第一種電気工事士は、一般財団法人 電気技術者試験センターが実施する国家資格で、高圧・大規模な自家用電気工作物の工事にも従事できる、第二種の上位に位置づけられる資格です。試験は筆記(学科)試験と技能試験の2段階で構成されます。「第二種と比べてどれくらい難しいのか」「計算が苦手でも受かるのか」「どのくらい勉強すればよいのか」といった疑問を持つ方は多いはず。本記事では、試験の構成・出題範囲・分野別の傾向・必要な勉強時間など複数の角度から、第一種電気工事士(学科)の難易度を落ち着いて分析します。
結論:範囲は広いが、対策の道筋は明確
結論から述べると、第一種電気工事士(学科)は「範囲が広く、高圧設備の知識が加わる分だけ第二種よりやや難しい(★★★★☆)が、対策の道筋は明確な」試験です。四肢択一のマークシート方式で、出題分野が計算・機器・施工・法令・図面と体系立っているため、分野ごとに戦略を立てて積み上げれば得点を伸ばしやすい構造です。
難しさの中心は「範囲の広さ」と「高圧設備という新しい領域」にあります。第二種で扱う低圧中心の知識に加え、キュービクル式高圧受電設備、単線結線図、保安法令の作業範囲などが上乗せされます。とはいえ、いずれも問われるポイントは決まっており、計算は解法パターン、暗記は数値・略号・作業範囲を押さえれば対応できます。「範囲を分野に分けて、計算は解法、暗記は反復で固める」というのが妥当な攻略方針です。
合格率の取り扱い
第一種電気工事士の合格率は年度によって変動します。本記事では特定の数値を断定せず、最新の合格状況は一般財団法人 電気技術者試験センターの公式情報で確認することをおすすめします。合格率の数字を気にするよりも、「各分野で問われるポイントを確実に得点できる状態にする」ことのほうが本質的です。とくに計算分野と高圧受電設備・単線結線図で安定して得点できるかどうかが、合否を分けるポイントになります。
また、第一種は学科と技能の2段階で構成されるため、学科に合格しても技能試験が控えている点を意識しておく必要があります。本記事・本アプリが扱うのは学科(筆記)対策で、まずはここを確実に突破することが最初の目標になります。
難易度を構成する4つの要素
要素1:出題範囲の広さ
電気の基礎理論・配電理論・電気機器・高圧受電設備・施工方法・検査方法・保安法令・配線図と、扱う分野が非常に広いのが特徴です。一つひとつの難度が極端に高いわけではありませんが、量が多く、計算と暗記を並行して仕上げる必要があります。
要素2:高圧設備という新しい領域
第二種の低圧中心の知識に加え、キュービクル式高圧受電設備やCB形・PF・S形の違い、GR付PAS・DS・ZCT・CT・VT・VCTといった高圧機器・略号が上乗せされます。この高圧領域が、第一種を第二種より難しく感じさせる主因です。
要素3:計算問題の存在
電気の基礎理論と配電理論では、合成抵抗・インピーダンス・力率・三相交流・電圧降下・電力損失などの計算が問われます。公式の暗記だけでなく、方式ごとの係数(2倍・√3・3倍)や適用条件を理解している必要があります。
要素4:単線結線図の総合力
配線図・複線図・高圧単線結線図の分野は、他分野で学んだ機器・法令の知識を図面上で総合的に問う仕上げの領域です。図記号・略号と機器の役割の対応を、図面の文脈のなかで正しく読み取れるかが問われます。
分野別の出題傾向
ケンテイラボに収録している第一種電気工事士(学科)対策311問を分野別に見ると、収録数は以下のとおりです。分野ごとに「計算中心か暗記中心か」という性質の違いを押さえておくと、対策の優先順位を立てやすくなります。
- ① 電気の基礎理論(計算):38問/計算中心。公式と√3の理解が鍵
- ② 配電理論・配電設計:38問/計算中心。方式ごとの係数を整理
- ③ 電気応用・電気機器・材料工具:38問/計算+暗記の混在
- ④ 高圧受電設備:40問/暗記中心。機器名と略号がテーマ
- ⑤ 電気工事の施工方法:44問/暗記中心。収録数が最多
- ⑥ 検査方法・発電送電変電:40問/暗記中心。絶縁抵抗値の数値
- ⑦ 電気工作物の保安法令:33問/暗記中心。作業範囲の区別
- ⑧ 配線図・複線図・高圧単線結線図:40問/総合。略号と図記号
