4年度と令和5年度は問1〜問100(午前50問・午後50問)、令和6年度と令和7年度は問1〜問80(午前40問・午後40問)です。問題数が変わった令和6年度は、受験者数が前年度の1,023人から889人へ134人(約13%)減り、申請者数も1,104人から993人へ減っています。
現在の試験案内ページには試験科目と並べて「計80問」と記載されていますが、問題数を変えた理由の説明は、試験案内ページや合格発表のページでは見つけられませんでした。受験者数の減少が問題数の変更と関係しているのか、同じ時期のほかの事情によるものかは、公表資料からは判断できません。令和7年度の受験者は882人で、令和6年度からは7人減とほぼ横ばいでした。
問題数が減ったことで変わったのは、1問の重みです。1問1点とすれば、100問の年は1問が満点の1%でしたが、80問では1.25%になります。令和6年度の合格基準は80問中52問、満点に対して65.00%で、満点100点だった令和3年度の「満点の65%」と同じ水準です。基準の割合が大きく動いていない以上、80問になったことだけで試験が易しくなった、あるいは難しくなったとは言えません。
合格基準が最も高い66点だった令和5年度に、合格率も最も高くなった
浄化槽管理士試験の合格基準は、あらかじめ固定された点数として示されるのではなく、各年度の合格発表で総得点や総正答数として示されます。令和3年度は65点(満点の65%)以上、令和4年度は64点以上、令和5年度は66点以上、令和6年度は80問中52問(65.00%)以上、令和7年度は80問中51問(63.75%)以上でした。
並べてみると、5年度のうち基準が最も高かったのは令和5年度の66点で、合格率が最も高かったのも同じ令和5年度です。基準が上がれば合格率が下がる、という単純な関係にはなっていません。基準が高い年でも3割が通ったということは、その年は受験者全体の得点が基準に対して高い位置に並んでいたと読むのが自然です。
一方で、基準が下がって合格率が上がった年もあります。令和4年度の基準64点は令和3年度の65点より1点低く、合格率は20.8%から22.2%へ上がりました。ただし令和4年度の22.2%は、後で述べる問題49の加点後の数字です。当初発表の21.5%で比べても令和3年度を上回っていますが、差は0.7ポイントにとどまります。
令和7年度も同じ動き方で、基準が前年度より1問低い51問になり、合格率は21.1%から22.8%へ1.7ポイント上がりました。本記事で参照した合格発表には基準の値が書かれているだけで、その値をどう決めたかの説明は載っていません。したがって、基準の上下を「難しい年だったから下げた」などと解釈するのは避けておくのが無難です。
基準の割合は5年度とも満点の63.75%から66%のあいだにあります。7科目が午前と午後に分かれて出題される試験で、全体のおよそ3問に2問を正解しなければならないという水準は、年度が変わってもほとんど動いていません。合格率が2割台で推移していることと、この基準の高さは切り離して考えないほうが、試験の手ごたえを見誤りにくくなります。
令和4年度は問題49の誤りで全員に加点され、合格者が226名から233名に増えた
令和4年度には、合格発表のあとで合否が訂正されています。教育センターの告知によると、問題49の中に「特定建設作業」とすべきところを「特定建築作業」とした誤りがあり、受験者全員に加点する扱いになりました。その結果、合格者数は226名から233名に、合格率は21.5%から22.2%に訂正されています。
この訂正で合格に変わった7名は、当初の採点では基準の64点に届いていなかった人たちです。受験者1,049人のうち、少なくとも7名がその加点分の差で合否が入れ替わる位置にいたことになります。割合にすれば受験者全体の約0.7%ですが、合格者数でみると約3%増えた計算です。
合格率が2割台と聞くと、不合格者の多くが基準から大きく離れているように感じるかもしれません。しかし、この訂正は基準の直下にも受験者がいることを示しています。不合格者の得点分布は公表されていないので、何点差の人が何人いたかまでは分かりませんが、わずかな得点差で結果が変わる層が実在することは確かです。
なお、不合格者に通知されるのは全体の成績だけで、設問ごとの正否は知らされません。自分が基準からどれくらい離れていたかは総得点で分かっても、どの問題を落としたかは本人にも分からない仕組みです。次の年度に向けて弱点を洗い出すには、公開されている問題と正答を使って自分で照合し直す必要があります。
学歴も実務経験も問われないが、午後の問題は運転中の槽を前にした判断を求める
浄化槽管理士試験の受験資格は、試験案内ページで学歴や実務経験等を一切問わないとされています。浄化槽の保守点検に携わったことがない人でも、手数料を納めて申請すれば受験できます。一方で、浄化槽管理士は浄化槽法で、その名称を用いて浄化槽の保守点検(点検、調整又はこれらに伴う修理)の業務に従事する者として免状の交付を受けている者と定義されており、試験もその業務を前提にした内容です。
ケンテイラボの収録541問を公式7科目に沿って分類すると、⑤ 浄化槽の点検、調整及び修理が178問で全体の約33%を占め、7分野の中で最も多くなっています。この分類はケンテイラボ独自のもので、本試験の科目別出題数ではありません。それでも、保守点検の現場作業にあたる内容が収録問題の中心にあることは数字に表れています。
