2026/09/08

トン数を読み取る科目|クレーン・デリック運転士の関係法令

つり上げ荷重と定格荷重を取り違えると、法令の設問は連鎖的に外れます。0.5トン・1トン・3トン・5トンの境目で、運転の資格、玉掛け、設置届と設置報告、検査証の扱いがどう動くかを数直線に並べました。

執筆:ケンテイラボ編集部(資格試験対策アプリ開発・運営)

クレーン・デリック運転士試験の関係法令は、条文の言い回しを味わう科目ではなく、まず「つり上げ荷重が何トンか」を読み取る科目です。同じクレーンでも、つり上げ荷重が0.5トンなのか、3トンなのか、5トンなのかで、運転に就ける人の資格も、事業者が出す書類も、受けるべき検査も変わります。トン数が法令のすべての分岐の起点になっている、と言い換えてもかまいません。

学科試験の関係法令は10問・20点の配点で、科目ごとに40%以上という足切りがあります(公益財団法人安全衛生技術試験協会)。20点満点で8点を切れば、合計が60点以上でも不合格です。数字をひとつ取り違えるだけで足切りに届かなくなる科目なので、この記事ではトン数で分岐する規定だけを抜き出して並べ直します。

つり上げ荷重と定格荷重を取り違えない

つり上げ荷重は、クレーンの構造と材料に応じて負荷させることができる最大の荷重で、フックやグラブバケットといったつり具の質量を含んだ値です。これに対して定格荷重は、つり上げ荷重からつり具の質量を差し引いた、実際に荷としてつることができる荷重を指します。ジブクレーンのように作業半径によって能力が変わる機種では、定格荷重は半径ごとに変化します。

法令の区分に使われるのは、原則としてつり上げ荷重のほうです。免許が要るかどうかも、設置届が要るかどうかも、玉掛けに技能講習が要るかどうかも、判定の基準はつり上げ荷重です。定格荷重は現場で過負荷を避けるために使う数字であり、資格や手続きの線引きには登場しません。

運転に必要な資格は5トンで分かれる

つり上げ荷重5トン以上のクレーンの運転業務には、クレーン・デリック運転士免許が必要です(労働安全衛生法施行令第20条第6号、クレーン等安全規則第22条)。5トン未満であれば免許は要らず、事業者が行う特別教育を受けていれば就くことができます(同規則第21条)。免許と特別教育の間にある線が、この5トンです。

ただし例外があります。床上操作式クレーンについては、5トン以上であっても床上操作式クレーン運転技能講習の修了者が運転できます。免許・技能講習・特別教育の三段階のうちどれが必要かを問う設問では、この床上操作式の扱いが最も引っかけに使われる部分です。5トン以上は一律に免許、と単純化して覚えると失点します。

免許そのものも一本ではありません。限定なし、クレーン限定、床上運転式クレーン限定に分かれ、運転できる機種の範囲が異なります。申し込みの段階でどの区分を受けるのかを確認しておきましょう。

玉掛けの資格は1トンで分かれる(運転とは別の資格)

玉掛けは、荷にワイヤロープなどを掛け外しする作業で、クレーンの運転とはまったく別の資格体系です。つり上げ荷重1トン以上のクレーン、移動式クレーン、デリックの玉掛け業務は、玉掛け技能講習の修了者でなければ行えません(労働安全衛生法施行令第20条第16号、クレーン等安全規則第221条)。1トン未満であれば特別教育で足ります(同規則第222条)。揚貨装置については、つり上げ荷重ではなく制限荷重1トン以上が同じ線引きになります。

ここで注意したいのは、この1トンが「つる荷の質量」ではなく「使うクレーンのつり上げ荷重」で決まることです。つり上げ荷重5トンのクレーンで軽い荷を掛けるだけの作業でも、玉掛け技能講習の修了が求められます。運転の5トンと玉掛けの1トンは入れ替えて覚えてしまいやすいので、必ず二つセットで、それぞれ別の資格の話だと意識して覚えてください。

事業者側の手続きは3トンと0.5トンで分かれる

設置する側の手続きも、同じくつり上げ荷重で分岐します。つり上げ荷重3トン以上(スタッカー式クレーンは1トン以上)のクレーンを設置するときは設置届を提出し、設置後に落成検査を受けなければなりません(クレーン等安全規則第5条・第6条)。

一方、つり上げ荷重0.5トン以上3トン未満(スタッカー式クレーンは0.5トン以上1トン未満)の場合は、設置届ではなく設置報告書を出せばよく、落成検査もありません(同規則第11条)。そして0.5トンという下限を下回るものには、この報告の義務自体がありません。デリックはこの線が違い、つり上げ荷重2トン以上で設置届と落成検査、0.5トン以上2トン未満で設置報告書になります。クレーンの3トンとデリックの2トンは別の線なので、機械の種類とセットで覚えてください。

検査証の有効期間と、検査・点検の三つの層

設置したあとの管理にも数字が並びます。落成検査に合格すると交付されるクレーン検査証の有効期間は、原則として2年です(クレーン等安全規則第10条)。この有効期間を更新するために受けるのが性能検査で、事業者の外部が行う検査という位置づけになります。

これに対して、事業者が自ら行うのが定期自主検査です。1年以内ごとに1回行う年次の検査と、1月以内ごとに1回行う月次の検査の二種類があります。さらに、その日の作業を開始する前に行う点検があり、外部の検査・事業者の自主検査・作業前の日常点検という三つの層で管理が組み立てられている、と整理すると混乱しにくくなります。

定期自主検査の記録は3年間保存しなければなりません。検査証の2年と記録の3年は取り違えやすい組み合わせですが、前者は検査証が有効である期間、後者は書類を残しておく義務の期間で、意味がまったく違います。

境目を一本の数直線に並べて覚える

最後に、ここまでの境目をつり上げ荷重の小さい順に並べておきます。数字を覚えるというより、「その数字を超えると何が増えるのか」を自分の言葉で説明できる状態を目指してください。

  • 0.5トン:これ以上で設置報告書の対象になる(3トン未満の場合)
  • 1トン:これ以上のクレーンでの玉掛け業務は玉掛け技能講習が必要(未満は特別教育)。スタッカー式クレーンはこの値以上で設置届と落成検査
  • 3トン:これ以上のクレーンで設置届と落成検査(0.5トン以上3トン未満は設置報告書。スタッカー式クレーンは1トンが境目)
  • 2トン:これ以上のデリックで設置届と落成検査(0.5トン以上2トン未満は設置報告書)
  • 5トン:これ以上の運転にクレーン・デリック運転士免許が必要(未満は特別教育、床上操作式は技能講習でも可)

期間の数字も同じ要領で一列に並べます。クレーン検査証の有効期間は原則2年、定期自主検査は1年以内ごとに1回と1月以内ごとに1回、その記録の保存は3年です。トン数の列と期間の列をそれぞれ書き出せるようになっていれば、関係法令の足切りで取りこぼす場面はかなり減らせます。

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