計算が中心の①②、計算と暗記が混じる③、暗記が中心の④⑤⑥⑦、そして総合の⑧という構成です。収録数が最多なのは⑤施工方法(44問)で、施設場所・接地工事・支持点間距離など条文ベースの細かい条件が多く出題されます。計算が得意なら①②③で稼ぎ、暗記分野で取りこぼさない。逆に計算が苦手なら暗記分野を厚めに固める、という調整がしやすい構成です。
傾向1:計算は解法パターンが決まっている
①②の計算問題は、合成抵抗・インピーダンス・力率・三相・電圧降下・電力損失など、問われる公式と解法パターンがある程度決まっています。方式ごとの係数(単相2線式2倍・三相3線式√3や3倍)と適用条件さえ整理すれば、同じ型の問題を繰り返し解くことで安定して得点できます。
傾向2:高圧機器は略号と役割の対応が問われる
④⑧では、GR付PAS・DS・ZCT・CT・VT・VCTなどの略号と、その機器が何をするための装置かの対応が繰り返し問われます。略号だけを丸暗記するのではなく、「地絡検出=ZCT」「電流変換=CT」のように機能とセットで覚えると、単線結線図の読み取りにもそのまま活きます。
傾向3:施工・検査は数値・条件の暗記が中心
⑤⑥では、接地工事の区分(使用電圧300V以下・超過)、絶縁抵抗値の最小限度(対地電圧の区分ごと)、支持点間距離、点検項目などの数値・条件が問われます。条文ベースの細かい知識が多いため、対応表にまとめて繰り返し確認するのが有効です。
傾向4:法令は「作業範囲の区別」が頻出
⑦保安法令では、第一種電気工事士・認定電気工事従事者・特種電気工事資格者などの作業範囲の違いが頻出です。似た資格の範囲を混同しやすいため、「誰が何をできるか」「第一種だけでは従事できない作業は何か」を比較して整理しておくことが失点防止につながります。
勉強時間の目安
必要な勉強時間は、電気の予備知識の有無によって大きく変わります。以下は学科(筆記)対策を想定した、あくまで目安です。技能試験の練習時間は別途必要になる点に注意してください。
- 第二種取得者:共通する基礎を復習しつつ、高圧領域を重点的に上乗せ
- 電気系の基礎がある人:計算を素早く固め、暗記分野を反復で仕上げる
- 初学者:1〜2ヶ月をかけて、計算→機器→施工・検査→法令→図面の順に積み上げる
- 直前期:全分野を通しで演習し、苦手分野を集中的に補強する
共通するのは「計算を早めに固め、暗記分野は反復演習で定着させる」という進め方です。範囲が広いぶん、短期間で詰め込むより、分野を分けて計画的に積み上げるほうが結果的に効率的です。
合格に近づく5つのコツ
コツ1:計算分野を最初に固める
①②の計算は他分野の計算(機器・単線結線図)でも使う土台です。合成抵抗・インピーダンス・力率・三相の√3・電圧降下・電力損失を、手を動かして解けるようにしておくと、後の学習がスムーズになります。
コツ2:高圧機器を「機能→略号」で覚える
④⑧の高圧機器は、略号から入るのではなく機能から入るのがコツです。「波及事故を防ぐ→GR付PAS」「地絡検出→ZCT」のように機能を起点にすると、単線結線図でも迷わず読めるようになります。
コツ3:施工・検査の数値を対応表にする
⑤⑥の接地工事の区分や絶縁抵抗値は、条件ごとに数値が決まっています。「使用電圧・対地電圧の区分」と「必要な工事・値」を一覧表にまとめ、繰り返し見返すことで正確に思い出せるようにしましょう。
コツ4:法令は作業範囲を比較表で整理する
⑦保安法令は、資格ごとの作業範囲を比較表にすると混同を防げます。第一種・認定電気工事従事者・特種電気工事資格者が「できる作業/できない作業」を並べて確認しましょう。
コツ5:分野別演習で弱点を特定する
範囲が広いからこそ、どの分野が弱いかを早めに把握することが重要です。分野別演習で正答率を見える化し、苦手分野に時間を集中投下するのが、限られた時間で合格に近づく近道です。
つまずきやすいポイント
つまずき1:配電方式の係数を取り違える
単相2線式・単相3線式・三相3線式で電圧降下・電力損失の係数が異なります。方式と係数を1対1で結びつけ、力率100%か、リアクタンスを無視するかといった適用条件まで含めて整理しないと、計算問題で失点しやすくなります。
つまずき2:高圧機器の略号が多くて混乱する
GR付PAS・DS・CB・PF・ZCT・CT・VT・VCTなど、略号が多く登場します。似た略号を機能なしに丸暗記すると混乱するため、必ず「何のための機器か」とセットで覚えることが大切です。