収録問題の問題文・選択肢・解説に含まれる語を数えると、「移送」を含む問題は41問で、そのうち28問が⑤の分野でした。「逆洗」は18問のうち12問、「汚泥」は154問のうち55問が⑤に入っています。汚泥をどの槽からどの槽へ移すか、ろ材をいつ洗うかといった、槽の状態を見て作業を選ぶ場面が、この分野の問題の題材になっています。
現場の作業に結びつく語は、制度の分野にも出てきます。「保守点検」を含む問題は収録47問で、⑤に21問、② 浄化槽行政に20問と、ほぼ半々に分かれていました。行政の側では保守点検の回数や委託先といった決まりとして、点検の側では実際の作業として同じ語が扱われます。条文を覚えるだけでも、作業を知っているだけでも、片方の問題にしか対応できない構造です。
実務経験のある人は、こうした作業の名前を見た時点で装置の位置や手順が思い浮かびます。未経験の人は、単位装置の名前と役割を覚えたうえで、問題文の状況設定を頭の中で組み立ててから選択肢を比べることになります。受験資格の面では誰にでも開かれていても、午後の問題に向き合うときの出発点は、経験の有無でかなり違うと考えられます。
次の表は、収録問題を分野ごとに集計し、数値を含む問題の割合と問題文の平均文字数を示したものです。現場の経験がない場合、問題文が長い分野ほど状況を読み取るのに時間を取られやすく、数値を含む割合が高い分野ほど、基準値や計算を経験ではなく記憶で補う必要が出てきます。自分にとってどの分野が重くなりそうかを見当づける材料として使ってください。
分野別の学習タイプ(収録541問の集計)
ケンテイラボに収録している浄化槽管理士の問題を分野別に集計し、 「問題文または選択肢に数値が登場する問題の割合」と「問題文の平均文字数」を出しました。 数値の割合が高い分野は具体的な数字の暗記が得点を左右しやすく、 低い分野は用語の理解や文章の読み取りが中心になる傾向があります。
この試験でもっとも数値の比率が高いのは「① 浄化槽概論」で42%、 もっとも低いのは「④ 浄化槽工事概論」で17%でした。 また問題文がもっとも長いのは「⑦ 浄化槽の清掃概論」の平均50字で、 設問を読み解く負担が大きい分野といえます。
- ① 浄化槽概論:43問/数値を含む問題 42%/問題文 平均47字
- ② 浄化槽行政:47問/数値を含む問題 38%/問題文 平均38字
- ③ 浄化槽の構造及び機能:118問/数値を含む問題 40%/問題文 平均46字
- ④ 浄化槽工事概論:30問/数値を含む問題 17%/問題文 平均43字
- ⑤ 浄化槽の点検、調整及び修理:178問/数値を含む問題 28%/問題文 平均47字
- ⑥ 水質管理:75問/数値を含む問題 41%/問題文 平均41字
- ⑦ 浄化槽の清掃概論:50問/数値を含む問題 28%/問題文 平均50字
数値の比率が高い分野は、数字を単独で覚えるより 「どの制度の・何の基準か」とセットで整理すると定着しやすくなります。 比率が低い分野は、似た用語同士の違いを説明できる状態を目指すと得点が安定します。
講習修了でも免状が出る資格では、合格率は試験を選んだ人だけの数字になる
浄化槽管理士の免状は、試験の合格者だけでなく、指定講習機関である教育センターの浄化槽管理士講習を修了した人にも交付されます(浄化槽法第45条第1項)。講習は講義動画80時間と対面の考査で構成され、受講料は153,400円です。受験手数料23,600円の試験とは、費用も時間のかけ方も大きく異なります。
このため、20%台という試験の合格率は、浄化槽管理士を目指す人全体の通りやすさを表す数字ではありません。講習ではなく試験を選んだ人の中での合格の割合です。費用や日程の事情で試験を選ぶ人もいれば、講習を受ける時間が取れずに試験を選ぶ人もいると考えられ、受験者の顔ぶれは講習の受講者とは同じではないはずです。
本記事で扱った資料には講習の修了者数が含まれていないため、2つの道の通りやすさを数字で比べることはしません。どちらの道を選ぶかの判断材料は、試験ルートと講習ルートを比べた別の記事にまとめています。
5年度の受験者延べ4,877人のうち合格者は1,153人、通算23.6%
最後に、単年度ではなく5年度分をまとめて見ておきます。令和3年度から令和7年度までの受験者数を足すと4,877人、合格者数を足すと1,153人で、通算の合格率は23.6%になります。同じ人が複数年度受験していれば重ねて数えているので、延べの人数です。
30.9%だった令和5年度を除いた4年度分で計算すると、受験者3,854人に対して合格者837人で21.7%です。令和5年度を含めるかどうかで、通算の率は2ポイント近く変わります。直近の2年度が21.1%と22.8%であることを考えると、受験を考えるときの見積もりには、30%台ではなく20%台前半を置いておくほうが外れにくいでしょう。
令和8年度の試験は10月25日(日)に行われ、合格者の受験番号は試験終了後1月以内に発表されて官報にも公告されます。令和8年度の合格率と合格基準が出れば、80問になってから3年度分の数字が並ぶことになり、100問時代との比較もしやすくなります。