2026/09/08

産地・原料・微生物の3点で並べる発酵検定の郷土と世界

しょっつる、いしる、ナンプラー、ニョクマム。同じ原理の魚の調味料を一列に並べて覚えると、本番で産地が入れ替わります。気候と原料で束ね直せば混ざらなくなる、その並べ方を地域ごとにたどります。

執筆:ケンテイラボ編集部(資格試験対策アプリ開発・運営)

発酵検定の出題範囲のなかで、郷土発酵食と世界の発酵食は固有名詞の量が飛び抜けて多い領域です。しょっつる、いしる、ナンプラー、ニョクマム。どれも魚と塩から造る同じ原理の調味料ですが、名前だけを一列に並べて覚えると、本番では産地が入れ替わって思い出されます。

この2分野で崩れやすいのは、知識が足りないからではなく、覚え方の形が名前の丸暗記になっているからです。食品名だけを暗記すると、似た響きのものどうしが干渉し、産地を1つずらしただけの選択肢に引っかかります。

そこで有効なのが、1つの食品を「どこの」「何を原料に」「どの微生物または発酵の型で」の3点セットで覚える方法です。3つのうち2つを思い出せれば残りを絞り込めるようになり、記憶が1本の糸から三角形に変わります。以下、地域ごとに3点セットの形で並べます。

3点セットのうち、微生物や発酵の型の欄はそれほど種類がありません。乳酸発酵、麹菌をはじめとするカビによる分解、酵母によるアルコール発酵、そして塩とともに漬け込む保存の型。この数種類の枠に食品を振り分けていくと、産地と原料だけを覚え直せばよい状態に近づきます。

日本の郷土発酵食を地域ごとに並べる

郷土発酵食は、魚を塩と糠や飯で保存する系統、野菜を乳酸発酵させる系統、麹を使って漬け込む系統に大きく分かれます。地域名とセットで見ていきます。

北海道・東北

  • しょっつる(秋田/ハタハタなどの魚と塩/魚醤。微生物と魚自身の酵素がタンパク質を分解する)
  • 飯寿司(北海道/サケやニシンと飯・野菜/乳酸発酵によるなれずし)

関東・中部

  • べったら漬け(東京/ダイコンを米麹と砂糖で漬ける/麹菌の働きによる甘み)
  • すんき漬け(長野・木曽/赤かぶの葉/塩を使わずに漬け込む乳酸発酵)
  • かんずり(新潟/唐辛子を塩漬けにして雪にさらし、麹などと熟成させる)

北陸

  • へしこ(福井/サバを塩と米糠で漬け込む/乳酸菌などによる糠漬け)
  • ふぐの子糠漬け(石川/フグの卵巣を塩と糠で長期間漬ける)
  • かぶら寿し(石川/カブにブリを挟んで米麹で漬ける/麹と乳酸発酵)
  • いしる(石川/イワシと塩/魚醤)。同じ石川でもイカの内臓を使うものは「いしり」と呼び分ける

近畿・四国・九州沖縄

  • すぐき漬け(京都/すぐき菜と塩/乳酸発酵)
  • ふなずし(滋賀/ニゴロブナと飯・塩/乳酸発酵によるなれずし)
  • なれずし(和歌山/サバやサンマと飯を葉で巻いて漬け込む/乳酸発酵)
  • 碁石茶(高知・大豊町/茶葉/カビ付けによる好気的発酵と、桶に漬け込む乳酸発酵の二段構え)
  • 豆腐よう(沖縄/島豆腐を紅麹と泡盛で熟成させる)

石川県だけでふぐの子糠漬け・かぶら寿し・いしるの3つが並ぶように、1つの県に複数出てくる地域があります。県名から食品を引く方向と、食品から県名を引く方向の両方で確かめておくと安全です。

世界の発酵食を地域ごとに並べる

世界の発酵食も同じ形で整理します。日本の郷土発酵食と原理が重なるものが多く、対応を意識すると覚える量が実質的に減ります。

東アジア

  • キムチ(韓国/ハクサイやダイコンに唐辛子や塩辛を合わせる/乳酸発酵)
  • 豆板醤(中国・四川/ソラマメと唐辛子/麹を用いて仕込む)
  • 腐乳(中国/豆腐の表面をカビで覆い、塩と酒で熟成させる)

東南アジア

  • ナンプラー(タイ/カタクチイワシなどの魚と塩/魚醤)
  • ニョクマム(ベトナム/魚と塩/魚醤)
  • テンペ(インドネシア/大豆/クモノスカビが菌糸で大豆を固める。麹菌と取り違えやすい)

ヨーロッパ

  • ザワークラウト(ドイツ/キャベツと塩/乳酸発酵)
  • チーズ(乳/乳酸菌と凝乳酵素が基本。白カビ、青カビを使うタイプもある)
  • サラミ(イタリアなど/畜肉/乳酸菌による発酵と乾燥。表面にカビを用いるものもある)
  • シュールストレミング(スウェーデン/ニシンと塩/缶の中でも進む発酵)

アフリカ・中央アジア

  • インジェラ(エチオピア/テフという穀物の粉/乳酸菌と酵母で発酵させて薄く焼く)
  • ケフィア(コーカサス地方/乳/乳酸菌と酵母による発酵乳)
  • 馬乳酒(モンゴル/馬の乳/乳酸菌と酵母)

呼び名は地域や文献によって表記が揺れるものもあり、原料の魚種も一通りとは限りません。細かい異同を追うより、まずは代表的な産地と原料の組み合わせを固めるのが現実的です。

気候と原料で束ねると混ざらなくなる

個別に覚えた後は、なぜその土地にその食品があるのかで束ね直します。発酵食は、その土地で採れるものを、その土地の気候で保存するために生まれています。原料と気候をたどれば、名前を忘れても筋道から引き出せます。

  • 寒冷地・海沿いは魚の保存が課題。塩と糠、あるいは飯を合わせて漬け込む形になり、魚醤・なれずし・糠漬けが集まる
  • 米作地帯では飯や米麹が発酵の起点になる。なれずしや麹漬けが多いのはこのため
  • 大豆を育てる東アジアから東南アジアでは、豆類をカビの酵素で分解する系統が発達し、味噌・醤油・腐乳・テンペ(いずれも大豆)や、ソラマメを使う豆板醤が並ぶ
  • 遊牧や酪農が根づいた地域では乳が原料になり、乳酸菌と酵母による発酵乳やチーズが中心になる
  • 冷涼な畑作地帯では野菜の乳酸発酵が保存法になる。ザワークラウトもすんき漬けもキムチもこの系統

この束ね方で見ると、魚醤は日本にも東南アジアにもあり、乳酸発酵の漬物は日本にもヨーロッパにも韓国にもあることが分かります。原理でグループにまとめてから産地の名前を貼りつける順番にすると、覚える単位が減り、うろ覚えの状態でも選択肢を絞り込めるようになります。

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