つまずき3:絶縁抵抗値と接地工事の区分が曖昧
検査の絶縁抵抗値(対地電圧の区分ごと)と、施工の接地工事の区分(使用電圧300V以下・超過)は、どちらも区分と数値の対応を正確に覚える必要があります。混ざりやすいので、それぞれ別々の一覧表で整理しておきましょう。
つまずき4:単線結線図で知識が結びつかない
⑧単線結線図は、他分野で覚えた機器・略号・法令を図面上で総合的に問われます。個別の知識は覚えていても、図面の文脈で読み取れないと得点になりません。図記号・略号・機能を結びつけながら、図面で確認する練習を積みましょう。
受験者層と学習環境の傾向
第一種電気工事士は、すでに第二種を取得して実務に携わっている人や、電気系の学校・職業訓練で基礎を学んだ人が受験するケースが多い資格です。まったくの初学者が最初に挑む検定というより、電気の基礎をある程度身につけた人が「扱える範囲を広げるため」に目指すことが多い位置づけといえます。
- 第二種取得者:低圧・基礎の知識があり、高圧領域の上乗せに集中しやすい
- 電気系の学校・訓練出身者:計算に強く、法令・施工の暗記を厚めに固めると効果的
- 実務経験者:現場のイメージがあり、機器や施工の理解が早い
- 初学者:計算と暗記を並行し、1〜2ヶ月の計画的な学習が向く
このように受験者の背景はさまざまですが、共通して効くのは「自分の得意・不得意を早めに把握し、弱い分野に時間を集中させる」という姿勢です。計算が得意な人は暗記分野を、暗記が得意な人は計算分野を意識して補強すると、全体の得点が安定します。
学科と技能の関係を意識する
第一種電気工事士は学科(筆記)試験と技能試験の2段階で構成されます。本記事・本アプリは学科対策が中心ですが、学科の学習は技能試験の土台にもなる点を意識しておくと、全体の見通しが立てやすくなります。
- 学科の機器・施工の知識は、技能で扱う器具・配線の理解につながる
- 単線結線図の読み取り力は、実際の配線をイメージする助けになる
- 学科を早めに固めるほど、技能練習に時間を回しやすくなる
- 試験日程・実施方式は年度により変わるため公式サイトで要確認
まずは学科を確実に突破することが最初の目標ですが、学科で学ぶ機器名・略号・施工の基礎は技能でも活きます。「学科で覚えた知識が技能で形になる」とイメージしながら学習を進めると、学科の内容も記憶に残りやすくなります。技能試験の詳細や日程は、電気技術者試験センターの公式情報で確認してください。
第二種電気工事士との違い
第一種と第二種は同じ電気工事士の資格ですが、扱える範囲と学ぶ内容に違いがあります。第一種を目指す際は、第二種との差分を意識すると学習の重点が見えてきます。
- 扱える範囲:第二種は一般用電気工作物中心、第一種は高圧の自家用電気工作物まで
- 高圧設備:第一種はキュービクル式高圧受電設備・単線結線図が加わる
- 計算:第一種は三相・力率改善など配電計算の比重が増す
- 法令:第一種は認定電気工事従事者など作業範囲の区別が問われる
- 免状:第一種は交付に所定の実務経験などの要件がある(詳細は公式で確認)
第二種を取得済みの方は、共通する低圧・基礎分野を素早く復習し、高圧受電設備・単線結線図・保安法令の作業範囲という「第一種で新たに増える領域」に学習時間を集中させるのが効率的です。
ケンテイラボで出題傾向をつかむ
ケンテイラボでは、第一種電気工事士(学科)対策問題を全311問・無料で公開しています。電気の基礎理論から配電理論、電気機器、高圧受電設備、施工方法、検査方法、保安法令、配線図・単線結線図まで8分野を網羅し、分野別に演習できます。難易度分析を踏まえた使い方は次のとおりです。
- 分野別演習で、計算分野と暗記分野の得意・不得意を早めに把握する
- 間違えた問題を繰り返す復習で、高圧機器の略号や絶縁抵抗値を定着させる
- ランダム出題で本番の四肢択一形式に慣れる
- 直前期は全311問を通しで解き、苦手分野を集中的に補強する
登録不要・完全無料で使えるため、テキストや講習と並行して気軽に取り入れられます。分野ごとの出題傾向を実際の問題でつかみ、計算・機器・法令・図面をバランスよく仕上げて、第一種電気工事士(学科)の合格を目指しましょう。