2026/09/07

危険はどこで移るか — 貿易実務検定C級のインコタームズ2020

11規則は、輸送手段を問わない7つと海上・内陸水路専用の4つに分かれます。CPT・CIP・CFR・CIFで費用の負担範囲と分岐点がずれる理由、2010年版から改められた点、試験での問われ方まで。

執筆:ケンテイラボ編集部(資格試験対策アプリ開発・運営)

貿易実務検定C級で、最初につまずきやすく、それでいて確実に出題されるのがインコタームズです。国際商業会議所(ICC)が定める貿易取引条件の解釈規則で、売主と買主のどちらがどこまで費用を負担し、どの地点から先の危険を引き受けるのかを三文字のアルファベットで表します。最新版はインコタームズ2020で、11規則が定められています。

先に押さえたいのは、インコタームズが「定めていないこと」の方です。貨物の所有権がいつ買主に移るかは対象外で、代金の支払時期や支払方法、契約違反があった場合の救済、準拠法や紛争解決の方法も規定していません。これらは売買契約の本体や信用状の条件で別に取り決めます。「インコタームズは所有権の移転時期を定める」という記述は、そのまま誤りの選択肢になります。

定めるのは、引渡しの方法、危険の移転時点、費用の分担、輸出入通関の手続責任、運送や保険の手配義務です。11規則を「危険がどこで移るか」と「費用をどこまで売主が持つか」の2軸で並べるのが学習の基本です。

いかなる輸送手段にも適した規則(7つ)

この7つは、コンテナ船、航空、鉄道、トラック、国際複合輸送のいずれにも使えます。売主の負担が軽い順に並べると、段階的に重くなる構造が見えます。

  • EXW(工場渡し)……売主の施設などで貨物を買主の処分に委ねた時点で危険が移転します。積込みも輸出通関も売主は行わず、11規則で最も売主の負担が軽い条件です。
  • FCA(運送人渡し)……買主が指定した運送人に引き渡した時点で危険が移転します。引渡場所が売主の施設なら買主の集荷車両に積み込んだ時、それ以外なら売主の輸送手段に積んだまま荷卸しの準備ができた時が基準です。輸出通関は売主です。
  • CPT(輸送費込み)……危険は最初の運送人に引き渡した時点で移転しますが、指定仕向地までの輸送費は売主が負担します。
  • CIP(輸送費保険料込み)……CPTに売主の付保義務を加えた条件です。危険の移転時点はCPTと同じ、最初の運送人への引渡し時です。
  • DAP(仕向地持込渡し)……指定仕向地で、到着した輸送手段の上で荷卸しの準備ができた状態にして買主の処分に委ねた時点で危険が移転します。荷卸しと輸入通関は買主です。
  • DPU(荷卸込持込渡し)……指定仕向地で荷卸しを終えた時点で危険が移転します。11規則で唯一、売主に荷卸し義務がある条件です。
  • DDP(関税込持込渡し)……DAPに加えて輸入通関と関税まで売主が負担する、最も重い条件です。

海上および内陸水路輸送のための規則(4つ)

残る4つは在来船を前提とした伝統的な条件で、引渡しが埠頭や本船の上で行われます。コンテナ貨物をCYやCFSに搬入して引き渡す取引では、本来FCA・CPT・CIPを用いるのが適切とされる点も押さえましょう。

  • FAS(船側渡し)……指定船積港で本船の船側に貨物を置いた時点で危険が移転します。輸出通関は売主です。
  • FOB(本船渡し)……指定船積港で本船の船上に貨物を置いた時点で危険が移転します。海上運賃は買主が手配します。なおFOBでは売主・買主とも付保義務はなく、貨物保険を掛けるかどうかは買主の判断です。
  • CFR(運賃込み)……危険の移転時点はFOBと同じ本船上ですが、仕向港までの海上運賃は売主が負担します。
  • CIF(運賃保険料込み)……CFRに売主の付保義務を加えた条件です。危険の移転時点はFOB・CFRと同じく本船上です。

危険負担と費用負担がズレる4規則

CPT・CIP・CFR・CIFの4つは、危険が移転する地点と、売主が費用を負担する終点が一致しません。売主が仕向地までの運賃や保険料を払うにもかかわらず、危険そのものは出発地側で買主に移る、という二段構えの構造です。

  • CPT・CIPは、危険が最初の運送人への引渡し時点で移り、費用は仕向地まで売主が負担します。
  • CFR・CIFは、危険が船積港の本船上で移り、費用は仕向港まで売主が負担します。
  • 危険と費用がともに仕向地側で移るのはDAP・DPU・DDPの3つだけです。

たとえばCIFで契約した貨物が航海中に事故に遭った場合、危険はすでに船積港で買主に移っているため、買主は代金を支払ったうえで自ら保険求償を行います。売主が仕向港まで運賃と保険料を払うことと、危険を負い続けることは別の話です。これを「CIFなら仕向港まで売主の危険」と読み替えるのが典型的な誤答です。

2020年版で2010年版から変わった点

2010年版からの主な変更点は次のとおりです。改訂点は旧称と対比する形で問われるため、セットで覚えておくと確実です。

  • DAT(ターミナル持込渡し)がDPU(荷卸込持込渡し)に名称変更されました。仕向地はターミナルに限られないことを明確にし、DAPとの違いが荷卸しの有無だけである点を示す変更です。
  • CIPの付保水準が引き上げられ、協会貨物約款のICC(A)に相当する広い担保範囲が原則となりました。CIFは従来どおりICC(C)相当が最低水準のまま据え置かれています。同じ「保険料込み」でも水準が違う点が要注意です。
  • FCAについて、買主が運送人に指示して船積済みの表示がある船荷証券を売主に交付させる仕組みが設けられました。信用状決済で船積船荷証券の呈示が求められる場面への対応です。

試験での問われ方

正誤式や三答択一式で「危険はどの時点で移転するか」「この費用はどちらの負担か」を単独で問う形が基本です。加えて、売主の負担が重い順に規則を並べた選択肢から正しいものを選ぶ形や、コンテナ輸送に適した規則を選ぶ形でも問われます。

対策としては、11規則を縦に並べ、横軸に「輸出通関」「運送手配」「保険手配」「危険の移転点」「費用の終点」「輸入通関」を取った一枚の表を自分で作るのが確実です。作る過程で、EXWからDDPへ義務が増える順序と、危険と費用がズレる4規則の位置づけが頭に入ります。

貿易実務英語の科目でも、CIFやFOBといった略語の正式名称を問う問題が出ます。規則名は日本語訳と英語の正式名称を対にして覚えると、2科目のどちらでも使える知識になります。合格基準が高い試験です。ケンテイラボの収録625問では、インコタームズや各規則名に触れる問題が77問あり、取りこぼすと影響が大きい領域です。

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